BroadcomがVMwareを買収した影響を見越して、バックアップソフトウェアベンダーが新たな方針を打ち出した。ベンダーの見立てと、ユーザー企業が今後下す可能性のある判断とは。
半導体ベンダーBroadcomが仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを買収した影響の余波は、仮想化以外の分野にも広がっている。バックアップソフトウェアベンダー数社は、VMware製品からユーザー企業が離れることを見越したとみられる方針を打ち出し始めた。とはいえ、これからの動向についてはまだ読み切れない部分がある。ベンダーの見立てと、ユーザー企業が今後どういう判断を下す可能性があるのかを考察する。
バックアップや災害復旧(DR)のツールを提供するベンダー各社は、今後数年でユーザー企業がVMware製品の仮想化ソフトウェア群に見切りを付けると見込んでいる。その背景にあるのは、データセンターにおける仮想化の“旗手”としてやってきたVMwareが、従来の永久ライセンスを廃止して、サブスクリプション型のライセンスに移行したことだ。
とはいえ、一部ではVMware製品の顧客流れが起きるにしても、業界関係者はVMware製品からの大量離脱が起きることはないとみている。ユーザー企業はVMware製品に強く依存しており、他の仮想化ソフトウェアによる仮想化基盤に切り替えることには、複雑な移行作業が伴うからだ。
一方で、VMwareのソフトウェアに代わる選択肢は広がっている。Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Veeam Software、Rubrikといったベンダーは、提供するバックアップツールにおいて以下のような仮想化ソフトウェアを対象にするようになっている。
Veeam Softwareは2024年6月に開催した年次カンファレンス「VeeamOn」で、Proxmox VEとOracle Linux Virtualization Managerを対象に加えると発表。HPEも6月、同社のイベント「HPE Discover」で、バックアップソフトウェア「Zerto」がKVMを対象に加えることを明らかにした。Rubrikは7月、Proxmox VEとRed Hat OpenShift Virtualizationを対象に加える計画を公表した。
その他には、以下もVMwareの仮想化ソフトウェアに代わる候補となる。
調査会社Futurum Groupのアナリスト、クリスタ・マッコーマーケース氏は、バックアップベンダーは対仮想化ソフトウェアの取り組みに2つのメッセージを込めていると指摘する。以下の2点だ。
現実的には、VMwareがパートナー企業や顧客と構築してきた広範な協力体制に、オープンソースの代替製品はほとんど太刀打ちできない。マッコーマーケース氏や他のアナリストによると、バックアップベンダーが見越しているようなVMware製品からの離反は、大規模には起こらない可能性がある。
今後ユーザー企業において起こり得ることの一つとしてマッコーマーケース氏が挙げるのは、新しい、あるいは小規模なシステムをオープンソースの仮想化基盤に移行し、試しに使用してみることだ。その結果を踏まえて、ユーザー企業はより大規模な移行を実行に移すのかどうかを判断する可能性があると同氏はみる。
だがそうした予測も、実際には極端な見方に過ぎない可能性がある。Futurum Groupによれば、VMware製品のユーザー企業はほとんどの場合、VMwareの仮想化ソフトウェアを使い続けようとしている。Futurum Groupは、VMware製品からの乗り換えの動きが大きくなるとは予測していない。「多くの場合、移行作業はあまりに複雑で、さまざまなリスクが伴う」とマッコーマーケース氏は語る。
次回はBroadcomが提供する選択肢も踏まえて、ユーザー企業の移行判断がどう動く可能性があるのかを考察する。
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