企業がさまざまな場面でAI(人工知能)技術を活用する中で、AI技術が人間の業務を奪うことに不安の声が上がる。だが人間にしかできない業務もある。今後も残り続ける仕事とは。
人工知能(AI)技術が進化し、さまざまな職場でAI技術の活用が進む中で、人間の業務がAI技術に奪われることに対する不安の声が上がるようになった。だがAI技術がどれだけ進化しても、AI技術では置き換えられない業務はある。今後も人間が担い続けると考えられるのは、どのような仕事なのか。
世界の主要な宗教や宗教団体は、コミュニティー意識や信者同士の関わり合いを前提として成り立っている。それをAI技術が代替するのは現実的ではない。
だが、AI技術を使った例はある。カトリックのある団体が「ジャスティン神父」というAI司祭を開発した。ジャスティン神父は、赤ちゃんの洗礼に清涼飲料水を使っても構わないといった不正確な説教を発信したため、最終的に使えなくなった。
ノートルダム神学校(Notre Dame Seminary)で神学部長を務める神父、デオグラティアス・エキサ氏は、OpenAIの生成AIツール「ChatGPT」に説教文の生成を依頼したことがある。生成された文章には、捏造(ねつぞう)した情報が含まれていたという。「説教に私の個人的な経験は含められてはいたが、私が信じ、伝えたいことは的確に表現されてはいなかった」とエキサ氏は振り返る。
教会や宗教団体では、信者同士のコミュニティーの運営や信者とのコミュニケーションが重要だ。それをAI技術が代替することはできないとエキサ氏は指摘する。「病気や死の瞬間に慰めを与えるような行為は、信仰心と個人に目を向けた関わり合いだ」(同氏)
政治家には、
などが必要だ。これらをデータ分析の技術だけでこなすことは困難だ。
米ワイオミング州の州都シャイアンの市長選挙では、あるAIチャットbot(AI技術を活用したチャットbot)が話題となった。同市在住のビクター・ミラー氏が、ChatGPTをカスタマイズしたチャットbot「Virtual Integrated Citizen」(VIC)と共に立候補したためだ。ミラー氏は地元の図書館で選挙活動を実施した際、「VICはOpenAIのテクノロジーを使って政治的決断を下し、市政を助ける存在だ」と主張した。
ただし立候補の情報が明らかになった後、OpenAIは「政治活動やロビー活動にChatGPTを使うことは当社のポリシーに違反する」として、ミラー氏のアカウントを閉鎖した。
チャットbotが人間の政治活動を支援するという考え方は興味深い。一方で、経済政策の遂行や人口政策といったセンシティブかつ重要な意思決定をAI技術に委ねることは、深刻かつ悲惨な結果につながる恐れがある。
配管工や電気技師、伝統工芸職人といった技術者には、
などが求められる。例えば、配管工は複雑な配管システムを熟知しており、課題に応じて狭い場所に入り込み、迅速に状況判断を下さなければならない。AI技術が、このような身体を使った活動や、迅速な思考に対応できるとは考えづらい。
配管工や電気技師、伝統工芸職人といった技術者の業務には、
などが必要だ。例えば、電気技師はある住宅で起こった配線の問題を解決するだけでなく、その住宅の住民の安全上の懸念を取り除く必要もある。この取り組みにはAI技術では実現できないレベルの共感力と判断力が求められる。
AI技術が技術者の仕事を奪うことはないにしても、AI技術が技術者を支援することはできる。例えばHVACシステム(空調整備システム)がある。HVACシステムでは、温度や圧力といったデータをセンサーを使って取得し、AI技術を用いて状況を分析したり、潜在的な問題を検出したりできる。例えば、ファンの振動パターンが標準から外れた場合、故障が差し迫っていることを予測し、故障が起きる前にメンテナンスのスケジュールを設定できる。
世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2024年4月に公開した資料「Shaping the Future of Learning: The Role of AI in Education 4.0」によると、AI技術には教員の職務を奪うのでなく、教員の業務を補完する存在としての期待が集まっている。それは教員の職務が単なる情報提供にとどまらないためだ。教員は、学習者のメンターとしての役割を果たすだけでなく、学習者にとって社会で出会う最初のロールモデルとなる可能性がある。AI技術は個人に合わせた学習や指導を支援したり、自動採点を実施したりすることで教育活動の業務効率を改善できる。
ただし、教員の仕事はそれだけではない。人格形成が成される時期に生徒と関わり、認知力の向上を助け、各学習者のニーズを理解して、指導する活動は人間にしかできない。教育IT関連情報を提供するWebサイト「Ditch That Textbook」によると、保護者は人間の教員が子どもを指導することを望んでいるという。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)を契機に、リモートでの学習は広がったが、その課題も明らかになった。大半の家庭は、教室で教員が指導する授業を受けるために子どもを学校に戻したいと熱望した。
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