英国歳入関税庁が「脱メインフレーム」を決断するしかなかった理由脱レガシーに取り組む英国政府とKyndryl

英国歳入関税庁が、メインフレームからクラウドサービスに移行するために投資を決断した。投資額は15カ月間で440万ポンドにもなる。なぜ英国政府はクラウド移行を急ぐのか。

2023年12月04日 05時00分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

 英国歳入関税庁(HMRC:Her Majesty's Revenue and Customs)は、ITインフラサービスプロパイダーのKyndrylに15カ月間で440万ポンドを支払う契約を結んだ。この契約は、HMRCが利用しているメインフレームおよびメインフレームで稼働しているサービスの一部管理をKyndrylに委託するもの。加えて、HMRCがITインフラをクラウドサービスに移行するための準備に取り組み、Kyndrylの子会社でITコンサルタントのKyndryl Consultもサポートする。HMRCがクラウドサービスへの移行に投資する理由とは。

「脱メインフレーム」するしかない――英国歳入関税庁の決断とは

会員登録(無料)が必要です

 HMRCは過去に公会計委員会(Public Accounts Committee)から、レガシーシステムの利用に費用を掛けていることに批判を受けている。2021年、同委員会はシステムのモダナイゼーション(最新化すること)に投資するようHMRCに要請した。同委員会によれば、HMRCはモダナイゼーションには投資せずにレガシーシステムの保守に時間と費用を掛けることで、結果的にHMRCの業務を“重大なリスク”にさらしている。

 こうした背景からHMRCは、以前からワークロード(アプリケーション)をパブリッククラウドに移行する取り組みを進めている。2023年現在のHMRCはクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)のヘビーユーザーとして知られている。HMRCは2021年に、AWSと約3年で9400万ポンドの契約を結んだ。

 HMRCは今回、英国政府の政府機関向けクラウドサービス調達フレームワーク「G-Cloud」を通してKyndrylと2024年9月末までの契約を結んだ。この契約には進行中のクラウド移行の支援や技術提携が盛り込まれている。Kyndrylは、HMRCのメインフレームサービスの一部を管理し、これらのアプリケーションをモダナイズしてクラウドサービスに移行する方法についてのコンサルティングも提供する。

 メインフレームのモダナイゼーションはKyndrylが担当する。一方、コンサルティングを担当するのはKyndrylの子会社でITコンサルティングのKyndryl Consultだ。

 Kyndryl Consultはアプリケーションのモダナイゼーションとクラウド移行支援以外にも、HMRCのロードマップ策定を支援する。HMRCのアプリケーションのモダナイゼーションと業務オペレーションの改善について、Kyndryl ConsultはMicrosoftおよびソフトウェアベンダーのAdvanced Computer Software Groupと協力して今後数十年のロードマップを作成する。

 Kyndryl UK and Irelandのプレジデントを務めるジョン・チェンバース氏は次のように強調する。「今回の契約は、英国の公共部門を支援し、英国市民により良い成果をもたらすことへの当社の継続的なコミットメントを示すものだ」

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

製品資料 日本オラクル株式会社

クラウド転換期到来、データセンターを縮小しクラウドに移行するメリットとは

近年、オンプレミスのデータセンターを活用する戦略を見直し、クラウドに移行する流れが加速している。本資料では、クラウドに移行することで得られる5つのメリットについて解説する。

製品資料 日本オラクル株式会社

自動化ワークフローによりコストを削減し、モダナイゼーションを加速させる方法

現在のビジネス環境は、競争力を維持するために、継続的にITインフラを最新化する“ITのモダナイゼーション”が必要だ。そこで、大規模なモダナイゼーションから小規模なモダナイゼーションまで柔軟に対応する基盤を紹介する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談を効率的に獲得、企業とベンダーの課題を解決するマッチングサービスの実力

クラウド利用が拡大しSaaSサービスの導入が進む中で、製品の多様化がベンダー側と企業側にさまざまな課題を生み出している。双方の課題を解決する方法として注目したいのが、商談を効率的に獲得できるマッチングサービスだ。

事例 ファインディ株式会社

アジャイル開発で直面する課題を解消、3社に学ぶ“開発生産性の可視化”実践術

アジャイル開発に取り組む企業は増加しているが、思うような成果を挙げられていないと悩む担当者も少なくない。そこで、セゾンテクノロジーをはじめとした3社の取り組みを基に、実践の方法と成功のポイントを解説する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...