いまさら聞けない「生成AI」と「予測AI」の違い “うまい使い分け”は?組み合わせ次第で業務改善

「生成AI」と「予測AI」は、いずれも業務効率を向上させるAI技術だ。両者にはどのような違いがあり、ビジネスのどのような場面で”使える”のか。専門家の意見を基に整理する。

2025年01月11日 06時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 文章や画像を自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」の活用が広がっている。同じく業務の効率化に役立つAI技術「予測AI」とは何が違うのか。それぞれ業務のどのような場面で使える技術なのか。

生成AIと予測AIは何が違う?

 生成AIは、既存のデータやパターンを学習し、画像やテキストといった新しいコンテンツを生成する。芸術や音楽などのクリエイティブな分野から科学、創薬、マーケティング、教育までさまざまな分野で利用可能だ。

 予測AIは、過去のデータやパターンを使用して未来の出来事の結果を予測したり、意思決定や戦略の策定を支援したりする。

 「生成AIと予測AIは独立した技術だが、ビジネス戦略を構築する際に相互補完的に機能する場合がある」。コンサルティング会社Kearneyでアドバンストアナリティクス部門のパートナーを務めるバーラス・トータ氏はこう述べる。例えば、生成AIは製品の機能設計を支援し、予測AIは機能に対する消費者需要や市場の反応を予測できる。生成AIがデータを生成して予測モデルのトレーニングに用いるデータセットを強化し、予測能力を向上させることもできるという。

 「予測AIは、数字を駆使する高度なアナリストと考えてほしい。一方、生成AIは、作家や芸術家、研究のアシスタントといった創造的な存在だ」。ToolsGroupのCEO、インナ・クズネツォワ氏はこう語る。ToolsGroupは、AI技術を活用してサプライチェーンの計画策定と最適化を図る企業だ。

 ITコンサルティング企業Hexaware Technologiesのプレジデント兼生成AI部門長を務めるアルン・ラムチャンドラン氏は、予測AIを「分類問題(データを特定のカテゴリーや階層に分ける問題)を解決する手助けをするものと捉えると分かりやすい」と話す。例えば、予測AIはローンの支払いにおける債務不履行を予測する際に使用できる。

 「複数の出来事が連続変数(連続した数字で表される変数)に与える定量的な影響を予測し、回帰問題(ある変数の値を他の変数を使って予測するための手法)を解決する手助けもできる」と同氏は説明する。例えば、クレジットカード利用者の支払い能力や利用傾向の分析に使用できる。こうした予測AIの分析は、過去の出来事から得た構造化データに基づいているという。

 一方、生成AIは、エンドユーザーが入力するプロンプト(情報を生成するための指示や質問文)や学習元となる非構造化データに基づいて、新しいコンテンツを生成するように設計されている。生成AIが生成した回答は、あくまで定性的な推論に基づいた回答になる傾向がある。

生成AIの業務活用例

 生成AIはビジネスのどのような場面で使われているのか。以下に一例を紹介する。

  • ソースコードの生成
  • マーケティング資料の作成支援
  • 複数のマニュアルの横断検索
  • 顧客や従業員向けコンテンツのパーソナライズ
  • 学習体験のカスタマイズ
  • 形式が異なるデータの変換
  • 地域や言語ごとの情報のローカライズ
  • リスク予測や要約
  • 採用候補者の履歴書の要約や選定の効率化
  • 従業員のスキルの分類や管理
  • コールセンターの通話内容のパターン化
  • 複雑なUI(ユーザーインタフェース)を使わず、プロンプトの入力のみに作業を簡素化

予測AIの業務活用例

 一方、予測AIはビジネスのどのような場面で使われているのか。ITベンダーDoherty Associatesの最高技術責任者(CTO)オーウェン・モリス氏は以下の例を紹介する。

  • 需要の検知と予測
    • データを使用して、より正確に短期的な需要を予測し、在庫の配置と割り当てを支援する。
  • 在庫の最適化
    • サプライチェーン内の全在庫の場所や種類ごとの在庫目標を特定したり設定したりする。
  • 顧客のターゲティング
    • 顧客の購買履歴データを分析して、割り引きやキャンペーンに好意的に反応する可能性が高い顧客を予測する。
  • リスク評価
    • 金融機関が、債務不履行や支払いの遅延といった財政リスクや信用リスクを評価する。
  • 売上予測
    • 過去の売り上げデータや市場動向、その他の要因に基づいて将来の売り上げを予測する。それに基づき、リソースの割り当て、サプライチェーンの管理、在庫の最適化を支援する。
  • サービス解約の防止
    • 顧客とのやりとりの履歴や人口統計データを分析して、サービスを解約する可能性がある顧客を予測する。顧客維持のための対策を講じることが可能になる。
  • 設備の予防保守
    • メンテナンスのスケジュールを最適化してコストを削減したり、故障のリスクを軽減したりできる。

TechTarget.AIとは

TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news054.jpg

AI搭載は「もう売りにならない」──「Marketing Dive」2025年予測【前編】
広告費が世界で1兆ドルを超える中、マーケターは多くの課題に直面している。不透明な規制...

news045.jpg

Xがアルゴリズム変更へ イーロン・マスク氏が優遇したい投稿とは?
Xは新たなアルゴリズムアップデートで「情報的かつ娯楽的」なコンテンツに重点を置いてい...

news097.png

新成人が考える「人生100年時代」の大人像とは?
人生100年時代を迎え、若者たちの価値観や人生設計が大きく変化している。博報堂のシンク...