AI需要にどう応える? Dellが打ち出す“AIインフラ構想”の新製品群とはAIデータセンター向け新製品を発表

2025年4月、Dell TechnologiesはAIデータセンター向けの新製品群を発表した。これはNVIDIAとの協業に基づいて構築されるAIインフラでも活用される製品群だ。Dellが目指す今後のAIインフラの在り方とは。

2025年04月18日 05時00分 公開
[渡邉利和]

 2025年4月8日、Dell TechnologiesはAIデータセンターでの運用を見据えたサーバおよびストレージ製品の新モデルと機能強化を発表した。この製品群は、同社が半導体ベンダーNVIDIAと共同で推進するAIインフラ構想の中核を担う製品群として位置付けられている。

 今回の発表に先立ち、Dell Technologiesは2025年3月、NVIDIAが開催した年次カンファレンス「NVIDIA GTC」に合わせて、2社のパートナーシップに基づく取り組み「Dell AI Factory with NVIDIA」の強化を発表している。この取り組みは、「企業がAI分野への投資効果を迅速に引き出すこと」を目的としており、Dell TechnologiesのハードウェアとNVIDIAのAI関連ソフトウェアを組み合わせた製品・サービス群として構成される。新たに発表された製品群の詳細に加え、新製品投入の背景と狙いを解説する。

急成長するAI需要にどう応える? 新製品を投入するDellの狙い

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 Dell Technologiesが発表した製品および機能強化の概要は以下の通り。

  • IAサーバ「Dell PowerEdge」シリーズ
    • データセンター向けCPU「Xeon 6」プロセッサを搭載するIAサーバ。シングルスレッド性能重視のPコア(パフォーマンスコア)を搭載しており、AIアプリケーションや大規模アプリケーションなど重い処理にも対処できる
    • ラインアップは以下の通り
      • PowerEdge R470(1U/1ソケット)
      • PowerEdge R570(2U/1ソケット)
      • PowerEdge R670(1U/2ソケット)
      • PowerEdge R770(2U/2ソケット)
  • オールフラッシュストレージ「Dell PowerStore」
    • AI技術を活用した分析機能「Dell AIOps」(旧CloudIQ)の追加
    • 全てのアクセス要求を危険と見なして認証を求める「ゼロトラストセキュリティ」機能の強化
    • ファイルのアクセス制御やセキュアなスナップショットを含むファイル管理機能の強化
  • オブジェクトストレージ「Dell ObjectScale」シリーズ
    • AIワークロードに対応するオールフラッシュ型「ObjectScale XF960」
    • 主要なワークロードに対応するHDD型「ObjectScale X560」
    • クラウドストレージベンダーWasabi Technologiesと共同開発したハイブリッドクラウド型(クラウドサービスとオンプレミスシステムを併用)のオブジェクトストレージサービス
  • スケールアウト型ストレージ「Dell PowerScale」
    • 122TB SSDに対応
    • ハイブリッドノードおよびアーカイブノードにおける処理性能の向上とレイテンシ(遅延)低減
      • ノードはストレージ装置の単位。ハイブリッドノードはSSDとHDDを併用、アーカイブノードは容量を重視した長期保管用
  • データ保護製品「Dell PowerProtect」
    • データ保護機能の強化によるサイバーレジリエンス(回復力)、セキュリティ、運用効率の強化

新製品群投入の背景と狙い

Dell Technologiesのクリス・ケリー氏

 Dell Technologiesでインフラ部門を統括するクリス・ケリー氏(インフラストラクチャーソリューションズグループ アジア太平洋地域/日本/中国セールス担当シニア・バイスプレジデント)は、新製品群投入の背景について次のように説明する。「AI技術などの新たなワークロードの登場により、市場が急速に変化する中で、ITインフラはこれまで以上に柔軟かつ迅速な対応が求められている」

 「従来の3階層アーキテクチャ(3 Tier Architecture)は柔軟性に優れる一方で、構成が複雑化しやすく、導入やアップデートに時間がかかり運用負荷も大きい」とケリー氏は説明。続けて、「HCI(Hyper Converged Infrastructure)は構成がシンプルである反面、ハイパーバイザーやOSに依存しやすく、特定のリソースのみ強化するような柔軟性には欠けるため、コスト面で無駄が生じやすい」と指摘した。

 その上で、Dell Technologiesが注力する分散型アーキテクチャ「Disaggregeted Architecure」について、「3階層アーキテクチャとHCIそれぞれの利点を融合し、柔軟性かつシンプルなシステムを実現できる」と評価。Disaggregeted Architecureでは、従来一体化されていたコンピューティング、ストレージ、ネットワークのリソースを個別に拡張可能とすることで、より最適なリソース配分を実現する。例えばストレージ製品では、実際にデータを記録するメディア部分と制御を担うコントローラーを分離し、それぞれを独立してスケーリングできる構成が導入されている。

図 複雑化するワークロードでは、Disaggregated Architectureのアプローチが求められる(出典:Dell Technologies資料)《クリックで拡大》

 今回発表したDell PowerEdgeシリーズには、ハードウェアの仕様や設計のオープンソース化を推進する非営利コミュニティー「Open Compute Project」の標準規格「DC-MHS」(Data Center Modular Hardware System)に基づく設計が採用されている。これにより、将来的な機能拡張や構成変更にも柔軟に対処できるよう配慮されているという。

各製品の提供スケジュール

 なお、今回発表された新製品および機能強化の提供時期は以下の通り。

  • Dell PowerEdge
    • 2025年4月時点で既に提供開始済み
  • Dell PowerStore
    • 2025年4月時点で既に提供開始済み
  • Dell ObjectScaleシリーズ
    • HDDベースのObjectScale X560は2025年4月に提供開始予定
    • オールフラッシュ型のObjectScale XF960は2025年第3四半期(2025年7~9月)に提供開始予定
  • Dell PowerScale
    • 122TB対応SSDは2025年5月提供開始予定
    • HDDベースのPowerScaleノードは2025年6月提供開始予定
  • Dell PowerProtect
    • データ保護用ストレージアプライアンス「PowerProtect DD6410」およびオールフラッシュ対応ノードは2025年4月に提供開始予定
    • データ保護ソフトウェア「PowerProtect Data Manager」のアップデートは既に提供開始済み

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