オンプレミスのストレージとクラウドストレージを使う「ハイブリッドクラウドストレージ」が“理にかなった選択”だと企業は考えるようになった。だがそれが本当に正しいとは言えない。何が問題なのか。
クラウドサービスの利用によってコストや運用負荷を減らせる可能性があることから、企業ではストレージを含めてオンプレミスのインフラをクラウドサービスに切り替える動きが継続している。だがそうした中でも、オンプレミスのストレージを運用し続けている企業は珍しくない。双方を併用することが「理にかなった選択」になり得るからだと考えられるが、それがある“重大な問題”を引き起こしている。
調査会社Forrester Researchは「The future of enterprise data storage」というレポートの中で、企業が保有するデータのうち、クラウドサービスに保存される分が増えているとまとめている。幾つかの要因がそのトレンドを助長している。企業が「SaaS」(Software as a Service)を選択する傾向が強まっていることもその一つだ。企業向けのソフトウェアを提供するベンダー各社は、SaaSでソフトウェアを提供するビジネスモデルへの移行を強化してきた。そうした中で、企業のデータはオンプレミスのストレージから、クラウドベンダーが提供するリポジトリ(データの保管場所)へと移動してきた。
クラウドサービスを利用することで、企業は以下のようなメリットを得られる可能性がある。
オンプレミスのインフラを減らしてクラウドサービスの利用を増やすほど、上記のようなメリットを追求できるのだが、クラウドサービスを利用する企業の拠点から必ずしもストレージが消えたわけではなかった。企業はオンプレミスに残しておくべきシステムやデータがあると判断して、一部でストレージの運用を継続することがあるからだ。
そのためストレージベンダーは、オンプレミスのストレージの支払いモデルに、クラウドサービスの特徴であるOPEX(運用経費)型を採用するようになった。OPEXでインフラを利用できるサービスとしては、Dell Technologiesの「Dell APEX」や、Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE Greenlake」などがある。
企業がオンプレミスのストレージ運用を継続する中、クラウドストレージとオンプレミスのストレージにデータを分散させて保管する「ハイブリッドクラウドストレージ」が台頭した。このアーキテクチャでは、オンプレミスのストレージのみ、またはクラウドストレージのみを使用する場合には発生しにくい問題が発生する。代表的なのは以下の2つだ。
IDCのデータ統合および整合性ソフトウェア調査部門のディレクターであるスチュワート・ボンド氏によれば、企業は断片化と複雑化を軽視してはいけない。データの統制がしにくくなり、イノベーションが起こらなくなったり、セキュリティリスクが高まったりする重大な問題を招くからだ。
企業がハイブリッドクラウドストレージを使用する傾向は、年々高まる可能性がある。だが安易にハイブリッドクラウドストレージを使用することには注意が要る。IT専門家のジュネード・アリ氏は「ハイブリッドクラウドストレージが有益なケースは確かに存在するが、ほとんどのケースでは最適な選択肢にはならない」と指摘する。特に注意を要するのは、低遅延のアクセスが求められる用途にハイブリッドクラウドストレージを使用することだ。
ストレージの利用を検討する際は、ハイブリッドクラウドストレージが本当に最適でシンプルな方法なのかどうかを検討することが欠かせない。「必要以上に複雑な技術を採用し、それが後になって“頭痛の種”になることがあまりにも目立つ」とアリ氏は話す。重要なのは、要件を満たしながらもシンプルさを重視することだという。
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