業務効率化を考える上で、AI技術の活用は欠かせなくなりつつある。その中でも、自律的に意思決定するAIエージェントは、最高経営幹部(CxO)からの注目が高まっている。どのような業務で活用できるのか。
最高経営幹部(CxO)が最も興味のあるAI(人工知能)技術の分野は何か。コンサルティング企業Deloitteが2025年1月に公開した調査レポート「State of Generative AI in the Enterprise」によると、CxOの52%が「AIエージェント」を挙げた。AIエージェントは、業務の中でリアルタイムに意思決定し、タスクを自律的に遂行するシステムだ。同調査レポートは2024年7月〜9月、AIに知見を持つ企業に勤務する2773人のCxOを対象にした実施された調査に基づく。
注目が高まるAIエージェントは、どのような業務に活用されているのか。前編に引き続き、活用例を5つ紹介する。
「AIエージェントは顧客対応全般を改善できる」と話すのは、コンサルティング会社Guidehouseのパートナーでデジタルビジネスリーダーのスチュアート・ブラウン氏だ。
ブラウン氏によると、AIエージェントは、従業員が「より早く回答を得て、より早い顧客サービスを提供する」ことを支援できる。AIエージェントを使うことで、個々の従業員のスキルや経験に関係なく、均一のサービスを顧客に提供できるようにもなる。
ブラウン氏によると、「AIエージェントは、従業員や従来のAI技術では対処しにくい、能動的な顧客サービスを提供できる」という。電力会社がAIエージェントを使えば、通常よりも高額な支払いを求められている顧客を特定し、その情報を顧客に伝えたり、高額な請求の理由を提供したりして、今後の請求額を抑える方法を提案することが可能だ。
タフツ大学(Tufts University)の電気、コンピュータ工学の教授で同大学院教育学部長のカレン・パネッタ氏によると、AIエージェントは創薬や新素材の探索でも能力を発揮する。同氏によると、創薬や新素材の探索では、すでにAI技術が使われてきたが、AIエージェントはさまざまなメリットをもたらす。
「AIエージェントは、新しい化合物の合成法を開発するのに役立つだけでなく、コストや時期といった条件に基づいて化合物の合成に使う材料のサプライヤーを選定したり、材料を注文したりすることもできる」と、パネット氏は説明する。
経営コンサルティング会社Booz Allen HamiltonでジェネレーティブAI部門のディレクターを務めるセイディアス・グッドウィン氏によると、AIエージェントは軍事分野における物流計画の策定にも有用だ。物流計画とは、距離に応じてさまざまな輸送手段を使い、物資や装備を運んだり、部隊を移動させたりする軍事任務だ。
ただし、軍事分野の物流におけるAIエージェントの活用はパイロット段階にあるとグッドウィン氏は指摘する。「AIエージェントは、人間の判断を置き換えるのではなく、人間の判断を補完する形で使用するものだ」と同氏は強調する。
ブラウン氏によると、製造業でもAIエージェントは能力を発揮する可能性がある。例えば、AIエージェントは以下に挙げる複雑な業務フローを実行できるという。
「これらの業務は人間がしていた作業だが、AIエージェントが実行できるようになった」とブラウン氏は述べる。一方で、「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI技術)の考え方に基づき、従業員の介入も必要だと同氏は指摘する。
ブラウン氏によると、AIエージェントは公共事業にも使用されている。公共事業者が目標を達成するために、AIエージェントを使った意思決定とタスクの自動化が実施されている。
ハリケーンや山火事といった災害への対処を検討する際にAIエージェントが利用されているとブラウン氏は説明する。AIエージェントがデータを分析してインフラの損傷や住民の影響を評価し、救助や復旧作業の計画を立てるといった具合だ。期限内に復旧を完了するために必要な作業員や材料を手配することも可能だ。これによって復旧までの所要時間を短縮したり、人命を救う可能性を高めたりすることができるとブラウン氏は述べる。
ブラウン氏は英国の公共事業会社の例も挙げる。停電が発生した際、医療上の理由で特別な配慮を必要とする顧客に対し、一定時間内に停電について連絡するといった場面でAIエージェントを使用しているという。
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