「DXの予算」を賢く使うには? あつれきを生まない“絶妙なバランス”の鍵DXを失敗させないための基本【第3回】

DXを進める上で直面する問題の一つが、予算の確保と分配だ。予算を適切に使うに当たって、企業はどのような取り組みを重視すればよいのか。

2023年09月22日 05時15分 公開
[Cath EverettTechTarget]

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって、企業における従業員の働き方や業務の実施方法に変化が起きた。そうした変化を受けて、「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に取り組む企業の動きが広がりつつある。企業がDXを進めるに当たって重要になる要素の一つが、十分な予算を確保できるかどうかだ。

「長期的な視野」と「短期的な視野」のバランス

 「予算といえばソフトウェアのライセンス料やインフラの利用料金といった費用にばかり目が行きがちだが、広告費や人材の育成費用、外部委託の活用費用といった費用もある。「こうした予算を考慮できない企業では、将来的に問題が発生する可能性がある」と、ITコンサルティング企業Unisysでデジタルワークプレースソリューション担当のグローバルバイスプレジデントを務めるパトリシャ・ソベラ氏は指摘する。

 ITコンサルティング企業Valtechで、欧州北西部担当のマネージングディレクターを務めるクリス・ダプリン氏は、DXは2つの視点で見ることが必要だと指摘する。1つ目は、戦略的にDXに取り組むための長期的な視点。2つ目は、顧客の変化や技術の進化を見る短期的な視点だ。ダプリン氏によれば、これら2つのバランスを取ることが課題になる。この課題に取り組む上での目標は、長期的な視野に基づく取り組みが短期的な視野に基づく取り組みに飲み込まれないようにすることだという。

 ダプリン氏の説明はこうだ。企業の中でルールを設定しないまま、その都度必要と判断して導入したシステムやインフラを使い続けると、システムやインフラがこんがらがった「スパゲティ」のような状態になる。そのような状態では、システムやインフラの改修やメンテナンスが困難になりがちだ。そのような状態を避けるため、企業の中でシステムやインフラをまとめ、簡素化し、基礎を整えることが大切だ。

 こうした視点を持つことで、IT部門のリーダーは「勇気ある決断」を下さなければならなくなる可能性があるともダプリン氏は指摘する。社内の部署や従業員から「今すぐこれが欲しい」と言われた際に勇気を持って拒否した場合、「のんびりしている場合ではないのに」と、がっかりされる可能性がある。そのような状況を避けるためには、「選択のバランスを取ることが重要だ」と同氏は説明する。

 このような問題に対処するには何をすればよいか。その方法の一つは、DXの取り組みが公正な判断の基に実施されているかどうかを監視、統制するチームを設立することだ。そのチームは、DXを進める上で作成したロードマップに基づいて、ソフトウェアの購入といった従業員からのリクエストに優先順位を付ける役割を担う。新しい技術やシステムを導入した際には、他の技術やシステムと統合し、望ましい成果を得られているかどうかを測定するための指標を導入するといった役割も考えられる。

 企業として進むべき方向を判断するための基準である「北極星指標」(NSM:North Star Metric)を設定し、従業員に示すことで、企業としてのビジョン(将来像)を保つのも一つの手だ。従業員全体が同じ方向を向いていることが確認できれば、社会の変化にスムーズに対処可能になる。


 第4回は、DXへの取り組みから利益を生み出すために従業員が持つべき考え方を紹介する。

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