BroadcomはVMware買収後、ライセンスモデルを変更した。このことはさまざまな騒動を顧客に与えた。AT&Tは強く反発しており、ついに訴訟へと発展した。
通信事業者のAT&Tは2024年8月29日(現地時間、以下同じ)、仮想化ベンダーVMwareを買収した半導体ベンダーBroadcomに対して訴訟を起こした。AT&TはBroadcomに何を求めているのか。
AT&TはBroadcmに対してVMware製品のメンテナンスやアップグレードなどのサポートについて問題があるとして、訴訟を起こした。AT&TはBroadcomによるVMware買収が完了する前、2023年8月にVMware製品に関するサポートを契約していた。この契約によりVMware製品のメンテナンスやアップグレード、トラブルシューティングなどを受けられるはずだという。
一方のBroadcomは2023年11月にVMwareの買収を完了させた後、VMware製品から永続ライセンスを廃止して、サブスクリプションライセンスへの移行を顧客に求めている。Broadcomは、VMware製品を購入した企業が継続してサポートを利用するためには、同社が新たに導入したサブスクリプションライセンスを購入する必要があるとしている。
それに対してAT&Tは、Broadcomには既存の契約の終了時期を尊重する義務があり、サブスクリプションライセンスへの移行を迫ることは違法だと述べている。
訴訟は継続しているが、AT&TとBroadcomはVMwareのライセンス契約を1カ月延長し、サポートを継続することで一時的に合意した。
AT&Tは、VMware製品のライセンス変更を巡ってBroadcomをいち早く提訴した。業界アナリストや弁護士らは、この訴訟は近年で大幅に悪化したBroadcomとVMware製品の顧客企業の関係に、新たな火種を加えるものだとみている。
Broadcomは複数のVMware製品を単一のサービスに集約する方針で、製品の再編を進めている。再編の例として、同社は以下の製品の永久ライセンスを廃止した。
一部の顧客は、BroadcomによるVMware製品のライセンス変更によって、自社のITインフラ関連コストが大幅に増加すると見込んでいる。AT&Tも同じだ。
AT&Tは2024年9月27日、VMware製品のライセンス変更によって、大幅にコストが増加することを示唆するメールのやりとりを裁判所に提出した。AT&Tのスーザン・A・ジョンソン氏は、2024年8月19日付のBroadcomの最高経営責任者(CEO)を務めるホック・タン氏へのメールで、「1年間でVMware製品に関するコストが1050%増加することは異常であり、AT&Tとのビジネスにおいて戦略的パートナーに期待するものではない」と述べている。
「Broadcomによる買収後に、買収された企業の顧客が不満をもつことは珍しいことではない」と、コンサルティング企業DragonSlayer Consultingの創業者兼プレジデント、マーク・ステイマー氏は述べる。
ステイマー氏によればBroadcomは過去にも、ソフトウェアベンダーCA TechnologiesやSymantecの法人向けセキュリティ事業の買収後に、買収した企業の製品を値上げして、顧客の流出を招いたことがある。
とはいえAT&Tの訴訟は、Broadcomにとっても楽観できない。「BroadcomはVMware製品を使用している幾つもの中小企業よりも、AT&Tなど少数の大企業を相手にしたいと考えている」とステイマー氏は分析する。AT&TがBroadcomの計画に反発したことは、他の大企業からBroadcomへの印象を悪化させた可能性がある。
「この訴訟によって、ライセンス契約におけるBroadcomの強硬な姿勢に異議を唱えようと考える顧客が増えるのではないか」とステイマー氏はみる。
ステイマー氏は、「Broadcomはライセンスを変更する以上、顧客を失うことは想定していたはずだ」と述べた上で、Broadcomは訴訟沙汰にするべきではなかったと指摘する。「どちらが先に折れるのかという我慢比べになるからだ。私は、Broadcomが折れると思う」(同氏)
次回は訴訟の詳細を解説するとともに、顧客が訴訟をどう受け止めているかを紹介する。
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