アジャイルの次に考えるべき「プロダクト思考」とは何か?DXを失敗させないための基本【第4回】

DXを成功させたい企業において、従業員はどのような考え方を持てばよいのか。ITコンサルティング企業でDXを専門とする人物が説明する「プロダクト思考」とは。

2023年09月23日 05時15分 公開
[Cath EverettTechTarget]

関連キーワード

CIO | データ統合 | データ分析 | IT投資 | 経営


 「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に取り組み、成果を出そうとするに当たり、従業員はどのような考えを持てばよいのか。ITコンサルティング企業Valtechで、欧州北西部担当のマネージングディレクターを務めるクリス・ダプリン氏が強調するのは、“ポストアジャイル”である「プロダクト思考」だ。

ポストアジャイルの「プロダクト思考」とは

 プロダクト思考は、ユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザーの体験価値)、技術、ビジネスの目標といったさまざまな要素を管理しながら開発に取り組み、ユーザーに価値ある製品を提供する考え方だ。小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」な開発手法は、製品やサービスを開発するプロジェクト単位では成立する。しかし企業規模でアジャイルな開発を進めようとした場合、さまざまな部署や従業員が関わることになるため、マネジメントの視点を持つ必要が出てくる。「ポストアジャイル」とは、アジャイルな開発手法にマネジメントの視点を組み込む考え方だ。

 ダプリン氏の説明はこうだ。あるシステムを構築するとき、さまざまなベンダーの製品から最も良いサービスや製品を選択し、その組み合わせでシステムを構築する「ベストオブブリード」という考え方がある。ベストオブブリードは、機能の追加や仕様変更が難しいモノリシック(1つのモジュールで構築されたシステム構成)型の従来型のシステム開発とは一線を画す考え方だ。開発後であっても、必要に応じてアプリケーションやシステムを入れ替えることが可能なベストオブブリードの考え方は、プロダクト思考と密接に関連している。

 製品の開発や販売に関わる部門は、顧客のカスタマージャーニー(製品やサービスに対する認知から購入までの過程)の改善を通じた顧客への価値提供、ひいてはビジネスの持続的な発展を目指すことに関心がある。そのため目的意識が明確で、業務に無駄がない傾向にある。

 ある製品が成立するためには、製品の開発から販売を裏で支える技術部門と、表で支える製品部門が積み上げてきた「さまざまな要素」が連なっている必要がある。例えばEコマース(EC)を使った製品販売をする場合、製品販売の部門からのリクエストに基づいて、バックエンドシステムやユーザーインタフェースのエンジニアが協力して製品ページの改善に取り組む。この取り組みにより、顧客エクスペリエンスを向上させることができる可能性がある。

 ダプリン氏はプロダクト思考のメリットとして、一つの製品作りに取り組むに当たって事業部門と技術部門が「製品の開発サイクルの中で常に連携する」ことを挙げる。


 第5回は、事業部門と技術部門が連携してDXに取り組む小売企業の事例を紹介する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 TeamViewerジャパン株式会社

スマートロッカーのトラブル対応、リモートでリアルタイムに行うには?

スマートロッカー(自動で荷物の預け入れなどが行えるIoTベースのロッカーシステム)が普及する一方で、遠隔地に分散する多数の装置を効率的かつ安全に管理・保守することが難しくなっている。この課題解決のカギを握るのがリモートだ。

事例 双日テックイノベーション株式会社

事例に学ぶ、ワークスタイルに合わせたコミュニケーションツール刷新の取り組み

コミュニケーションツールを時代の要請や社員のニーズに合わせて進化させることは、重要な取り組みとなっている。本資料では、Web会議ツールを軸とする定番プラットフォームのソリューションをフル活用した企業の事例を紹介する。

製品資料 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社

クラウドへの移行を成功させるには? 4つのフェーズのフレームワークを解説

生成AIの導入や業務の俊敏化を背景に、クラウドへの移行を進める企業が増えている。しかし、大量のデータが含まれる既存のワークロードの移行には、慎重な計画が必要だ。本資料では、4つのフェーズに基づき、移行成功の要点を解説する。

製品資料 SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

複雑化を競争優位性に転換する、マルチLinux戦略の運用ガイド

技術が発展し、ユーザーニーズが多様化する中で、多くの企業は単一Linuxディストリビューションによる運用から、複数プラットフォームの運用にシフトしている。一方で課題も顕在化しており、この混在環境とどう向き合うかが問われている。

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

リスク管理やコンプライアンス対応の成熟度を高める、最新化フレームワークとは

リスク管理やコンプライアンス対応の取り組みを進めることは、多くの企業にとって重要だ。しかし、どのような手順で取り組みを進めればよいのか分からないという声も多い。そこで本資料では、5つのステップに分けて、詳しく解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...