Amazonが「Claude」を開発するAnthropicに40億ドルを追加投資すると発表した。両社の関係強化は、あるベンダーに余波をもたらす可能性がある。
Amazon.comは2024年11月22日(現地時間)、AI(人工知能)ベンダーAnthropicに40億ドルを追加投資すると発表した。Anthropicは、テキストや画像などを自動生成する「生成AI」を活用したチャットbot「Claude」を開発している。同社はAmazon Web Services(AWS)のプロセッサ「AWS Trainium」と「AWS Inferentia」を、生成AIのベースになる基盤モデルの学習に活用する計画だ。両社の関係強化は、他のベンダーに“ある余波”を引き起こす可能性がある。どのような影響があるのか。
Amazon.comは2023年9月、Anthropicに40億ドルを投資している。今回の投資と合わせると投資総額は80億ドルに達する。調査会社Futurum Groupのアナリスト、デビッド・ニコルソン氏(チーフテクノロジーアドバイザー)は、Anthropicの基盤モデルと大規模言語モデル(LLM)をAWSのAIチップ(AI関連の演算を担う半導体)で動作させる計画だと予測する。
AIチップの市場は、半導体製品ベンダーNVIDIAが席巻している。Claudeや他の基盤モデルを、NVIDIAだけではなくAWSのチップでも実行できることが分かれば、「AWSは他のベンダーにその違いを示し、NVIDIAが不要だと証明できる」とニコルソン氏は指摘する。
40億ドルの追加投資は、AWSのようなハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)が自社のチップを活用すれば、自らのビジネスの運命を掌握できることを示している。ニコルソン氏は「これは、われわれの予測よりも速いペースでNVIDIAの利益が脅かされる兆候といえる」と述べる。
ニコルソン氏によると、一部のハイパースケーラーは自社技術の背後にあるハードウェアを投資家に知られたくないという。AWSが自社技術を活用する方針を取ることで、市場全体もその方向に進む可能性がある。
「AWSはエンドユーザーが問題を解決するための手段を提供したいのであって、それがAdvanced Micro Devices(AMD)なのかIntelなのかNVIDIAなのかを気にしてほしいとは考えていない」とニコルソン氏は述べる。「バックエンドで使用する技術を最適化してコストを削減したり、特定のタスクに適した機能を提供したりして、エンドユーザーの利便性を向上させている」と説明する。
今回の追加投資からはAWSの生成AI戦略もうかがえると、調査会社Constellation Researchのアナリスト、アンディ・トゥライ氏(バイスプレジデント兼主席アナリスト)は指摘する。同氏は「AWSは基盤モデルの開発者をターゲットにしている」と述べる。
トゥライ氏によると、Anthropicを含むLLMベンダーは、LLMの学習で損失を出しているという。「そうしたLLMベンダーの開発競争をあおるのではなく、彼らを支援するためのプラットフォームになることは、AWSに価値をもたらす」と同氏は説明する。カスタムモデルや小規模言語モデル(SLM)、人に代わってさまざまな業務を実行できるAIエージェントの開発者に、AWSがアピールできるからだ。
2023年3月、AWSはクラウドデータウェアハウス(DWH)ベンダーSnowflakeともパートナーシップを締結したと発表した。トゥライ氏によると、AI技術関連のハードウェアとソフトウェアを提供するエコシステムを構築するためだという。
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