AI技術は、Microsoftにとっては“肝いり”の分野だ。それに関連した取り組みの中で、同社内部のストレージにアクセスできる情報を、同社が誤って「GitHub」に公開していた事態が明るみに出た。その影響とは。
Microsoftの研究者が人工知能(AI)技術のオープンソースの学習モデルを開発中に、オブジェクトストレージサービス「Azure Blob Storage」の同社アカウントへのURLを誤ってソースコード共有サービス「GitHub」に公開していた。公開情報にはMicrosoft内部のストレージを利用するための「共有アクセス署名」(SAS:Shared Access Signature)トークンが含まれていた。これによる影響範囲はどれほどなのか。
今回のインシデントがあったのは、2023年6月のことだ。セキュリティベンダーWiz が、SASトークンが公開されていることを発見した。このSASトークンでアクセスできるストレージには、Microsoft従業員のPCのバックアップデータや認証情報、秘密鍵などが保存されていた。他にもコラボレーションツール「Microsoft Teams」で交わされた内部メッセージ約3万件を含め、合計で38TBのデータがあったという。
Microsoftのセキュリティ専門部隊「Microsoft Security Response Center」(MSRC)は、「データ漏えいの影響は限定的だった」と説明する。漏えいしたデータの中には、同社ユーザー企業の情報は含まれていないということだ。「今回の件についての情報を公開するとともに、再発防止策を講じる」(MSRC)
Wizセキュリティ専門家のヒライ・ベンサッソン氏とロニー・グリーンバーグ氏は、「SASトークンには基本的なセキュリティの問題がある」と指摘する。SASトークンはクラウドサービス群「Microsoft Azure」のストレージへのアクセスを制御するためのツールだ。両氏によれば、厳格に管理されていないと情報漏えいにつながる恐れがある。
SASトークンのアクセス権限や有効期限はユーザーが容易に設定できる。Wizによると、今回公開されたSASトークンは2051年まで有効に設定されていた。ユーザーはSASトークンの設定を自由に変更することもできる。そのため、SASトークンがどのように設定されているかを管理者は把握しにくい。ベンサッソン氏とグリーンバーグ氏は、「攻撃者にとってSASトークンは格好の標的だ」と警告する。
後編は、今回の事件が示した「2つの大きなセキュリティリスク」を考える。
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