AWSやAzure、GCPのようなハイパースケーラーのクラウドサービスでこそ、生成AIの真価を引き出せる可能性がある。それはなぜなのか。AWSで生成AIを活用する方法を担当者に聞いた。
テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)は、ビジネスとITの世界を変革する技術として期待されている。
特に、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleといったハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)は豊富なコンピューティングリソースと、他事業者との協力体制を有しており、生成AIによる成果創出をさまざまな点で後押ししている。
ユーザー企業がハイパースケーラーのサービスを使い、生成AIを活用するにはどうすればいいのか。コストやセキュリティ、プライバシーなど一般的な懸念事項を含めて、生成AI活用のポイントをAWSのアジア太平洋地域担当チーフテクノロジストであるオリヴィエ・クライン氏に聞いた。
―― ユーザー企業の生成AI活用を推進するためにAWSはどのような支援策を実施しているのでしょうか。
クライン氏 私たちが目指しているのは、機械学習(ML)や生成AIを含むAI技術の民主化だ。私たちは、1つのAIモデルで全ての要望に応えられるとは考えていない。複数のAIモデルを準備し、ユーザーが要望に応じて最適なAIモデルを選択できるようにすることを重視している。
当社が提供を開始した生成AIサービス「Amazon Bedrock」(以下、Bedrock)では、AIの基盤モデルをAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じて利用することができる。Bedrockでは、当社の基盤モデル「Amazon Titan」だけでなく、AIベンダーAI21 Labsの「Jurassic-2」をはじめ、複数社の基盤モデルを利用できる。
Bedrockは、AWSのデータストア、特にベクトル形式でデータを管理するベクトルデータベースを使用できることが特徴だ。ベクトルデータベースは検索の際に、テキストや画像などのデータを数値に変換することで、数字を比較してデータ同士の類似性を計算・検索できる。
例えば、以下のようなリレーショナルデータベースサービスから、データをLLM(大規模言語モデル)に取り込める。
Bedrockには、事前学習に含まれていない必要な情報を外部データベースで検索したり取得したりできる「RAG」(検索拡張生成)の仕組みがある。RAGによって、LLMが事前学習していない情報を外部から補えるため、ユーザーからの質問をリアルタイムでパーソナライズして回答できる。
以上の全ては、VPC(仮想プライベートクラウド)内のユーザー専用の環境で実行できる。ユーザーが学習データを所有し、AIモデルのトレーニングを制御できる点は非常に重要だ。
クライン氏 私たちは常に、ユーザー企業の費用対効果を高めることを目標としている。そのために必要なことは、生成AIに限らずあらゆる面で、ユーザー企業の状況に最適化した選択肢を提供することだ。
例えば、AWSユーザーはハードウェアを選べる。AI技術用のプロセッサとして、当社の「AWS Trainium」だけでなく、IntelやNVIDIAといったベンダーのプロセッサを用意している。
AWSは特定の目的に特化した機械学習サービスも複数提供している。その一例として
などがある。
今後は生成AIを用いることで、業界特化型のサービスを拡充することを目指している。例えば「AWS HealthScribe」は、生成AIを使用して臨床医と患者との会話を文字に起こし、迅速に診察記録を作成するサービスで、オンライン診療で特に有用だ。将来的には、より多くのパートナーと協力し、業界特化型の基盤モデルを提供することを目指している。
中編は学習データのトレーニング方法についてAWSがどのように支援するのかを解説する
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