勝つのは「正義」ではなく「AI」という恐ろしい現実がすぐそこに……AIにどこまで委ねるか?【後編】

AI技術を軍事利用することで、被害軽減などの成果につながるとの見方がある。一方で、このようにAI技術を正義として捉えることの危険性を警告する専門家もいる。

2023年12月15日 05時00分 公開

 AI(人工知能)技術を戦闘に導入することで、一般市民の犠牲者を減らしたり、自国兵士の命を守ったりすることにつながるという声がある。一方で専門家は、このようなメリットと国際人道法の順守を混同してはいけないと呼び掛ける。

 2023年1月、英国議会はAI技術の兵器利用について検討する調査委員会「AI in Weapon Systems Committee」を設立した。同年6月に開催した口頭弁論会に証人として出席した法律やITの専門家らは、調査委員会メンバーの英国貴族院(上院:House of Lords)議員に対し、AI技術の軍事利用が引き起こすリスクについて警告した。

AIの使用はむしろ逆効果

 人のオペレーターが直接制御または指揮することなく標的を選定、探知、攻撃する兵器システム「自律型兵器システム」(AWS:Autonomous Weapon Systems)を導入して攻撃側の被害が軽減した結果、武力行使の敷居が低下し、戦闘が加速する恐れがある。AI兵器の導入により、不必要な紛争を防げなくなってしまう可能性を忘れてはならない。

 サウサンプトン大学(University of Southampton)で国際関係学の教授を務めるクリスチャン・エネマルク氏は、「攻撃に関する意思決定を、人間以外の主体に委ねるべきではない」と指摘する。同時に、自律型兵器システムに関する議論を紛争以外の領域にも広げるべきだとエネマルク氏は付け加える。

 これまで自律型兵器システムは、主に人道法(紛争当事者同士の行動を規制する戦時ルール)に関連する場で議論されてきた。だが、自律型兵器システムは紛争以外で使用される可能性もある。その一例が、国家による市民への暴力行使だ。「自律型兵器システム使用の是非を、人権法(統治者と被治者の関係を定めるルール)の観点で議論する場も必要だ」と同氏はコメントする。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 Splunk Services Japan合同会社

金融サービス業界のレジリエンス向上、AI活用の有効性とその実装方法とは

イノベーションの加速とともに、セキュリティやレジリエンスの維持などさまざまな課題が顕在化している金融サービス業界。課題の中身を確認しながら、その解決策として期待されるAI活用の有効性や実装方法を紹介する。

市場調査・トレンド Splunk Services Japan合同会社

金融業界におけるAIと機械学習の活用が進む中、解消しておきたい5つの誤解とは

金融業界においてAIツールの活用が進んでいる。一方で、セキュリティ面の不安を抱えている金融サービス企業は少なくない。このような懸念は、リスクとメリットを考慮して、AIと機械学習の戦略を策定することで解消できる。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

AIには代替できない「ITエンジニア職」はこれだ

AI技術は進化を続け、人間の仕事の一部はAIによって代替可能になる。AI技術に代替されにくいITエンジニアの職種とは何か。ITエンジニアはどのようなキャリアを歩むべきなのか。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

AI活用を加速させる、スーパーコンピューティングの実力

AI活用には処理スピードが重要となる。特に、大規模言語モデルのトレーニングでは、長期的に稼働できる強力なコンピュート性能も求められる。そこで注目したいのが、AIモデルのトレーニングを加速させるスーパーコンピューティングだ。

製品レビュー 日本ヒューレット・パッカード合同会社

開発や分析の多様なニーズに応えながら、組織全体にAIを導入する方法とは?

AIを使ったイノベーションの推進が期待されているが、組織全体にAIを導入するためにはいくつかの課題を解消することが必要だ。開発や分析を担うエンジニアやデータサイエンティストのニーズに応えながら、組織全体にAIを導入する方法とは?

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。