クラウドサービスで構築したシステムが期待通りにならないことは珍しくない。企業はその背景に何があるのか、原因を知っておいた方がよい。システム構築時に意識すべき2つの原則を紹介する。
クラウドサービスで構築したシステムが、エンドユーザーや運用管理者の期待に応えられていないというのはよくある話だ。「動作が遅い」「使いにくい」「コストが肥大化する」といった問題だ。データセンター設計の認定機関Uptime Instituteでクラウドリサーチディレクターを務めるオーウェン・ロジャース氏によれば、問題を解決するための原則がある。本稿で紹介するのは、クラウドサービスでシステム構築をするときの“失敗”に関係する2つの間違いだ。
ロジャース氏は「クラウドサービスで稼働するシステムのパフォーマンス向上や効率化を実現するには、スケーラビリティ(拡張性)を重視した設計が必要だ」と話す。一方でスケーリング(自動的にリソースを増減すること)機能を実現する場合、大半のシステムは再設計が必要になる。
再設計にはコストと時間が掛かる。それを避ける目的で、単純にオンプレミスシステムをそのままクラウドサービスに移行する「リフト&シフト」を採用する企業が一定数存在する。だがエンドユーザーや運用管理者の不満を減らすためには、クラウドサービス向けにシステム設計を最適化することが重要、というのがロジャース氏の意見だ。
ホスティングサービスベンダーHyve Managed Hostingの共同創設者でディレクターを務めるジョン・ルーカス氏は、「クラウドサービスで稼働するシステムの成功には、入念な計画と、開発環境で実際に構築するテストの実施が不可欠だ」と話す。机上で仕様と要件を練り上げるだけの開発だと、本番で問題が発生しやすい傾向にある上、実際にエンドユーザーや運用管理者がツールを使うと新たな問題が発生しがちだ。開発の初期段階だけでなく変更時においても、システムが関係者の要望を満たせるのかどうか、適宜確認を取る必要がある。変更点のテストを全て完了するまで、本番環境での稼働開始をしないのが望ましい。
Hyve Managed Hostingの共同創設者でディレクターを務めるジェイク・マダーズ氏は、上述した原則に従わなかった企業が直面した失敗を目の当たりにしてきたという。例えばある企業は、システムのリソース使用量や処理のプロセスを安易に増やした結果、パッチ(修正プログラム)適用作業に追われることになったという。データベースの管理が難しくなった失敗もあった。
次回は、クラウドサービスにおけるシステム構築を成功させるためのポイントを紹介する。
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