AIプロジェクトの「投資対効果」を最大化するAI活用術とは?AIによる収益化アプローチ10選【後編】

AI導入を検討する企業は、「投資に見合う利益を生み出せるか」という視点を持つ必要がある。AI導入を収益化につなげるためのアプローチを紹介する。

2024年11月18日 05時00分 公開
[John MooreTechTarget]

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 人工知能(AI)技術はビジネスの競争力を大きく左右する要素となり、企業は積極的にAI技術の活用を進めている。一方で、AI導入が必ずしも収益に結び付くとは限らない。企業はAI導入により期待できる成果を見極め、適切な戦略の下で活用する必要がある。本稿は前編に引き続き、AI導入を収益化につなげるためのヒントを紹介する。

AIの「投資対効果」を最大化するAI活用術とは?

6.業務プロセスの刷新

 AI技術を用いて業務プロセス全体を再構築することで、収益を増やせる可能性がある。コンサルティング企業Accentureが2024年1月に公開したブログエントリ(投稿)によると、ある保険会社は生成AIを活用して保険の引き受け業務(審査や決定など)全体を刷新することで、10%の収益増を見込んでいるという。

 医療業界でも、AI導入と業務プロセスの改善による収益管理の効率化が期待されている。医療機関は、提供した医療サービスの対価を保険会社からなるべく早く確実に受け取る必要がある。請求書や診療記録の作成、支払い遅延の予防といったプロセスにAI技術を活用することで、迅速かつ安定した決済を実現できる。

7.新製品や新サービスの開発

 企業はAI技術を活用して、新製品の開発プロセスを加速できる。例えば、製薬会社ではAIモデル主導型の新薬開発を進めており、成功確率の高い分子の特定にAI技術を活用している。研究開発の期間は短縮し、新薬が市場に出る確率は高まる。研究開発の大きなコストと時間が節約でき、結果的に収益化までのスピードを早めることができる。

 金融会社Ally FinancialやServiceNowなどの企業では、AI技術を用いたコーディング支援ツールを導入し、ソフトウェア開発速度を加速させている。この結果、顧客向けアプリケーションをより早く市場に投入し、競争優位性を高めることができる。

8.予知保全

 製造業や車両管理などの分野では、設備のダウンタイム(稼働停止時間)が収益の損失につながってしまう。この問題を解決する方法の一つが予知保全だ。予知保全は機械学習の主要なユースケースであり、機器の故障を事前に把握することで、メンテナンスのタイミングを計画的に調整できるようにする。これにより、機能の停止や出荷スケジュールの遅れを回避できる。

 航空会社では、飛行機の部品が故障する前に点検や修理を実施することで、フライトの遅れやそれに伴うコストを削減できる。予知保全によって直接的な財務損失を防ぐだけでなく、設備やサービスに対する信頼性が高まるため、収益の安定的な成長にもつなげられる。

9.計画や予測の改善

 AI技術を用いて過去のデータを分析し、現在のトレンドも加味することで、製品の需要や顧客の行動についてのインサイト(洞察)を得ることができる。例えば、在庫管理の予測は収益に直接影響する重要な分野だ。需要パターンを正確に予測できれば、企業は在庫量を適切に調整し、販売の機会損失を防ぐことができる。

 他にも、ターゲットマーケティング、予算編成、与信リスク評価といった分野でAI技術は活用されている。ターゲットマーケティングでは、顧客の好みや購買パターンを基に効果的なプロモーションを打ち出すことで、より高い販売効果を見込める。与信リスク評価では、顧客の信用リスクを事前に予測し、安全な取引を確保するのに役立つ。

10.価格の最適化

 需要変動や景気の急変に応じて適切な価格を設定する際に、AI技術を活用できる。特に、動的価格設定(ダイナミックプライシング)と呼ばれるアルゴリズムは、商品の単価や競合他社の価格、その他の要因に基づいて価格を自動調整できる。

 動的価格設定に適するのが「強化学習」だ。これは、AIモデルが試行錯誤しながら最適な行動を学んでいく学習手法を指す。さまざまな価格設定を試みて市場の反応を学習することで、利益を最大化できると考えられる価格に調整できるようになる。

予想外のコストに注意

 AI技術がビジネスチャンスをもたらす中で、企業は競争優位性を確保するためにAI導入を加速させている。一方で注意したいのが、AIの開発やインフラ整備、運用に掛かるコストだ。

 調査会社McKinsey & Companyが2024年5月に公開したブログエントリによると、AIモデル自体がプロジェクトのコスト全体に占める割合は15%程度に過ぎない。つまり、他の隠れたコストが大きな比重を占めているということだ。見落とされがちなコストとして、従業員の再教育、チェンジマネジメント(変革管理)、データの整備やクリーニングに掛かるコストがある。

 そのため、AIプロジェクトでは常に投資利益率(ROI)の視点を持ち、投資が収益に見合うかどうかを慎重に検討すべきだ。最も収益が見込める分野に優先的にリソースを割り当て、反対に効果があまり期待できない分野への投資を後回しにするという合理的な判断が必要だ。

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