“利益を生む”ための「AI戦略」とは? 押さえておきたいAI活用術10選AIによる収益化アプローチ10選【前編】

多くの企業がAI導入を急ぐ中で、「利益を出せるか」という視点が置き去りになっていないか注意が必要だ。企業がAIで利益を生み出すための10のヒントを紹介する。

2024年11月11日 05時00分 公開
[John MooreTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 人工知能(AI)に対する企業の関心は、ここ数年で急上昇した。特に、AIベンダーOpenAIのAIチャットbot「ChatGPT」の登場を皮切りに、テキストや画像を生成する「生成AI」やそのベースとなる大規模言語モデル(LLM)が大きな注目を集めるようになった。

 これまで企業は「他社に後れを取りたくない」という不安からAI導入を急ぐ傾向にあった。しかし昨今は、「AIをどう使い、利益を生み出すか」という現実的な視点が重視されているようだ。特に、PoC(概念実証)段階だったAIプロジェクトが本格始動するにつれて、収益化の期待も高まっている。本連載は、収益を増やすためにAI技術をどう活用すべきか、10のヒントを紹介する。

“利益を生む”ためのAI活用術10選

1.売り上げの増加

 AI技術をベースにした仮想アシスタントやチャットbotを導入して顧客体験価値(CX)を強化することは、企業の売り上げ増加につながる可能性がある。家具小売業者IKEAは、顧客向けにAIアシスタント「IKEA GPT AI Assistant」を導入している。顧客が自宅のインテリアをデザインしたり、家具を購入したりする際に、このAIアシスタントがサポートを提供する。宝石保険会社BriteCoも同社の顧客向けにAIチャットbotを開発し、問い合わせにおける離脱率の減少に役立てている。

 TechTargetは2023年10月から12月にかけて、世界のITおよびビジネス意思決定者1432人に対して支出目的調査を実施した。これによると、今後の優先投資分野の上位3選は生成AI、顧客関係管理(CRM)、チャットbotだった。

2.顧客離れの阻止

 AI技術を活用してCXを強化することで、製品やサービスの顧客離れを阻止し、売り上げの損失を軽減することができる。具体的には、AI技術を用いて顧客データを分析し、離脱するリスクの高い顧客を把握する。その情報を基に、顧客満足度を高めるための施策を打ち出す。チャットbotやコンタクトセンターにAIを組み込むことで、顧客体験のパーソナライズ化も可能になる。

3.レコメンデーションエンジンの強化

 顧客の購入履歴や行動データをAIアルゴリズムで分析することで、提案のパーソナライズ化が可能となる。企業は顧客に新しい製品やサービスを購入してもらうためのクロスセル(関連商品の売り込み)やアップセル(上位モデルや高機能の提案)がしやすくなる。

 ユーザーの閲覧履歴や行動データを基にコンテンツを表示するレコメンデーションエンジンの導入は、SNSにおけるユーザーの滞在時間を伸ばし、広告主を集める上で効果的だ。Meta(旧Facebook)は2024年初頭、顧客エンゲージメントの強化に向けて、同社のビデオ関連製品にAI搭載のレコメンデーションエンジンを導入した。同社のCEOマーク・ザッカーバーグ氏は2024年第2四半期(2024年4~6月)の収支報告で、「将来的は全てのコンテンツに共通のレコメンデーションシステムを導入する計画だ」と述べた。

4.マーケティング戦略の加速

 マーケティングは直接収益を生み出すわけではない。一方で、効果的なマーケティングはリード(見込み客)獲得に貢献する。企業は生成AIを用いて、ニュースレターや動画広告などのコンテンツを短期間で作成できる。さらにパーソナライズ化というAIの利点を生かして、顧客一人一人の関心に合うメッセージを作成し、マーケティングの効果を最大化できる。調査会社Gartnerの予測によると、2025年までに大企業が発信するマーケティングメッセージの30%がAI技術によって生成されるという。この数字は、2022年の2%未満から大幅な上昇となる。

5.不正行為の検出

 金融サービスを提供する企業を中心に、不審な活動の検出にAI技術が使われている。例えば米金融機関のCapital Oneは、機械学習アルゴリズムを用いて異常な取引を検知し、クレジットカード詐欺を防いでいる。eコマース(EC:電子商取引)企業も、AI技術を用いて不正な注文を特定し、詐欺被害を未然に防いでいる。ユーザーの行動パターンを認識し、分析するAIの能力は、詐欺のリスクを低減し、企業の安全性と利益を守る手助けとなっている。


 次回も引き続き、収益化の観点からAI導入のポイントを解説する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

製品資料 Splunk Services Japan合同会社

金融サービス業界のレジリエンス向上、AI活用の有効性とその実装方法とは

イノベーションの加速とともに、セキュリティやレジリエンスの維持などさまざまな課題が顕在化している金融サービス業界。課題の中身を確認しながら、その解決策として期待されるAI活用の有効性や実装方法を紹介する。

市場調査・トレンド Splunk Services Japan合同会社

金融業界におけるAIと機械学習の活用が進む中、解消しておきたい5つの誤解とは

金融業界においてAIツールの活用が進んでいる。一方で、セキュリティ面の不安を抱えている金融サービス企業は少なくない。このような懸念は、リスクとメリットを考慮して、AIと機械学習の戦略を策定することで解消できる。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

AIには代替できない「ITエンジニア職」はこれだ

AI技術は進化を続け、人間の仕事の一部はAIによって代替可能になる。AI技術に代替されにくいITエンジニアの職種とは何か。ITエンジニアはどのようなキャリアを歩むべきなのか。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

AI活用を加速させる、スーパーコンピューティングの実力

AI活用には処理スピードが重要となる。特に、大規模言語モデルのトレーニングでは、長期的に稼働できる強力なコンピュート性能も求められる。そこで注目したいのが、AIモデルのトレーニングを加速させるスーパーコンピューティングだ。

製品レビュー 日本ヒューレット・パッカード合同会社

開発や分析の多様なニーズに応えながら、組織全体にAIを導入する方法とは?

AIを使ったイノベーションの推進が期待されているが、組織全体にAIを導入するためにはいくつかの課題を解消することが必要だ。開発や分析を担うエンジニアやデータサイエンティストのニーズに応えながら、組織全体にAIを導入する方法とは?

鬩幢ス「隴主�蜃ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隰ィ魑エツ€鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�スPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

郢ァ�「郢ァ�ッ郢ァ�サ郢ァ�ケ郢晢スゥ郢晢スウ郢ァ�ュ郢晢スウ郢ァ�ー

2025/04/16 UPDATE

  1. 雎主ョ育舞闔��コ陝セ�・驕擾ス・髢ュ�ス�ス�スAGI�ス蟲ィ竊馴恆莉」笆シ邵コ�ス笳�クイ阮ォpenAI o3邵イ髦ェ�ス雎包スィ騾カ�ョ邵コ蜷カ竏狗クコ閧エ讖ソ髯ヲ阮吮�邵コ�ッ�ス�ス
  2. 邵イ髱エhatGPT Search邵イ髦ェ竊堤クイ髫�oogle隶€諛�スエ�「邵イ髦ェ�ス雎趣スコ陞ウ螟ょ飭邵コ�ェ鬩戊シ費シ樒クコ�ッ邵コ阮呻ス檎クコ�ス
  3. 遯カ諛翫£郢ァ�ー郢ァ驫€ツ€譎��闔会ス」邵コ�ッ郢ァ繧�鴬驍ィ繧�ス冗ケァ螂�スシ貅伉€ツ€邵イ髱エhatGPT Search邵イ髦ェ�ス隶€諛�スエ�「郢ァ蛛オ竊千クコ�ス�、蟲ィ竏エ郢ァ荵晢ソス邵コ�ス
  4. ChatGPT邵コ�ョ邵イ髫�PT邵イ髦ェ竊堤クコ�ッ�ス貅伉€ツ€闔画��オ�ス竏ゥ郢ァ�ス逡鷹ィセ譁絶�邵コ�ゥ遯カ蟒喇atGPT邵コ�ョ陜難スコ隴幢スャ遯カ譏エ�帝囓�」髫ア�ャ
  5. 邵イ譬裕闔��コ隴夲ソス500闕ウ�ス�コ�コ邵イ髦ェ�ス郢ァ�、郢晢スウ郢晏ウィ窶イAI鬮「迢怜験邵コ�ァ鬮ッ�・郢ァ驫€ツ€諞コ謦慕クコ荵昶�郢ァ蜿・莠幄ョ匁コェツ€譏エ竊堤クコ�ッ
  6. AI隶€諛�スエ�「邵イ髱エhatGPT Search邵イ髦ェ窶イ騾具スサ陜」�エ邵コ蜉ア窶サ郢ァ繧�€髫�oogle隶€諛�スエ�「邵イ髦ェ窶イ闖エ�ソ郢ァ荳奇ス碁け螢ケ��郢ァ迢礼j騾包スア
  7. 邵イ髫�emini 2.0 Pro邵イ蜥イ蛹ウ陜」�エ邵コ�ァ髫穂ケ昶斡邵コ讙ャoogle邵コ�ョ遯カ諛域た雎梧€懶スコ�ヲ遯カ譏エツ€ツ€郢晢スヲ郢晢スシ郢ァ�カ郢晢スシ邵コ�ッ闖エ霈披€イ邵コ�ス�檎クコ蜉ア�橸ソス�ス
  8. 驍ィ謔滄悸陝キ�ケ鬩幢スィ邵コ譴ァ謔��包ソス�帝婿�ィ郢ァ蟲ィ竏ェ邵コ蟶呻ス狗クイ遯櫑郢ァ�ィ郢晢スシ郢ァ�ク郢ァ�ァ郢晢スウ郢晏現ツ€髦ェ�ス闖エ霈披�闖エ�ソ邵コ蛹サ�狗クコ�ョ邵コ蜈キ�シ貅伉€ツ€雎「�サ騾包スィ關難ソス5鬩包スク
  9. OpenAI邵コ�ョ隴�スーLLM邵イ邨�3邵イ髦ェ�ス邵イ邨�1邵イ髦ェ竊定抄霈披€イ鬩戊シ披鴬�ス貅伉€ツ€邵コ�ェ邵コ諛環€邨�2邵イ髦ェ�ス陝�シ懈Β邵コ蜉ア竊醍クコ�ス�シ�ス
  10. OpenAI邵コ�ク邵コ�ョ隰壽��ウ�ス�ス邵イ迹夲スウ�ュ邵コ莉」竊馴實�ュ邵コ莉」�帝ゥ・髦ェ�ス郢ァ荵晢シ�クコ�ィ邵イ髦ェツ€ツ€陝�k鞫ゥ陞ウ�カ邵コ譴ァ谺�髷ォ蛟・笘�ケァ蜿・驟秘♂�セ邵コ�ョ髫ア�イ鬯伜セ娯�邵コ�ッ

“利益を生む”ための「AI戦略」とは? 押さえておきたいAI活用術10選:AIによる収益化アプローチ10選【前編】 - TechTargetジャパン エンタープライズAI 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

TechTarget鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ク鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�」鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス雜」�ス�ヲ 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ゥ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ュ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ー

2025/04/16 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。