IT業界のユニークな点の一つは、独学で学んだ人々に門戸を開いていることだ。ビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏、マーク・サッカーバーグ氏といったIT業界の著名人の多くは大学を卒業していない。独学でトップレベルのプログラマーに上り詰めた人もいる。
前述の著名人は、いずれも独自の事業を立ち上げている。そうした起業家を目指しておらず、企業への就職を目指すのであれば、正式に教育課程を終えた経歴を求められる可能性がある。IT業界で提供されている認定資格は、十分な教育を受けていることの“裏付け”として有効だ。
ビジネスプロセス管理(BPM)の分野は、特にニーズが高まっている。BPMの認定資格を取得すると、業務効率化に役立つ専門知識が身に付き、取得していない場合に比べて年収が高くなる場合がある。国や地域によって最大20%の年収アップを図れるだろう。とはいえ、認定資格を取得するメリットは金銭面だけではない。
BPMの認定資格を取得することで、以下4つのメリットが見込める。
- 信頼性
- 評価の高い学校やコースが認定する資格は、専門知識を有することの証明となる。認定校の最上位の認定資格は、特定業界に適したスキルのトレーニングと教育を受けていることを証明する。
- 就職しやすさ
- BPMをはじめ特定分野の認定資格を取得していると、競争の激しい就職市場で人目を引きやすくなる。
- 最新の知識を持つこと
- ITは絶えず進化する。最新の知識を身に付けることで、組織にとっての価値が高まり、競争相手を引き離すことができる。
- 収入増の可能性
- BPM認定資格の取得者は、未取得者より多くの収入を得ている。
そもそもBPMとは、ビジネスの戦略やプロセスを考えたり、その戦略とプロセスのモデル化や最適化をしたりする手法を指す。BPMは、単なるタスク管理やプロジェクト管理よりも幅広く複雑になる。タスク管理やプロジェクト管理では個々のタスクやプロジェクトに重点が置かれる。それに対し、BPMではプロセスを会社全体の視点で見る必要がある。プロジェクト管理では1回限りのプロジェクトが対象になるが、BPMではあるプロジェクトから次のプロジェクトへと使用できるプロセスを考えなければならない。
さまざまな組織がBPMの認定資格を提供しているが、業界標準がないため、教育のレベルや内容は提供組織によって異なる。BPMの認定資格は、経営陣による事業目標の設定、応募者の評価、従業員の業績評価、従業員のスキル強化など、幅広く応用できる。では、以下でお勧めのBPM認定資格を紹介しよう。
- コースの詳細/提供コース
- Association of Business Process Management Professionals International(ABPMP International)では、以下のコースが提供される。
- 認定ビジネスプロセスアソシエイト(CBPA:Certified Business Process Associate)
- 認定ビジネスプロセスプロフェッショナル(CBPP:Certified Business Process Professional)
- 認定ビジネスプロセスリーダー(CBPL:Certified Business Process Leader)
- 対象者
- 要件
- CBPA:BPM関連分野での1250時間の実務経験を示す書類、4年制適格大学の学位、受講申請の完了、受講試験への合格
- CBPP:BPM関連分野での4〜10年の経験、他の認定資格での6カ月の実績、受講申請の完了、受講試験への合格
- CBPL:BPM関連分野での10年の経験、ビジネストランスフォーメーションプロジェクト管理での5年の経験、CBPP認定資格の取得、他の認定資格での6カ月の実績、受講申請の完了、受講試験への合格
- コースの詳細/提供コース
- American Society for Quality(ASQ)が提供するSix Sigmaでは、スキルレベルが武道風に帯の色でランク付けされ、認定される。次のようなレベルがある。
- マスター黒帯(Master Black Belt):黒帯と緑帯を指導できるレベル
- 黒帯(Black Belt):問題解決プロジェクトの責任者を務め、プロジェクトチームの指導ができるレベル
- 茶帯(Brown Belt):茶帯は本来Six Sigmaでは使われておらず、大半の組織や認定機関では認められていない。ただし、緑帯を取得し、黒帯の認定試験に合格したものの、黒帯としてSix Sigmaプロジェクトを完了していない者を茶帯に分類する組織もある。
- 緑帯(Green Belt):黒帯が主導するプロジェクトでデータ収集と分析を支援できるレベル
- 黄帯(Yellow Belt):プロジェクトチームにメンバーとして参加するレベル
- 白帯(White Belt):入門レベル
- 対象者
- 組織運営を改善し、管理職に昇進することを希望する人
- 要件
- Six Sigma認定評議会(Council for Six Sigma Certification)が実施するWebベースの受講試験または対面式の受講試験で70%以上のスコア
- コースの詳細/提供コース
- ITIL Foundationが提供する認定資格は、ITILスペシャリスト(ITIL Specialist)、ITILストラテジスト(ITIL Strategist)、ITILリーダー(ITIL Leader)、ITILマスター(ITIL Master)
- 対象者
- ITサービスマネジメントのベストプラクティス集「Information Technology Infrastructure Library」(ITIL)を採用している組織(IT部門)で働く人、ITILについて理解を深めたいと考えている人、IT以外の部署に所属していてITILについて学ぶことを希望する人、ITサービス管理の認定取得を希望する人
- 要件
- コースの詳細/提供コース
- International Institute of Business Analysis(IIBA)によるCBAPでは、自身のペースでオンライン学習できる13コースが提供される。
- 対象者
- 要件
- 過去10年間で7500時間のビジネス分析業務の経験があり、そのうち900時間はビジネス分析知識体系(BABOK:Business Analysis Body of Knowledge)ガイド第3版の6つの知識分野の4つに関係している必要がある。さらに、過去4年間で35時間の専門能力開発を受けていることも求められる。
- コースの詳細/提供コース
- Global Association for Quality Management(GAQM)のCITPでは、20時間の専門能力開発コースが提供される。
- 対象者
- ビジネスとITの橋渡し役を考え、ITやセキュリティに関する知識を求める公認会計士(CPA)
- 要件
- 公認会計士のライセンスを有し、米国公認会計士協会(AICPA)の会員であること。過去5年間に1000時間ITプロジェクトに携わった経験があり、専門能力開発コースの受講を75時間完了していること
後編は、お勧めのBPM認定資格の第2弾をお届けする。
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
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