IT部門への問い合わせを大幅削減へ トヨタが社内導入した“3つの技術”とは?「受け身」のIT部門を変える方法

トヨタ自動車が、デジタル従業員エクスペリエンス(DEX)の改善に着手した。具体的にはIT部門のヘルプデスクへの問い合わせを削減するために、3つの技術を導入している。どのような技術なのか。

2025年01月10日 05時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 トヨタ自動車は、デジタル従業員エクスペリエンス(DEX:ITツールを業務で使用する際の体験や経験)の改善に取り組んでいる。同社は米国において、従業員からIT部門のヘルプデスクへの問い合わせの大部分を削減する方針だ。目標の実現に向け、トヨタ自動車は3つの技術を活用する。どのような技術を活用するのか。

問い合わせを大幅削減する“3つの技術”とは?

 トヨタ自動車が活用する技術は、自動化、予測分析、仮想アシスタントだ。トヨタ自動車の北米部門で人工知能(AI)および自動化のマネジャーを務めるザキール・モハメッド氏は「従来のヘルプデスクは受け身だった」と振り返る。

 従来のヘルプデスクでは、IT部門から従業員に連絡を取り、問題を解消するまでに数日から数週間を要する場合があった。例えば、新しいソフトウェアが必要な場合、従業員はヘルプデスク宛てにチケットを発行する。モハメッド氏の経験では、チケットを発行してから2、3日後にIT部門から連絡があり、アプリケーションをインストールするために30分~1時間の時間枠を確保する必要があった。

 「さまざまな対処が受動的だった。従業員の中には、チケットの発行を諦め、問題を抱えたままの者もいた。従来のヘルプデスクの運営方法は持続可能ではないと判断し、能動的なアプローチが必要だと考えた」(モハメッド氏)

 トヨタ自動車は調査会社Gartnerのクライアントだ。Gartnerは、DEX管理ツールを「ユーザー企業が提供する技術に対する従業員の評価を測定し、継続的に改善するソフトウェア」と定義。業界標準に準拠したツールの利用を推奨している。

 DEX管理ツールは、従業員の評価やアプリケーションから得たデータをリアルタイムに近い状態で処理し、実用的な洞察を導き出す。Gartnerによると、従業員とセルフサービスのポータルサイトやAIチャットbotとのやりとりを促し、問題解決の自動化を可能にするという。

 トヨタ自動車は、ソフトウェアベンダーNexthinkのDEX管理ツールを利用している。モハメッド氏は同ツールを「われわれの要件に合致している」と評し、DEX管理ツールを使って、従業員の課題を能動的に検出、診断、解決しているという。

「目からうろこが落ちた」概念実証(PoC)

 トヨタ自動車は当初、NexthinkのDEX管理ツールを使用して小規模の概念実証に取り組んだ。モハメッド氏によると、実証実験を通じて、実験に参加した従業員の課題をIT部門が理解できるようになった。

 モハメッド氏によると、トヨタ自動車が抱えていた課題の一つは、ビジネスアプリケーションやストレージなどのITインフラを監視するツールを導入していたものの、従業員の評価やデバイスの性能などを監視するツールが不足していたことだった。

 「企業にとって人材は重要な資産だ。従業員が業務に必要なITツールをどのように評価しているかを測定することが重要だ」とモハメッド氏は考えている。概念実証の結果、同氏は「目からうろこが落ちるような発見があった」と振り返る。

 トヨタ自動車はその後、概念実証の対象者を数万人規模に拡大した。この段階で導入したのが自動化だ。従業員のデバイスを可視化できるようになり、ヘルプデスクの特定のタスクを自動化できるようになったとモハメッド氏は説明する。

 NexthinkのDEX管理ツールは予測分析にも使われている。同ツールを使えば、ノートPCのバッテリーが寿命を迎えるタイミングが分かる。「このような情報はIT部門にとって重要だ。事前にバッテリーを購入しておいて、古いバッテリーが寿命を迎える前に能動的に交換できるからだ」(同氏)

 ソフトウェアの管理にも、NexthinkのDEX管理ツールは役立つ。ノートPCにはさまざまなソフトウェアがインストールされており、ライセンス料の支払いが発生する。「従業員が過去90日間に特定のソフトウェアを使用したかをDEX管理ツールで確認し、その情報を基に、ソフトウェアの利用を継続するかどうかを確認するメッセージを自動で送信する。従業員がメッセージに回答すれば、IT部門は不要なソフトウェアを判断でき、他の従業員に割り当てることができる」(モハメッド氏)

 トヨタ自動車は仮想アシスタントも活用している。「『ChatGPT』(AI技術ベンダーOpenAIが開発したAIチャットbot)のようなツールを目指している。」とモハメッド氏は述べる。

 仮想アシスタントは、従業員が自然言語で作成したプロンプト(質問や命令文)を解析し、DEX管理ツールで実行するアクションに変換するために使う。

 仮想アシスタントには他の用途もある。従業員がIT部門を介さず、ソフトウェアの利用を直接リクエストできるようにすることだ。「例えばMicrosoftのBI(ビジネスインテリジェンス)ツール『PowerBI』が必要な場合、アプリケーション監視ツールとバックグラウンドで接続し、ソフトウェアをインストールできる」とモハメッド氏は説明する。「従業員は何もする必要はない。インストールが完了すると、ソフトウェアの準備が整ったという通知が届く」(同氏)

 仮想アシスタントを通じて従業員が抱えるITに関する課題を能動的に解決したり、新しいソフトウェアをリクエストしたりできる機能は、DEXの今後の在り方を示している。

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