Microsoft「Copilot」とGoogle「Gemini」は、どちらもAI導入を検討する企業にとって有力な選択肢となる。どのような基準で選ぶべきなのか。9つの観点から比較解説する。
生成AI(人工知能)やそのベースとなるLLM(大規模言語モデル)を業務で活用したいと考える企業にとって、Microsoftの「Copilot」やGoogleの「Gemini」といったAIアシスタントが有力な選択肢となる。本稿は、両サービスを9つのポイントから比較し、選定のヒントを紹介する。どちらが自社に適するかを考える際の参考にしてほしい。
2023年2月、MicrosoftはCopilot(公開当初は「Bing Chat」)のプレビュー版を公開し、同年5月に一般提供を開始した。同社はOpenAIとパートナーシップを締結しており、CopilotのベースとなるLLMには「GPT」(Generative Pre-trained Transformer)を使用する。さらに検索エンジン「Bing」と連携することで、リアルタイムの情報検索機能を利用可能だ。
一方のGoogleは、2023年3月に「Bard」を発表し、その1年後にGeminiとして改良。2024年を通して、GoogleはGeminiの改良に取り組んできた。以下に、両モデルを9つのポイントから比較した内容を紹介する。
コンテキストウィンドウは、生成AIがやりとりの中で保持する情報量を指す。CopilotのLLM「GPT-4 Turbo」は、最大12万8000トークンのコンテキストウィンドウを備える。トークンとはテキストデータを処理する際の基本的な単位で、英語であれば1トークンは4文字程度と考えられる。
GeminiのLLM「Gemini 1.5 Pro」は、最大200万トークンのコンテキストウィンドウを備え、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を扱う開発者が利用できる。Gemini 1.5 Proを搭載したGemini Advancedのコンテキストウィンドウは最大100万トークンだ。つまり、GeminiはCopilotと比べてより多くの情報を一度に覚えられるということだ。
Copilotの有料プランでは、Microsoftアプリケーションと連携可能だ。OpenAIが2024年9月に発表した新モデル「OpenAI o1」の推論機能など、OpenAI製モデルの高度な機能との統合が進んでおり、今後Microsoft以外の製品やサービスとも連携できるようになる可能性がある。
GeminiはGoogleの検索エンジン「Google Search」(Google検索)との連携が強みだ。一方で、Google以外が提供するサービスとの連携は限定的だ。2024年11月時点で、Gemini for Google Workspaceでは、オフィススイート「Google Workspace」のアプリケーションやサービスと連携できる。
CopilotもGeminiも、テキスト以外に画像や音声などのデータ形式を扱えるマルチモーダルモデルだ。画像生成モデルとして、CopilotはOpenAIの「Dall-E 3」を、Geminiは「Imagen 3」を使用している。
Gemini 1.5 Proは2024年9月、LLM推論と検索能力を測定する「ニードルインハイスタック」(NIHS)ベンチマークで、GPT-4 Turboを上回る結果を出している。ただし、AIモデルの進化スピードは早く、これらの評価はすぐに変わる可能性がある。
LLMをさまざまなサービスと連携できるのが、プラグイン(拡張機能)だ。CopilotとGeminiは、共に複数のプラグインを用意している。例えば、Copilotは以下アプリケーションと連携可能だ。
Geminiからは、以下Googleアプリケーションをプラグインとして利用できる。
「Microsoft Copilot Studio」はチャットbot型のアシスタント設計ツールだ。Microsoft 365 Copilotの機能カスタマイズや、プラグイン開発をローコード(最小限のソースコード記述)で実施できる。
Gemini for Google WorkspaceのプランGemini Enterprise、Gemini Businessのユーザーは、アシスタント設計ツール「Gems」でチャットbotを開発できる。
Copilotは25言語で利用できる。Geminiは46言語での利用が可能だ。
Googleは、リアルタイムアシスタント機能をはじめとするGeminiの新機能を発表している。アシスタントには動画や音声を処理する機能が搭載される見込みで、これはGeminiが大容量の情報や動画コンテンツを扱えるモデルであるからこそ実現可能だ。さらに、GeminiをモバイルOS「Android」に組み込む拡張機能の取り組みも進めている。
MicrosoftもGoogleと同様、OS「Windows」にCopilotを組み込み、単独で動くモバイルアプリケーションとして提供する計画だ。他にも、Microsoft 365 Copilotの機能強化や、生成AIが出力したコンテンツを複数人で共同編集できるコラボレーションツール「Copilot Pages」などを発表している。
LLMの回答精度や処理量はこれまでにないスピードで進化を遂げており、ベンダーは頻繁に新機能を追加している。そのため企業にとって、どの生成AIツールを選ぶべきか判断するのが難しい状況だ。
最終的にどのサービスを選ぶかは、自社がMicrosoftとGoogleどちらのエコシステムを使用しているかによる。業務でMicrosoftのOSやアプリケーションを主に使用している場合、Copilotが最適な選択肢である可能性が高い。反対にGoogleのオフィススイートを利用している企業には、Geminiの方が適しているだろう。
AIツールの主要ベンダーはMicrosoftとGoogleだけでない。Amazon Web Services(AWS)も、独自のAIアシスタントサービス「Amazon Q」をサブスクリプション形式で提供している。「Amazon Q Business Pro」は1ユーザー当たり月額20ドル、基本的な機能のみ備える「Amazon Q Business Lite」は1ユーザー当たり月額3ドルだ。
Amazon Qの機能はCopilotやGeminiと類似しているが、幅広いシステムとの連携性、プラグインやカスタマイズ機能の豊富さといった点が強みだ。CopilotやGeminiが主に個人ユーザーやオフィスユーザー向けに設計されているのに対し、Amazon QはAWSのサービスを利用する企業向けに特化した設計となっている。
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