“ググる”時代はもう終わり? 「ChatGPT Search」は検索をどう変えるのかAI時代、検索市場の勢力図に変化?【第1回】

OpenAIのAI検索ツール「ChatGPT Search」が検索市場に新風を吹き込んでいる。どのような仕組みを持ち、検索の在り方をどう変える存在なのか。

2025年03月24日 08時00分 公開
[Sean Michael KernerTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | Google | 検索 | 検索エンジン


 21世紀初頭から、Googleの検索エンジン「Google検索」(Google Search)はインターネット検索の事実上の標準として君臨してきた。しかし近年、AI(人工知能)ベンダーOpenAIのAI検索ツール「ChatGPT Search」の登場により、その支配的な地位が揺らぎつつある。ChatGPT Searchはどのような仕組みを持ち、検索エンジン、ひいては知識探索のアプローチをどう変えるのか。

「ChatGPT Search」登場 検索エンジンの未来とは?

会員登録(無料)が必要です

 2024年10月、AI(人工知能)ベンダーOpenAIは、AIチャットbot「ChatGPT」に検索エンジンを組み合わせたChatGPT Searchの提供を開始。従来の検索エンジンがクエリ(検索文)に対してWebリンクを提示するのに対し、ChatGPT Searchは直接「答え」を返すことができる。

 ChatGPT Searchは、自然言語インタフェースを通じてユーザーのクエリを処理し、複数の質問に対してコンテキスト(文脈)を維持しながら対話を継続できる。従来の検索エンジンのように単にWebリンクを提示するのではなく、情報の要約と出典元を併せて提供することで、より直感的で会話型の検索体験を実現している。

 従来ChatGPTは、「ナレッジカットオフ」(AIモデルが学習したデータの最終更新日)の制約を抱えていた。AIモデルの知識は学習時点のデータに依存するため、最新の情報を取得できず、回答の正確さに欠ける点が懸念されていた。

 一方で、ChatGPT Searchはこうしたナレッジカットオフの影響を受けない。これは、複数の技術を組み合わせた検索システムによって実現されており、その基盤となるのはファインチューニング(独自の追加トレーニング)されたOpenAIのLLM「GPT-4o」である。

 さらにOpenAIは、事後学習(Post-training:追加トレーニングや基盤となる事前学習済みモデルのアップデート)でベースモデルの精度を向上させている。特に、「OpenAI o1-preview」の出力を蒸留(distillation)することで、より高精度の検索を可能にしているという。蒸留とは、大規模モデルから学習した知識を、小規模モデルの訓練に活用する手法だ。OpenAIによれば、o1モデルの大きな特徴は推論能力が向上している点であり、これがより正確な検索体験の基盤となっている。

 ChatGPT検索は、LLMの知識だけに依存せず、リアルタイム情報を取得するために追加の情報源を統合している。主な情報源は以下の通り。

  • サードパーティーの検索プロバイダー
    • 「Microsoft Bing」のようなサードパーティーの検索プロバイダー
  • メディアパートナー
    • The Associated Press、Reuters、Financial Timesといったメディアパートナーのコンテンツ

 こうしたChatGPTの進化を受けて、Googleも手をこまねいていたわけではない。GoogleはGoogle検索に生成AI機能を統合した「AI Overviews」(AIによる概要)を導入し、検索結果ページの上部に、検索結果を要約したり、製品の比較をしたりといった内容を表示するようにしている。

 さらに、ChatGPTとGoogleの双方が、AI技術を活用した新たな検索アプローチを模索している。その一つが「深層リサーチ」(Deep Research)と呼ばれるものだ。この手法では、OpenAIの「OpenAI o3」やGoogleの「Gemini 2.0」などの推論モデルを活用し、より包括的で詳細な検索を実現する。これにより、単なる情報の取得ではなく、より高度な推論を伴う検索が可能になりつつある。


 次回は、ChatGPT SearchとGoogle検索の違いについて解説する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品レビュー ストックマーク株式会社

AI技術を使って必要な情報を自動で抽出/要約する「情報収集サービス」の実力

日々情報が増え続ける今、業務に必要な全ての情報を、社内外の関連ニュースや論文、特許情報などから収集していくのは至難の業だ。そこで業務に必要な情報を着実に届けるための仕組み作りに役立つサービスを紹介する。

製品資料 ゼットスケーラー株式会社

セキュリティリーダー必見:データセキュリティの複雑化によるリスクの解消方法             

クラウド利用の拡大に伴い、データが分散・肥大化する中、従来のセキュリティ対策の限界が見え始めている。データの所在や利用状況を可視化し、リスクを事前に把握して対応することが求められる今、有効となる新たなアプローチを探る。

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

AI/MLトランザクション分析から読み取る、企業のリスク管理とセキュリティ課題

AIの活用が急速に進む一方で、セキュリティリスクの増大が懸念され、企業の対応が急務となっている。本資料では、2024年2~12月までの5365億件のAI/ML(機械学習)トランザクションの分析に基づき、その実態と対策を多角的に考察する。

事例 富士通株式会社

富士通が実践、AI時代に最適な設計プロセスを実現する方法

製造業の設計現場では、設計プロセスの複雑化などの課題が山積している。こうした中、注目を集めているのが生成AIの活用だ。本資料では、生成AIがもたらす設計業務の未来について、詳しく解説する。

製品資料 富士通株式会社

チャットbotだけで終わらせない、生成AIの“高度な活用”を実現するには?

多くの企業が業務における生成AIの有用性を実感する一方、高度な活用を目指すに当たり、壁に突き当たっているケースは多い。既存の業務やシステムと生成AIをスムーズに組み合わせ、自社に合った形で活用するには、どうすればよいのか。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...