VMwareユーザーが抱える“Broadcomリスク”とは? 不安と対策を解説Broadcomがユーザーに語ったこと

BroadcomはVMware製品のライセンスを変更して以来、少なくないユーザーからの反発を受けている。BroadcomのCEOはVMware製品のユーザー会に参加して、ユーザーとの溝を埋めようとしている。ユーザーはどのような不安を抱えているのか。

2024年11月15日 05時00分 公開
[Tim McCarthyTechTarget]

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 仮想化ベンダーVMwareを買収した半導体ベンダーBroadcomは2024年9月19日(現地時間、以下同じ)にVMware製品のユーザーが集うイベント「Boston VMware User Group UserCon」(以下、Boston VMUG UserCon)を開催した。Broadcomの最高経営責任者(CEO)を務めるホック・タン氏はBoston VMUG UserConに参加して、ユーザー重視の姿勢を強調した。

 だが、VMware製品のユーザーは依然としてBroadcomに不安を抱いている。なぜか。

VMwareユーザーが抱く不安とタン氏の戦略

 タン氏は2024年8月27日にBroadcomが開催したイベント「VMware Explore」の基調講演で「IT部門はパブリッククラウドによって現在PTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥っている」と述べた。タン氏によれば、パブリッククラウドによって企業のIT部門は運用が複雑化し、コストも想定以上に掛かっている。

 タン氏はこのようにユーザーに寄り添う姿勢を見せ、VMware製品のユーザーとBroadcomの間に生じた溝を埋めようとしている。

 だが、ユーザーの間では、2023年11月にBroadcomがVMwareを買収した後、自社の日常のIT運用や予算に関連で困惑する状況が続いている。

 Boston VMUG UserConの基調講演でタン氏は「ユーザーのオンプレミスインフラにプライベートクラウド体験を提供することに注力する」と話した。ただしタン氏は、ユーザー企業が自社のプライベートクラウドとパブリッククラウドを併用する「ハイブリッドクラウド」を切り捨てるつもりはない、とも述べた。

 クラウドサービス群の「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud」に対して、専用の「VMware Cloud Foundation」(VCF)を開発中だとタン氏は語る。VCFはBroadcomによるプライベートクラウドサービスだ。「大手3社のパブリッククラウドでは、サーバ仮想化製品群『VMware vSphere』で構築したアプリケーションをそのまま運用できる」とタン氏は述べた。その上でタン氏は「料金を二重に請求することはない」と説明した。

 VCFをサブスクリプションライセンスで利用しているユーザーは、追加料金なしで専用バージョンのVCFを利用可能になる。Broadcomは今後、専用VCFの対象となるパブリッククラウドベンダーに、IBMやEquinixなどが加わると述べた。

 タン氏は「VMware製品のユーザーがVCFをより安価に利用する機会を増やすことを優先する」と説明した。VMware製品の無料のトレーニングプログラムを用意する計画だ。

 「こうした取り組みを成功させるにはユーザーの支持が不可欠であり、Broadcomはそのために多額を投資している」とタン氏は述べた。その上でタン氏は「当社はユーザーを顧客とは呼ばず、パートナーと位置付けている」と強調した。

捕らわれの身のユーザー

 だが、ユーザーはBroadcomとの関係をパートナーシップと見なさない可能性もある。同社は、VMware製品のバンドル(製品やサービスの組み合わせ)を再編成して、ライセンス体系を永続型からサブスクリプション型に変更した。

 VCFは機能を追加したとはいえ、実質的な値上げにつながったと感じるユーザーもいる。このライセンス変更は、いまだにVMwareユーザーにとってのフラストレーションになっている。UserConに参加した何人ものユーザーが、Broadcomの施策に対して「捕らわれの身にある」と述べている。

 ユーザーが捕らわれの身になっているという認識を抱くのは、自社がVMware製品に依存していたり、選択肢を検討する前にライセンス契約を更新してしまったりといったことが理由だ。

 タン氏がプライベートクラウドへの移行を迫る方針は完全に間違っているわけではなく、「ユーザーがコスト削減のためにアプリケーションをパブリッククラウドから引き揚げてオンプレミスインフラに戻そうとする可能性がある」とITサービスベンダーPC Connectionでシニアシステムエンジニアを務めるキャサリーン・オーバンホール氏は語る。

 ただし、Broadcomのライセンス変更によって、ユーザーがVMware製品の代替手段を検討するため、「プライベートクラウドへの意欲は失われるかもしれない」とオーバンホール氏は語る。

 「ユーザーは冷静さを失っており、捕らわれの身から逃げ出す方法を見つけ出そうとしている。ただライセンスが切れるのを待っているユーザーもいる」(オーバンホール氏)

 通信事業者のFirstLightでシステムエンジニアを務めるウィリアム・クック氏は、従来のVMware製品を個別に利用していた状態から、サブスクリプションライセンスに移行することで自社のコアビジネスにどのような影響があるかを調査するためにBoston VMUG UserConに参加した。

 「ライセンス変更がきっかけで当社はVMware製品を1歩引いて評価し始めるようになった」(クック氏)

Broadcomによる橋渡し

 BroadcomはVMwareの製品バンドルを、複数の製品を集約する方向で再編した。それでも、「VMwareユーザーにとっての選択の自由は残されている」とVMUGのバイスプレジデントで、Minnesota State Colleges and Universitiesでエンタープライズシステムエンジニアを務めるマット・ヘルドスタブ氏は語る。

 ヘルドスタブ氏は、VMware製品のサブスクリプション費用に悩むユーザーに次のアドバイスを送る。

  • サーバのCPU使用率に注意を向ける
  • 必要なサービスが含まれるサブスクリプションを調査する
  • 製品のベンダーや運用を委託している事業者の担当チームと積極的に連携する
  • 製品の購買担当者は、過去にソフトウェアを自由に選んで購入していたときの初期ライセンスコストと現在の定額サブスクリプション料金を比較して検討する

 「Broadcomの提示内容だけで自社にとっての最善策を見つけ出すのは難しい」(ヘルドスタブ氏)

 Broadcomと強気の交渉を試みるユーザーもいる。ヘルドスタブ氏によると、タン氏はユーザーの不安に気付いており、Boston VMUG UserConでユーザーと直接話すことを喜んで受け入れているという。

 「VMUGの役員はタン氏から『私が必要だと思ったら呼んで欲しい。できる限り駆け付ける努力をする』と伝えられている」とヘルドスタブ氏は述べた。

 タン氏は、VMwareの中小企業ユーザーの存在を忘れているわけではないことを強調している。同氏は大手企業市場に加えて中小企業市場でもVCFを導入するユーザーの拡大を目指している。

 「まずは大手企業への対応から始めているが、差別せず全ての企業に対応する」とタン氏は語る。

 タン氏によれば、VMwareの開発者たちは、VMwareの社内システムをまるでパブリッククラウドを利用しているかのように作り変えた。同氏は社外のユーザーにもVMwareと同様に、ITインフラの場所を問わず、サービスカタログから必要なITリソースをオンデマンドで取得できるようなIT環境を実現することを考えている。

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