「Google検索」は「ChatGPT Search」があっても“オワコン化”しない訳AI時代、検索市場の勢力図に変化?【第3回】

OpenAIのAI検索ツール「ChatGPT Search」は、検索の在り方を大きく変える可能性がある。一方で、「Google検索」に代表される従来型の検索が不要になるとは言い難い。それはなぜなのか。

2025年03月28日 08時00分 公開
[Sean Michael KernerTechTarget]

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 AI(人工知能)ベンダーOpenAIは2024年10月、AIチャットbot「ChatGPT」に検索エンジンを組み合わせた「ChatGPT Search」の提供を開始した。同ツールは従来の検索を大きく変える可能性を秘めている一方で、幾つかの点においては、依然としてGoogleの検索エンジン「Google検索」(Google Search)が優位だ。

 本稿はChatGPT SearchとGoogle検索の長所と短所を整理するとともに、ChatGPT Searchの限界についても明らかにする。

「Google検索はオワコン」ではない? 「ChatGPT Search」の限界とは

1.情報の網羅性とデータ範囲

 Google検索は、数十年にわたり独自のWebクローリング(巡回・収集)技術を蓄積してきたことで、膨大量の情報をインデックス化している。

 ChatGPT Searchはそのようにして受け継がれた情報資産は持たず、インターネットの情報全てに直接アクセスできるわけではない。サードパーティーの検索プロバイダーと連携して最新情報を取得するものの、情報量の面ではGoogleに劣ると言える。

2.リアルタイム情報の精度

 ChatGPT Searchは、検索プロバイダーやメディアパートナーのデータを活用して、一定のリアルタイム情報を取得できる。しかし、分野ごとの網羅性や速報性ではGoogle検索に及ばない。

 Googleは常にWeb全体をクロールし、最新の情報を即座に検索結果へ反映できるため、ニュースや速報性の高い情報では依然として強みを持っている。

3.正確性に関する懸念

 ChatGPT Searchの基盤となるのは、LLM(大規模言語モデル)による回答生成だ。LLM特有の課題として、ハルシネーション(事実に基づかない回答を出力すること)のリスクがある。

 Google検索に生成AI機能を統合した「AI Overviews」(AIによる概要)にも同様の課題はあるものの、Web上の情報を根拠とした回答を生成するため、ハルシネーションが起きる可能性はChatGPT Searchより低い傾向にある。

4.検証の難しさ

 ChatGPT Searchは、情報の出典を明示するものの、回答の根拠を詳細に追うのは難しい場合がある。LLMが複数の情報を要約した形で出力するため、どの部分がどのソースに基づくのかが明確でないことがある。

 Google検索はアルゴリズムによるランキングシステムに基づき、信頼性の高い情報を優先的に表示することができる。

ChatGPT SearchとGoogle検索の長所・短所を整理

 ここで改めて、ChatGPT SearchとGoogle検索の長所と短所を整理しよう。

ChatGPT Searchの長所と短所

 ChatGPT Searchの主な長所と短所は以下の通り。

  • 長所
    • 自然言語を理解し、直感的な質問に回答できる
    • コンテキストを維持し、追加の質問にもスムーズに対応できる
    • 質問に対する詳細な説明や要約を提供できる
    • 創造的および分析的なタスクにも活用が可能
    • 対話型AIによる、より没入感のあるユーザー体験を提供できる
  • 短所
    • リアルタイム情報へのアクセスは限定的
    • 誤った回答を生成するリスクがある
    • 従来の検索エンジンと比べて、扱う情報の範囲が狭い
    • 画像検索機能が備わっていない
    • 学習データに由来するバイアス(偏見)を含む可能性がある

Google検索の長所と短所

 Google検索の主な長所と短所は以下の通り。

  • 長所
    • 独自のWebクローリング技術で蓄積した、膨大な情報インデックスを持つ
    • 多岐にわたるカテゴリーの最新情報にアクセスできる
    • 画像、動画、地図など、さまざまなメディアと検索機能が統合されている
    • 独自アルゴリズムに基づいて、ランキングの信頼性を担保する
  • 短所
    • 会話型インタフェースを提供していない
    • 大量の情報が提示され、必要な情報を見つけにくい場合がある
    • 情報の要約が分かりにくい。ただし、AI Overviewsでこの問題は緩和されつつある
    • 複雑な文脈を含むクエリの理解が限定的

 次回は、ChatGPT SearchがGoogle検索を代替するのかについての考察を紹介する。

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