2024年のGTCで発表された「Dell AI Factory with NVIDIA」がさらに発展した。PCからサーバ、ストレージ、ネットワークまでインフラ全体を提供可能なDellの新たな製品群とは。
デル・テクノロジーズは2025年3月19日、NVIDIAとの協業に基づくAI(人工知能)分野での取り組み強化について発表した。NVIDIAの年次イベント「NVIDIA GTC」(以下、GTC)に合わせて発表されたもの。1年前の2024年のGTCで発表された「Dell AI Factory with NVIDIA」は「エンタープライズがAI分野への投資効果を迅速に引き出すことを可能にする業界初の包括的なソリューション」と位置付けられ、Dell Technologiesのハードウェア製品とNVIDIAのAI関連ソフトウェアを組み合わせた製品・サービス群として提供開始された。
その後の1年でDell AI Factory with NVIDIAの取り組みは大きな成果を挙げ、グローバルで2000社以上の企業のAI向けインフラ開発を支援したという。今回は主なアップデートとして、AI機能を処理するためのハードウェアを搭載する「AI PC」の新製品がアナウンスされた。
Dell Technologiesでインフラおよびテレコム分野マーケティング担当のシニアバイスプレジデントを務めるバルン・チャブラ氏は、Dell AI Factory with NVIDIAの意義について、「多くの企業がAIの取り組みを検証段階から本番環境へと移し始めている中、コストコントロールやデータ管理といった課題に直面しており、AIの取り組み全般に対して製品、ソリューション、サービス、サポートを全て提供できるインフラベンダーを求めている」と語り、Dellこそがまさにそれを提供できる存在だとした(図1)。
市場での受け入れ状況に関してチャブラ氏は「Dell AI Factory with NVIDIAは1年前の発表当時、業界初のエンドツーエンドの企業向けAIソリューションだった」とし、「現在でも、どのような顧客企業であっても、また顧客企業がAIライフサイクルのどの段階にいたとしても支援できる幅の広さは市場において一線を画す存在であり続けている」と語る。その上で「多数の顧客に導入されて大きな成功を収めているが、それでもまだこれは始まりに過ぎない」としてさらなる成長への自信を見せた。
新たなAI PCとして発表された「Dell Pro Max」シリーズの説明をしたDell TechnologiesのコンシューマーおよびゲーミングPC分野のバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー、ケビン・ターウィリガー氏は「AI開発者向けに設計された、NVIDIAの革新的な『Grace Blackwell』アーキテクチャに基づくAI PCで、従来はデータセンターの中でのみ運用されていたGrace Blackwellアーキテクチャをデスクサイドに持ってきたものだ」と語った。
新たに発表された「Dell Pro Max with GB10」(以下、GB10)、「Dell Pro Max with GB300」(以下、GB300)は、GTCの基調講演でNVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏が発表した「Personal AI Computer」のプラットフォームデザインである「DGX Spark」および「DGX Station」に基づく製品。NVIDIAのArmベースCPUコア「Grace」と最新世代のGPUコア「Blackwell」を組み合わせた「NVIDIA Grace Blackwell Superchip」を中核とし、LinuxベースのOS「NVIDIA DGX OS」上で同社の豊富なソフトウェア群を実行可能だ。
GB10は、基調講演の中でフアン氏が「フル生産体制に入った」と宣言したBlackwellを採用するが、GB300は2025年後半に提供開始予定の強化版である「Blackwell Ultra」を採用する上位版と位置付けられる。具体的な製品はNVIDIAのパートナーであるPCベンダーのASUSTeK Computer(ASUS)、Dell、HP、Lenovoから提供されると発表されている。Dell Pro MaxはまずDellからの具体的な製品となる。
AI PCに関してはこれまでもPC市場で幾つかの製品が発売されているが、それほど大きな注目を集めるには至っていない。一方で今回発表されたDGX Spark/Stationに基づくDell Pro Maxは従来データセンター内で稼働していたGPU搭載サーバに匹敵する処理能力をAIエンジニア向けにPCのフォームファクタで提供するという位置付けの製品であり、これまでのAI PCとは異なるセグメントの製品だと言える。
PCからハイエンドサーバまで、さらにストレージやネットワークも含めて全てを自社製品として提供できるベンダーはごく限られている。AI活用がいよいよワークステーションやPCといった領域にまで拡大し始めてきた中、フルラインアップ戦略を維持してきたDellの強みがさらに発揮されることになりそうだ。
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