AIがよく分かる「機械学習の歴史」【第3回】
「AIブームは一日にして成らず」――機械学習“70年”の歴史
AI技術の発展に欠かせない存在である機械学習だが、現代に至るまでどのような軌跡をたどってきたのか。1950年代から1970年代の歴史を解説する。
機械学習は人工知能(AI)の中核技術として、画像認識や自然言語処理、自動運転など幅広い分野で活用されている。この技術が確立されるまでには、さまざまな発見と試行錯誤が繰り返されてきた。機械学習の進化の歴史を、1950年代から1970年代に焦点を当てて解説する。
AIの発展を支えた「機械学習」の歴史
併せて読みたいお薦め記事
連載:AIがよく分かる「機械学習の歴史」
AIの基礎をおさらい
1958年
心理学者フランク・ローゼンブラット氏が、人間の脳の仕組みを模倣した計算式システム「パーセプトロン」を発表した。これはデータから学習が可能な初期の人工ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)であり、ディープラーニング(深層学習)およびニューラルネットワークの基礎となった。
1959年
計算機科学者アーサー・サミュエル氏は、機械学習について、「明示的にプログラムしなくても学習する能力をコンピュータに与える研究分野」として定義した。
数学者オリバー・セルフリッジ氏は、論文「Pandemonium: A Paradigm for Learning」を発表した。この論文は、自律的にパターンを見つけ出して自己改善できるモデルについて説明したもので、機械学習分野における画期的な貢献とされている。
1960年
スタンフォード大学の大学院生のジェームズ・アダムズ氏が、カメラを搭載した遠隔操作可能なロボット「Stanford Cart」を開発した。Stanford Cartはカメラで捉えた周囲の情報を基に、自身の動きを推測することができた。
1963年
コンピュータ科学者ドナルド・ミッキー氏が、コンピュータ「MENACE」(Matchbox Educable Noughts and Crosses Engine)を開発した。強化学習の手法を用いて、ボードゲーム「Tic-Tac-Toe」で最適な戦略を選ぶようプログラムされている。
1965年
コンピュータ科学者のエドワード・ファイゲンバウム氏、ブルース・G・ブキャナン氏、分子生物学者ジョシュア・レーダーバーグ氏、科学者カール・ジェラッシ氏が、プログラム「DENDRAL」を開発した。これは、化学者が新しい有機分子を見つける手助けをする、世界初と考えられている専門家システムだ。
1966年
大学教授のジョセフ・ワイゼンバウム氏は、チャットbotの元祖である「ELIZA」を開発した。ELIZAは人間との会話をシミュレーションして、あたかも人間のような感情があるように振る舞うことができた。
研究機関SRI International(旧称Stanford Research Institute)は、世界初と考えられている、移動能力を持つ汎用(はんよう)ロボット「Shakey the robot」を開発した。このロボットには、AI技術やコンピュータビジョン、ナビゲーション機能、自然言語処理(NLP)といった技術が使われており、後に自動運転車およびドローンの原型として知られるようになった。
1967年
データの中から一番近いものを探し出す「k近傍法アルゴリズム」が登場し、コンピュータは基本的なパターン認識能力を備えるようになった。
「巡回セールスマン問題」というよく知られた問題がある。セールスマンが各都市を1回訪れるという条件で、都市を巡る最適経路を決める問題だ。この問題を考える上で、最近傍法が用いられた。
1969年
大学教員アーサー・ブライソン氏と数学者のユー・チー・ホウ氏は、システムを効率的に動かすための「最適制御」の研究において、「誤差逆伝播」(バックプロパゲーション)の考え方を導入した。バックプロパゲーションとは、予測データと正解データの誤差を計算する学習方法だ。これにより、多層ニューラルネットワークの効率的な学習が可能となり、ディープラーニングの基礎につながった。
同年、マービン・ミンスキー氏と数学者シーモア・パパート氏は、パーセプトロンに関する論文を発表した。ニューラルネットワークの限界を指摘したことで、ニューラルネットワークの研究は一時停滞し、より明確なルールに基づいたシンボリックAI(ルールや論理を使った推論型のアプローチ)の研究が注目されるようになった。
1973年
数学者ジェームス・ライトヒル氏が報告書「Artificial Intelligence: A General Survey」を発表した。報告書では、AI技術が実用化に至っていないことや、その技術的な限界が指摘され、英国政府によるAI研究への支援を大幅に削減する一因となった。
1979年
コンピュータ科学者の福島邦彦氏が、多層構造のANN「ネオコグニトロン」に関する研究を発表した。この研究は、パターン認識分野に大きな貢献をもたらし、特に画像認識などの技術の基盤を確立した。
次回は、1980年代~2000年代における機械学習の進化を解説する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
5
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
6
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
7
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
8
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー