「VMware製品のライセンス変更」をプラスに受け止める企業の本音Broadcomのプライベートクラウド戦略【後編】

BroadcomによるVMware製品のライセンス変更によって、負担が増加しているユーザー企業がある。一方で、こうした変化を前向きに受け入れているユーザー企業も存在する。

2024年10月31日 05時00分 公開
[Scott SinclairTechTarget]

 仮想化ベンダーVMwareを買収した半導体ベンダーBroadcomは、VMware製品のライセンスおよび製品戦略を刷新した。複数のVMware製品をパッケージ化して、永続型ではなくサブスクリプションライセンスで購入するように顧客に求めるようになった。

 Broadcomの戦略変更により、実質的にコストが増えた企業が存在するが、同社が2024年8月27日(現地時間)に開催したイベント「VMware Explore」では好意的な声もあった。Broadcomの戦略を好意的に受け止める企業の考えやその背景にあるものとは。

「ライセンス変更」を前向きに受け止める企業の本音

 BroadcomはVMware Exploreで、プライベートクラウド構築用製品群の「VMware Cloud Foundation」(VCF)の次期バージョン「VMware Cloud Foundation 9.0」(VCF 9.0)を発表した。

 VCF 9.0は、さまざまなVMware製品や機能をVCFに集約する方向で機能を強化する。BroadcomはVMware製品を統合すると同時に、提供可能な機能を増やしている。これは「フルスタックのプライベートクラウド」を提供するというBroadcomが掲げる基本方針に沿っている。今後のVMware製品の開発計画もこの方針に沿うことになり、この方針を顧客が受け入れるか否かがBroadcomの長期的な成功を左右するだろう。

 BroadcomがVMware製品のライセンスモデルを変更したことは、パートナーや、新しいサブスクリプションライセンスへの切り替え時にコストが上昇する顧客にフラストレーションを引き起こした。これは結果として、Microsoft、Red Hat、Nutanixなどのベンダーが提供するVMware製品の代替品への関心を高めることとなった。

 このフラストレーションが2024年のVMware Exploreへの参加者が減少した一因だろう。ただし実際には、VMware製品のサブスクリプションライセンスを全面的に受け入れている参加者や、Broadcomが掲げるプライベートクラウドのビジョンに期待を寄せている参加者もいた。そうした参加者は、将来的にはサブスクリプションライセンスの方がより多くの価値を生み出すという期待を抱いている。

 2024年のイベントでBroadcomはプライベートクラウドに重点を置くというメッセージを伝えた。重要な点はBroadcomが掲げるプライベートクラウドのビジョンには、複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」も含まれることだ。つまり、VCFはオンプレミスインフラにもパブリッククラウドにも導入できるし、どちらに導入しても共通の体験を得ることができる。

 米TechTarget傘下の調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)によると、Broadcomのアプローチには実際にメリットがある。ITおよびクラウドサービスの複雑さが一部の企業で課題になっているからだ。ESGの調査によると、複雑さによってITの運用や戦略の進行が遅れていることに同意しているIT部門は珍しくない。

 優れた運用自動化の仕組みをITインフラに導入して運用効率が向上することは、より競争力のあるビジネスにつながる。運用業務を効率化すれば、その分だけビジネスの成長のための業務に注力できるからだ。

 BroadcomのVMware製品に対するビジョンが受け入れられるか否かという問題とは別に、プライベートクラウドの導入によって、開発プロセスの高速化やシステム管理者の負担を軽減できる可能性がある。ただし、フルスタックな製品やサービスを選択することは、自由を失うことでもある。つまり、自分の好みのツールを選べなくなる。

 Broadcomは、以下の2点が長い目で見ればユーザー企業にとって価値があると判断している。

  • プライベートクラウドとそれに必要な機能を自社で提供するというシンプルさ
  • 機能の継続的な強化

 Broadcomは一般的な企業では、さまざまなベンダーを利用してプライベートクラウドを構築してもその価値を維持できないと考えている。

 あるVMware Exploreへの参加者は、Broadcomのビジョンを肯定的に評価していた。さらに、同イベントでは自社が利用するVMware製品のサブスクリプションライセンスの価値を「将来的に最適化」するために、自社のコンピューティング環境を調査してVMware製品の利用率を高めようと検討している企業も珍しくなかった。

 Broadcomが示す統合されたプライベートクラウド像は、実現すれば企業の運用や負担が効率化する可能性がある。

 ただし、VCFがどれだけの価値を持つようになるかは、Broadcomが機能強化を継続するか、Broadcomが企業の望む「統合されたフルスタックのプライベートクラウドの提供」に注力し続けるかどうかによって決まる。サブスクリプションライセンスへの変更に関して、顧客が進めている投資に見合う価値をBroadcomは今後も継続的に提供できるのか、という問い掛けにBroadcomは答えなければならない。

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