生成AIを「AWSのクラウド」で始める“基本の基” 知らないと損?クラウドで加速する生成AI活用【前編】

AWSやAzure、GCPのようなハイパースケーラーのクラウドサービスでこそ、生成AIの真価を引き出せる可能性がある。それはなぜなのか。AWSで生成AIを活用する方法を担当者に聞いた。

2023年12月14日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)は、ビジネスとITの世界を変革する技術として期待されている。

 特に、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleといったハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)は豊富なコンピューティングリソースと、他事業者との協力体制を有しており、生成AIによる成果創出をさまざまな点で後押ししている。

 ユーザー企業がハイパースケーラーのサービスを使い、生成AIを活用するにはどうすればいいのか。コストやセキュリティ、プライバシーなど一般的な懸念事項を含めて、生成AI活用のポイントをAWSのアジア太平洋地域担当チーフテクノロジストであるオリヴィエ・クライン氏に聞いた。

AWSで生成AIを利用する方法

―― ユーザー企業の生成AI活用を推進するためにAWSはどのような支援策を実施しているのでしょうか。

クライン氏 私たちが目指しているのは、機械学習(ML)や生成AIを含むAI技術の民主化だ。私たちは、1つのAIモデルで全ての要望に応えられるとは考えていない。複数のAIモデルを準備し、ユーザーが要望に応じて最適なAIモデルを選択できるようにすることを重視している。

 当社が提供を開始した生成AIサービス「Amazon Bedrock」(以下、Bedrock)では、AIの基盤モデルをAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じて利用することができる。Bedrockでは、当社の基盤モデル「Amazon Titan」だけでなく、AIベンダーAI21 Labsの「Jurassic-2」をはじめ、複数社の基盤モデルを利用できる。

 Bedrockは、AWSのデータストア、特にベクトル形式でデータを管理するベクトルデータベースを使用できることが特徴だ。ベクトルデータベースは検索の際に、テキストや画像などのデータを数値に変換することで、数字を比較してデータ同士の類似性を計算・検索できる。

 例えば、以下のようなリレーショナルデータベースサービスから、データをLLM(大規模言語モデル)に取り込める。

  • 「Amazon Relational Database Service」(Amazon RDS)
  • 「Amazon RDS for PostgreSQL」
  • 「Amazon Aurora」

 Bedrockには、事前学習に含まれていない必要な情報を外部データベースで検索したり取得したりできる「RAG」(検索拡張生成)の仕組みがある。RAGによって、LLMが事前学習していない情報を外部から補えるため、ユーザーからの質問をリアルタイムでパーソナライズして回答できる。

 以上の全ては、VPC(仮想プライベートクラウド)内のユーザー専用の環境で実行できる。ユーザーが学習データを所有し、AIモデルのトレーニングを制御できる点は非常に重要だ。

費用対効果を高めるために必要なのは「選択肢」

クライン氏 私たちは常に、ユーザー企業の費用対効果を高めることを目標としている。そのために必要なことは、生成AIに限らずあらゆる面で、ユーザー企業の状況に最適化した選択肢を提供することだ。

 例えば、AWSユーザーはハードウェアを選べる。AI技術用のプロセッサとして、当社の「AWS Trainium」だけでなく、IntelやNVIDIAといったベンダーのプロセッサを用意している。

 AWSは特定の目的に特化した機械学習サービスも複数提供している。その一例として

  • ユーザーが好みそうなアイテムをレコメンドする「Amazon Personalize」
  • ユーザーによる不正行為を検出する「Amazon Fraud Detector」
  • 客足や在庫数など、ビジネス上の数値を時系列分析(時間の経過順に並んだデータをもとに変動要因や将来の値を分析すること)する「Amazon Forecast」

などがある。

 今後は生成AIを用いることで、業界特化型のサービスを拡充することを目指している。例えば「AWS HealthScribe」は、生成AIを使用して臨床医と患者との会話を文字に起こし、迅速に診察記録を作成するサービスで、オンライン診療で特に有用だ。将来的には、より多くのパートナーと協力し、業界特化型の基盤モデルを提供することを目指している。


 中編は学習データのトレーニング方法についてAWSがどのように支援するのかを解説する

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