OpenAIが2024年5月に発表した「GPT-4o」が世間の関心を集めるものの、移行にためらう企業もある。それはなぜなのか。
AI(人工知能)ベンダーOpenAIが2024年5月に発表した大規模言語モデル(LLM)「GPT-4 Omni」(GPT-4o)は、同社が2023年11月に発表したLLM「GPT-4 Turbo」から複数の点で進化した。その技術的な進化が世間の関心を引く一方で、GPT-4oへの移行をためらう企業もある。それはなぜなのか。
GPT-4 Turboを含むGPT-4シリーズは既にさまざまな企業が活用している。特に信頼性が重視されるアプリケーションや、広く利用されるアプリケーションを運用する企業は、最新機能よりも運用の安定性を優先する傾向にある。
GPT-4oの価格設定の水準はGPT-4よりも低い。ただしGPT-4oへの移行にコストがかかることを前提にすると、慎重に考える必要がある。特にGPT-4とシステムが緊密に統合されている場合、移行に伴ってインフラやワークフローの大幅な変更が必要となり、それが大きな負担になると考えられる。
API(アプリケーションプログラミングインタフェース)版とWebアプリケーション版の違いにも注意が必要だ。GPT-4oはテキストだけでなく画像や音声など複数の形式のデータを扱えるマルチモーダルモデルだ。しかし2024年5月時点で、API版GPT-4oでは画像生成機能や音声機能を扱えないとされている。API版を使用する企業にとって、GPT-4oへの移行を検討する理由は十分ではない可能性がある。
GPT-4oの発表で特筆すべきは、無料版ユーザーがマルチモーダル機能にアクセスできるようになった点だ。ユーザーはテキストだけでなく画像や音声、動画を用いてChatGPTとやりとりできるようになる。GPTをカスタマイズして特定のビジネスニーズに特化したGPTを作成できるサービス「GPTs」(GPT Builder)など、以前は有料版ユーザーのみ利用できた機能も、一部利用が可能となる。
これに伴い、「ChatGPT Plus」など有償プランの魅力が薄れるのではないか、と考える人もいるだろう。有償プランでは、質問できる回数が多かったり、応答時間が速かったりといったメリットがある。ChatGPTのヘビーユーザーや、長文を扱いたい、応答の一貫性と信頼性を確保したい企業やユーザーにとって、有償プランは引き続き有力な選択肢だと言える。
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