OpenAIのAI検索ツール「ChatGPT Search」が検索市場に新風を吹き込んでいる。どのような仕組みを持ち、検索の在り方をどう変える存在なのか。
21世紀初頭から、Googleの検索エンジン「Google検索」(Google Search)はインターネット検索の事実上の標準として君臨してきた。しかし近年、AI(人工知能)ベンダーOpenAIのAI検索ツール「ChatGPT Search」の登場により、その支配的な地位が揺らぎつつある。ChatGPT Searchはどのような仕組みを持ち、検索エンジン、ひいては知識探索のアプローチをどう変えるのか。
2024年10月、AI(人工知能)ベンダーOpenAIは、AIチャットbot「ChatGPT」に検索エンジンを組み合わせたChatGPT Searchの提供を開始。従来の検索エンジンがクエリ(検索文)に対してWebリンクを提示するのに対し、ChatGPT Searchは直接「答え」を返すことができる。
ChatGPT Searchは、自然言語インタフェースを通じてユーザーのクエリを処理し、複数の質問に対してコンテキスト(文脈)を維持しながら対話を継続できる。従来の検索エンジンのように単にWebリンクを提示するのではなく、情報の要約と出典元を併せて提供することで、より直感的で会話型の検索体験を実現している。
従来ChatGPTは、「ナレッジカットオフ」(AIモデルが学習したデータの最終更新日)の制約を抱えていた。AIモデルの知識は学習時点のデータに依存するため、最新の情報を取得できず、回答の正確さに欠ける点が懸念されていた。
一方で、ChatGPT Searchはこうしたナレッジカットオフの影響を受けない。これは、複数の技術を組み合わせた検索システムによって実現されており、その基盤となるのはファインチューニング(独自の追加トレーニング)されたOpenAIのLLM「GPT-4o」である。
さらにOpenAIは、事後学習(Post-training:追加トレーニングや基盤となる事前学習済みモデルのアップデート)でベースモデルの精度を向上させている。特に、「OpenAI o1-preview」の出力を蒸留(distillation)することで、より高精度の検索を可能にしているという。蒸留とは、大規模モデルから学習した知識を、小規模モデルの訓練に活用する手法だ。OpenAIによれば、o1モデルの大きな特徴は推論能力が向上している点であり、これがより正確な検索体験の基盤となっている。
ChatGPT検索は、LLMの知識だけに依存せず、リアルタイム情報を取得するために追加の情報源を統合している。主な情報源は以下の通り。
こうしたChatGPTの進化を受けて、Googleも手をこまねいていたわけではない。GoogleはGoogle検索に生成AI機能を統合した「AI Overviews」(AIによる概要)を導入し、検索結果ページの上部に、検索結果を要約したり、製品の比較をしたりといった内容を表示するようにしている。
さらに、ChatGPTとGoogleの双方が、AI技術を活用した新たな検索アプローチを模索している。その一つが「深層リサーチ」(Deep Research)と呼ばれるものだ。この手法では、OpenAIの「OpenAI o3」やGoogleの「Gemini 2.0」などの推論モデルを活用し、より包括的で詳細な検索を実現する。これにより、単なる情報の取得ではなく、より高度な推論を伴う検索が可能になりつつある。
次回は、ChatGPT SearchとGoogle検索の違いについて解説する。
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
AIは生産性や顧客満足度の向上などさまざまな効果をもたらすが、その導入時に、AIモデルの管理/監視、従業員のスキルギャップ、データの一貫性などの課題に悩まされる企業は多い。これらを解消するために必要な、AI戦略の進め方とは?
企業にとって生成AIは、生産性向上や収益性増加をもたらす重要な技術だが、導入には多くの課題が存在する。PoC(概念実証)段階で約30%の企業が導入を断念するといわれる生成AIプロジェクトを成功に導くための方法を紹介する。
生成AIによって既存業務の生産性向上といった成果を上げる企業が増えている今、AIをより効果的に活用するための鍵になるといわれているのが、AI処理に特化した「Copilot+ PC」だ。AI PCが具体的にどのような変化をもたらすのかを解説する。
企業のDX支援などを手掛けるSpeeeでは、各チームの業務に最適化されたAIエージェントを、現場レベルで自律的に開発/活用するための環境を提供している。このようにAIとデータの活用を民主化した理由とシステム構成を解説する。
ビジネスにおけるAIへの依存度が高まる一方、AIのアウトプット品質に関する懸念が広まっており、導入をためらう組織も増えている。本資料では、AIシステムの精度を高め、アウトプットの品質を担保するための具体的な方法を解説する。
ドキュメントから「価値」を引き出す、Acrobat AIアシスタント活用術 (2025/3/28)
広がるIBM i の可能性 生成AIによる基幹システム活用の新たな技術的アプローチ (2025/3/28)
「NVIDIAのGPUは高過ぎる……」と諦める必要はない? GPU調達はこう変わる (2025/3/11)
PoCで終わらせない企業の生成AI活用 有識者が語る、失敗を避けるためのノウハウ (2024/10/18)
生成AIのビジネス利用 すぐに、安全に使うためには? (2024/8/26)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...