オンプレミスシステムでLLMを動かす方法【後編】
「LLMをPCで使いたい」「複数人で使いたい」を実現するには何が必要?
技術革新が進み、LLMをクラウドサービスや自社データセンターではなく、手元のPCで動かすことが技術的に可能になった。何をすれば実現できるのか。複数人での利用時に発生する問題点を解消できるツールとは。
クラウドサービスに頼らずローカルマシンでLLM(大規模言語モデル)を動かすことが現実的になってきた。社内LANでの運用はプライバシーの確保やインターネット接続なしでの利用につながる一方、運用面での課題をクリアしなければ実現は難しい。特に複数のエンドユーザーで利用する場合には、負荷分散のための工夫も必要になる。どのようなツールを活用すればよいのか。
手元のPCでLLMを動かすには?
併せて読みたいお薦め記事
連載:オンプレミスシステムでLLMを動かす方法
LLMを知る
企業は専用のツールやサービスを活用して、エンドユーザーのデバイスでLLMを実行可能だ。これらのツールが提供するAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使用して、外部ソースから得た情報を用いてAIモデルの出力精度を高める手法「RAG」(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)を組み込んだアプリケーションを構築できる。
オンプレミスシステムでLLMを実行するためのツールの例を以下に挙げる。
- Ollama
- GPT4All
- LM Studio
Ollamaは「macOS」「Linux」「Windows」で利用可能だ。リポジトリ(保管場所)から最適化されたLLMをダウンロードし、実行するためのCLI(コマンドラインインタフェース)を提供する。LLM実行アプリケーション「AnythingLLM」や、ソースコード生成AIアシスタント「Continue」などの外部ツールとの連携が可能だ。
マルチユーザー向けのLLM運用に役立つツール
Ollamaは単一エンドユーザーでの利用には適するが、複数のエンドユーザーにサービスを提供する中央集約型システムで使うには、別のツールが必要だ。この場合、LLM用サーバソフトウェア「vLLM」や、機械学習用サーバソフトウェア「NVIDIA Triton Inference Server」といったツールを使うことになる。
vLLMは、単一GPUに加えて、「テンソル並列処理」という技術で、大規模なLLMを複数のGPUに分散させ、複数サーバやGPUを使う構成でもLLMを実行できる。コンピュータがGPUを搭載していない場合は、CPUを使ってLLMを動かすことも可能だ。
テンソル並列処理が必要になる場面を考えてみよう。「NVIDIA H200 Tensor Core GPU」のメモリ容量は141GBと比較的大容量だが、大規模LLMを格納するには不十分な場合がある。そのため複数のGPUを組み合わせ、テンソル並列処理を活用する必要がある。複数のノードにまたがる大規模な構成では、サーバ間での高速な通信が不可欠だ。可能であれば、サーバ同士を接続するインターコネクト技術「InfiniBand」といった技術を採用するとよい。
vLLMはコンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」と組み合わせて使うことができ、スケーラビリティや高可用性といったKubernetesの利点を生かした推論サービスを構築できる。フレームワーク(プログラム部品やドキュメントの集合体)「Ray」を使えば、複数サーバでの推論が可能になる。Rayはプログラミング言語「Python」で開発されたAIアプリケーションでの利用を想定したフレームワークだ。
Kubernetesを使ってvLLMを運用する際、vLLMは複数の独立したコンテナとして動作し、それぞれが異なるネットワークアドレスで通信を受け付ける。このため、エンドユーザーからのリクエストを適切に各コンテナに振り分ける負荷分散(ロードバランシング)が重要になる。これにはKubernetesの標準機能であるHTTPロードバランシング機能や、「LiteLLM」などの専用プロキシサービスを使うとよい。NVIDIAが提供する、各コンテナがホストマシンのGPUを利用できるようにするためのプラグインをインストールすることも不可欠だ。
vLLMを導入することで、企業は「LangChain」などのフレームワークを用いて独自アプリケーションやサービスを構築できるようになる。同じシステムを用いてLLMをファインチューニング(特定用途向けの小規模データセットを用いた調整)することも可能だ。
複数ユーザーで利用するLLMを稼働させるための別の選択肢として「NVIDIA AI Enterprise」がある。NVIDIA AI EnterpriseはRayを含むvLLMと同様の機能、サービス群を提供する一方、商用サービスであるため、コストがかかる点には注意しなければならない。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[スパイスファクトリー株式会社] レガシーに消えるIT予算8割 「刷新か延命か」をAIと人で見極めるための手順 -
製品資料
[JetBrains s.r.o.] ソフトウェア開発は「コーディングエージェント」でどう変わるのか? -
事例
[テクバン株式会社] 太陽ホールディングスは国内外拠点の端末5000台をどう管理しているのか? -
事例
[株式会社キーエンス] PCが苦手でも自動化できる ポポラマーマなど4事例に学ぶ「ナビ搭載型RPA」活用 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
2
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
3
「Copilot」がIT予算を食いつぶす? 高額請求を招く課金体系と節約術
-
4
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
5
京王電鉄・東京メトロの被害から学ぶ境界防衛 ITの侵害はどこまで波及するか
-
6
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
7
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
8
「データ活用とAI活用の実態」に関するアンケート
-
9
PHP2Shellの「事前の情報流出」でパニックに パッチ公開を巡る“混乱劇”
-
10
「GitLab」に最高深刻度の脆弱性 2014年以降の全版に影響を及ぼす恐れ
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
3
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
4
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
5
SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド
-
6
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
7
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
8
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
-
9
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー