米国の企業が相次いでDEIに関するポリシーを見直し始めている。Amazon.com、Google、Meta Platformsといった大手IT企業も、過去に掲げた目標を取り下げた。何が起きているのか。
DEI(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)は人種、性別、宗教、民族、障害、年齢、文化、性的指向など、多様な背景を持つ人々を尊重し、受け入れる考え方だ。企業はDEIの概念に基づいて、多様性を育み、多様な人々の権利を向上させるための取り組みを実施している。
一方で複数の米国企業が、DEIの活動を後退させ始め、DEIポリシーの変更やイニシアチブの全面廃止を発表している。
ドナルド・トランプ氏は米国大統領就任後の2025年1月、連邦政府のDEIプログラムを終了する大統領令に署名した。これを受けてNASA(米航空宇宙局)はDEIプログラムを終了し、WebサイトからDEI関連の単語や語句を削除した。これらのDEIに関する政府レベルの方針転換が波及し、複数の米国企業がDEIポリシーの変更に手を付け始めている。どのような動きが生じているのか。
ニュース放送局CNBCが入手したAmazon.comの社内報によると、Amazon.comで人事担当シニアエグゼクティブを務めるキャンディー・キャッスルベリー氏は、DEIの効果を検証した結果、DEI関連の取り組みを縮小することを従業員に通知した。撤回するプログラムやイニシアチブは不明ではあるものの、Amazon.comの言葉遣いや姿勢には変化が見られる。
2020年、Amazon.comは幹部職における黒人従業員数を2倍に増やすことを目標に掲げた。その後2021年には、製品管理などの部門における黒人従業員の割合を2020年比で30%以上増やすという目標も定めた。キャッスルベリー氏が社内報を出した後、Amazon.comがWebサイトでDEIに関係する記述を減らしたことをCNBCは確認した。
Googleも、ここ最近DEIへの取り組みの後退を発表した企業の一社だ。2020年に起こった「Black Lives Matter」運動を受け、同社は「黒人系従業員の経営層における割合を向上させ、幹部層に属するマイノリティーの割合を30%上げる」といった5カ年目標を掲げていた。
それから一変して、Googleの親会社AlphabetはDEI関連の文言を2025年の年次報告書から削除した。2021〜2024年の報告書には存在した、「当社は全ての活動においてダイバーシティー、エクイティー、インクルージョンに力を入れ、サービスの利用者を代表する多様な従業員の成長に力を入れている」という文言が削除されていたのだ。
経済誌『The Wall Street Journal』が入手した社内報では、Alphabetで最高人事材責任者を務めるフィオナ・チッコーニ氏は次のように記していた。「当社は連邦事業請負業者として、最新の司法判断と米国の行政命令に従うためにDEIプログラムの変更を検討している。今後は野心的な目標を掲げることはないだろう」
マーク・ザッカーバーグ氏率いるMeta Platformsも、DEIの後退を発表した大手IT企業の一社だ。
ニュースサイトAxiosが入手した社内報において、Meta Platformsで人事担当のバイスプレジデントを務めるジャネル・ゲール氏は「このような方向転換を行う理由は、米国におけるDEI活動を巡る法令と施策の状況が変化しているためだ」と説明した。ゲール氏は同社の方針について、次の変更点を掲げた。
この社内報は、Meta Platformsが運営するソーシャルメディア「Instagram」「Facebook」「Threads」において、発言のファクトチェックプログラムを終了させることを公表してから、わずか3日後に配信されたとAxiosは報じている。
次回も引き続きDEI推進を取りやめた企業の事例と、DEIに取り組み続ける企業の例を紹介する。
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