KFCがDXを進める上で大切にしているのは、消費者と従業員を深く理解することだという。どういうことなのか。その背景をKFCのCTOに聞く。
ファストフードレストラン企業Yum! Brands傘下のKFCは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を機にデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速した。モバイルアプリケーションやレストランに設置するキオスク端末(情報を提供するタッチ操作が可能な端末)といったデジタルサービスを通じた売り上げの増加が見られたという。そうした成長の理由はどこにあるのか。同社の最高技術責任者(CTO)に聞いた。
注文量が増加したことで、KFCの店舗では人手不足が課題となった。ランチタイムやディナータイムといったピーク時の業務を処理する際に従業員が感じるプレッシャーを軽減することも重要な課題だった。KFCは業務の効率化を進めるため、いつどのような商品を調理する必要があるのかを示す予測画面や、調理の終了予定時間を知らせるシステムを導入した。
KFCでCTOを務めるジャティン・チャンドワニ氏は「従業員が注文を出すのも、チキンを揚げるのも、ボタンをクリックするだけで済む」とシステムの導入効果を説明する。従業員の作業工数が減り、より多くの注文を受けられるようになるため、「収益の拡大が期待できる」とチャンドワニ氏は語る。
AI(人工知能)ソフトウェアの導入もKFCが進めるDXの一部だ。チャンドワニ氏は「チキンを揚げるフライヤーから、消費者が購入した商品を載せるトレーまでの動きをデータとして取得している企業はKFCくらいだ」と説明する。商品がフライヤーに投入された時間や、消費者の手に渡る前の保管エリアに置かれている時間などを把握することで、商品のライフサイクルを詳細に理解することができるのだという。そのデータは、従業員の業務の改善や消費者体験の改善につながる方法を見つけ出すことに役立つ。収集したデータの活用を強化するため、KFCはITコンサルティング会社Brillioに協力を依頼し、データウェアハウス(DWH)の再構築を進めている。
チャンドワニ氏はもう一つの取り組みを挙げる。店舗で使用する機器の予防保守を実施するシステムの試験導入だ。「機器の運用保守は重要な問題であり、機器が確実に機能することが大切だ。機器の監視を実施し、潜在的な問題があれば通知してくれるのは非常に有益なことだ」と同氏は説明する。KFCのメニューの一つである「ポップコーンチキン」を揚げる調理ロボットの開発にも取り組んでいるという。
KFCは社内のあらゆる業務をデジタル化しようとしている。チャンドワニ氏によると、同社はその取り組みにおいてゴールまであと55〜60%のところまでたどり着いた。
一方で、巨大仮想空間「メタバース」や「コンピュータビジョン」(画像処理を通じてその内容を認識し、理解する技術)といった技術が登場している。チャンドワニ氏は、従業員の業務プロセスを改善する取り組みに、メタバースやコンピュータビジョンといった新たな技術を使うことにも関心を寄せている。
チャンドワニ氏はKFCのDXについて、消費者をより理解することと、従業員がより効率的に働けるように支援することが鍵になると説明する。「この取り組みを繰り返し、消費者と従業員の体験を向上させることがDXの目的だ」
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