「VMware ESXi」と「Nutanix AHV」を比較するときは、複数の要素に基づいて自社に最適なのはどちらなのかを判断する必要がある。ライセンス体系や他製品との連携、管理のしやすさなどの観点から両者を比較する。
VMwareの「VMware ESXi」とNutanixの「Nutanix AHV」は、どちらも企業が必要とする機能を十分に備えているハイパーバイザー(コンピュータを仮想化するソフトウェア)だ。IT管理者はどちらかを選択するときに、インフラ運用の目的は何か、運用において最も重視する項目は何かなど、複数の要素に基づいて検討することが欠かせない。本稿は両者を比較する際のポイントを説明する。
VMware ESXiとNutanix AHVの間にはライセンス体系や価格、サードパーティー製品との互換性、管理の容易さなどの点で違いがある。
VMware ESXiは永久ライセンスの販売が終了し、新規ライセンス及び更新ライセンスが全てサブスクリプション形式で提供されるようになった。ライセンスの購入単位は、物理CPUの個数から物理CPUのコア数ごとに変更になった。2024年2月には無料版VMware ESXiの提供が終了した。
Nutanix AHVには無料で利用できる開発者向けライセンス「Nutanix Community Edition」がある。ただし同ライセンスには制限がある。単一のハイパーバイザーインスタンスのみで実行可能で、追加機能やアドオン、SDS(ソフトウェア定義ストレージ)は含まれない。
Nutanix AHVをHCI構成で利用するには、「Nutanix Cloud Infrastructure」(NCI)ライセンスを購入する必要がある。ストレージの拡張には、物理ストレージだけでなく、SDSのためのライセンスを追加する必要がある。
VMware ESXiには活発なエコシステム(ベンダーの共存共栄の仕組み)がある。仮想インフラの管理やバックアップ、自動化などの機能を追加するためのさまざまなアドオンが存在する。
一方でNutanix AHVは、VMware ESXiほどアドオンは豊富ではない。Nutanixはエコシステム全体を厳重に管理しているため、サードパーティーベンダーのオプションサービスの種類が限られている。
例えばデータ保護ツールベンダーZertoが提供するデータ保護ソフトウェア「Zerto」は、VMware ESXiの他、Microsoftのハイパーバイザー「Hyper-V」で動作するが、Nutanix AHVでは動作しない。つまりZertoを使用しているのであれば、VMwareからNutanix AHVに移行する場合に別のデータ保護ツールを選択する必要がある。
VMwareもNutanixもサードパーティー製のハードウェアをサポートしているが、VMware ESXiはNutanix AHVと比較してサポート対象のハードウェアが幅広い。Nutanixでは外部ストレージの追加オプションが制限されている。
VMware ESXiとNutanix AHVは、管理方法にも違いがある。1台のVMを管理するときは、両者とも作業が比較的単純だ。違いが顕著になるのは、専用の管理GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を用いて、複数台のVMでクラスタを構築するときだ。VMware ESXiは一般的にインフラ管理ツールの「VMware vCenter Server」を通して管理され、Nutanixのユーザー企業はインフラ管理ツールの「Prism」を使用する。
例えばVMware ESXiで共有ストレージを使用する場合、IT管理者はストレージネットワークとストレージを作成して設定する作業や、全てのストレージを再スキャンし、各ホスト(VMを稼働させるための物理サーバ)で検証するための時間が必要だ。
VMware ESXiの場合、使用するストレージに複数の工程に及ぶ事前設定が必要となる。VMwareのストレージ仮想化ソフトウェア「VMware vSAN」は選択肢の一つではあるが、標準機能としてVMware ESXiに組み込まれているわけではないため、別途システムの設定や構成にかかる手順が増える。
Nutanix AHVの場合は、ストレージプール作成のためのウィザードを使用する。VMware ESXiと比較して特別なハードウェアを追加する必要がなく、設定が簡単という利点がある。Nutanix AHVはHCIでの利用を想定しており、管理作業で生じる余分な処理による負荷が比較的小さいと言える。しかし初期コストが高くなる可能性や、ベンダーロックインのリスクがある。
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