業務の効率化を考えた場合に視野に入るのが、自律的に意思決定をするAIエージェントの活用だ。AIエージェントとその他のAIツールを組み合わせた「AIオーケストレーション」はさまざまな業務で活用され始めている。
業務の効率化を進める際、「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)や「DPA」(デジタルプロセス自動化)は、事前に定められた手順に従って業務を自動化するのに役立つ。一方、人工知能(AI)技術を活用した「AIエージェント」は、業務の中でリアルタイムに意思決定し、タスクを自律的に遂行できるシステムだ。
AIエージェントを使った業務効率化にはどのような事例があるのか。AIエージェントの活用例を5つ紹介する。
経営コンサルティング会社Booz Allen HamiltonのジェネレーティブAI部門ディレクターであるセイディアス・グッドウィン氏は、AIエージェントの活用例を理解するためのキーワードとして「AIオーケストレーション」を挙げる。AIエージェントに指示を出すと、AIエージェントが複数のAIツールと連携して情報を出力することをAIオーケストレーションという。
例えば、エンドユーザーがAIエージェントにレポートの作成を指示すると、AIエージェントが複数のAIツールに調査やテキストの生成、画像の選択、デザインなどを任せる。その結果、エンドユーザーは単独のAIツールに指示するよりも完成度が高いレポートを受け取ることができる。
AIエージェントを使えば、検索の質を改善することが可能だ。グッドウィン氏によると、AIエージェントはナレッジベースにアクセスし、エンドユーザーの質問に回答する。エンドユーザーに代わって、次に取るべき行動を実行することも可能だ。
グッドウィン氏は、活用例としてヘルプデスクの業務を挙げる。ヘルプデスクで一般的に使用されるチャットbotは、エンドユーザーの問い合わせに回答するだけだ。
一方、AIエージェントは、問い合わせに回答するだけでなく、分析するところまで踏み込む。問い合わせの内容を分析した後、エンドユーザーに複数の解決策を提示する。
提示した情報に対するエンドユーザーの返答を基に、AIエージェントは情報を絞り込み、さらに適切な解決策を提示したり、解決策を実行したりする。問い合わせを解決できない場合、AIエージェントはその問題に対処する優先順位を決め、関連情報と共に従業員に転送する。エンドユーザーは従業員にもう一度、問い合わせをしなくて済む。
タフツ大学(Tufts University)の電気、コンピュータ工学の教授で同大学院教育学部長のカレン・パネッタ氏によると、セキュリティ対策やリスク軽減においても、AIオーケストレーションが効果を発揮する。
具体的には、複数のAIエージェントとセキュリティ関連のシステムを連携することで、自動的に新たな脅威を検出したり、是正措置を講じたりすることができる。従業員の異常な行動を検知し、不正なものかどうかを調査した上で、必要に応じて対処することも可能だ。
パネッタ氏によると、AIオーケストレーションは物流の分野でも有用だ。
例えば、ある作物の生産地域で干ばつが発生し、作物の調達やコストに影響が生じたとする。従来は、人間の担当者が他の地域で調達可能な作物と価格を確認したり、供給や配送ルートを再構成したりして、代わりの供給源を見つける必要があった。
一方、人間の担当者が必要な農産物の量や価格、最短の納期といった条件をAIエージェントに入力すると、さまざまなシステムと連携したAIエージェントが条件に合った情報を提供するだけでなく、実際に調達するための手続きの自動化が期待できる。
コンサルティング会社Guidehouseのパートナーでデジタルビジネスリーダーのスチュアート・ブラウン氏は「2025年初頭の時点で、すでにAIエージェントはコールセンターで大規模に稼働しており、従来のAI技術がもたらした業務効率化をさらに高めている」と説明する。
コールセンターにおいてもAIエージェントによるオーケストレーションが力を発揮する。AIエージェントは顧客の感情を分析するとともに、注文履歴や企業ポリシーを参照し、これらの情報を踏まえ、顧客の要望に対処をする。
次回も引き続き、AIエージェントの活用例を紹介する。
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