「脱VMware」は正解なのか? 真っ二つに割れる企業の言い分Broadcomの野心に振り回される企業【後編】

BroadcomによるVMware買収後、製品のライセンス体系が変更するといった変化が起きた。その結果、VMware製品からの移行を検討する企業も出てきている。真っ二つに割れる顧客企業、それぞれの考えとは。

2024年10月23日 07時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

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 半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収後、VMware製品のライセンス体系を変更した。クラウドサービスベンダーでVMware製品リセラーのExpedientによれば、Broadcom傘下となったVMwareのサービスを使い続けるべきか、それとも離れるべきかという問いに対する顧客企業の意見は、ほぼ真っ二つに分かれている。

「脱VMware」をする企業としない企業、それぞれの言い分

 Expedientの最高経営責任者(CEO)ブライアン・スミス氏は、「顧客企業の意見が真っ二つに分かれる」という結果に驚きはなかったという。「VMware製品を必要とする顧客企業は逃げ出すつもりはなくても、実質的な値上げに思わず反応してしまった可能性がある」(スミス氏)

 「VMwareの値上げに対しては感情的な反応が大きく広がっている。そうした状況では顧客企業も代替手段がないかどうか聞いてしまうものだ」とスミス氏は言う。

 代替手段を検討している企業は、Nutanixのハイパーバイザー「Acropolis Hypervisor」(AHV)やオープンソースのハイパーバイザー「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)などを有力な選択肢として挙げている。

 これを機にさまざまなベンダーが仮想化市場に参入している。2024年5月、VMwareなどの企業向けソフトウェアのサポートベンダーであるRimini StreetがVMware製品の保守サポートを始めた。それは、Broadcom傘下での保守サポートの品質低下や消滅を懸念したVMware製品の顧客企業からの問い合わせを受けたためだという。Rimini Streetの最高製品責任者(CPO)を務めるデイビッド・ロウ氏は「VMware製品の保守サポートサービスは非常に好調だ」と述べている。

 ロウ氏によると、Rimini Streetを頼る企業はVMwareからの移行方法を決めるまでの時間稼ぎをしている。企業は次の段階にどのように進むべきかを把握したいと考えている。「VMware製品を使用し続けるアプリケーションもあれば、他の選択肢を考えるアプリケーションもあるだろう」(同氏)

 Rimini Streetのサポート部門のグループバイスプレジデントを務めるロドニー・ケニヨン氏も同意見だ。「VMwareの複数年ライセンスの有効期限切れを待っている企業は、その後に別のベンダーに移行するか、Broadcomのサブスクリプションライセンスを契約するかを決断することになるだろう」とケニヨン氏は話す。

 VMware製品から離れるかどうかは難しい判断になる。Broadcomの傘下になってコストが上がっても、VMware製品が適切に機能しているとなればなおさらだ。「上手くいっていることを自ら台無しにしたくはないものだ」(ロウ氏)

 サブスクリプションライセンスのみを提供するというBroadcomのアプローチは、当面は顧客企業の不評を買い続ける可能性がある。一方で、「将来的にはサブスクリプションライセンスによって、VMware製品の製品やサービスが標準化されることに価値を見いだす顧客企業が増える可能性もある」と、米TechTarget傘下の調査会社ESG(Enterprise Strategy Group)でアナリストとして働くスコット・シンクレア氏は語る。

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