「LLM」をクラウドサービスではなく自社サーバで動かすメリットは?オンプレミスシステムでLLMを動かす方法【前編】

クラウドサービスのLLMを使うことは手軽な一方、自社のオンプレミスシステムでLLMを運用する選択肢もある。クラウド型LLMにはないメリットとは何か。どのような企業が“オンプレミスLLM”を選択すべきなのか。

2025年01月16日 05時00分 公開
[Marius SandbuTechTarget]

関連キーワード

GPU | 人工知能 | 機械学習 | オンプレミス


 企業が大規模言語モデル(LLM)を使う場合、クラウドサービスを利用することが一般的だ。一方でLLMを社内のデータセンターで実行すれば、クラウドサービスを利用する場合のリスクの軽減や、クラウドサービスでは得られないメリットが見込める。

LLMをオンプレミスシステムで実行するメリットは?

 企業がクラウドサービスではなく、オンプレミスシステムでLLMを実行する主な理由は、セキュリティとパフォーマンスに対する懸念だ。クラウドサービスのLLMは、機密データを外部システムで保管、処理することになるため、データの保管場所や利用状況の把握が難しくなる。LLMのリクエストはインターネットを通じて送受信されるので、社内システムで処理が完結する場合と比べて応答時間が長くなる可能性がある。

 こうした懸念を解消し得るのが、オンプレミスシステムでのLLM運用だ。企業はLLMを直接制御できるようになり、データプライバシーの強化やLLMのパフォーマンス最適化が可能になる。

 医療や軍事などの規制が厳しい分野では、オンプレミスシステムでLLMを動かすことが特に有用だ。例えば医療機関は、患者データのプライバシーを保護しつつ、用途に合わせてカスタマイズしたLLMを用いて診断支援をしたり、患者とのコミュニケーションの効率化を図ったりできる。

 発生源の近くでデータを処理する「エッジコンピューティング」の考え方も、オンプレミスシステムでのLLM運用と親和性がある。石油掘削施設や製造工場、自動運転車といった、現場で活躍するデバイスから得られるデータを、クラウドサービスを用いずその場で処理すれば、LLMによるリアルタイムの意思決定支援が可能だ。


 次回は、オンプレミスシステムでLLMを動かすためのインフラ要件を解説する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news079.jpg

CMOが生き残るための鍵は「生産性」――2025年のマーケティング予測10選【中編】
不確実性が高まる中でもマーケターは生産性を高め、成果を出す必要がある。「Marketing D...

news023.jpg

世界のモバイルアプリ市場はこう変わる 2025年における5つの予測
生成AIをはじめとする技術革新やプライバシー保護の潮流はモバイルアプリ市場に大きな変...

news078.png

営業との連携、マーケティング職の64.6%が「課題あり」と回答 何が不満なのか?
ワンマーケティングがB2B企業の営業およびマーケティング職のビジネスパーソン500人を対...