DXを成功させたい企業において、従業員はどのような考え方を持てばよいのか。ITコンサルティング企業でDXを専門とする人物が説明する「プロダクト思考」とは。
「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に取り組み、成果を出そうとするに当たり、従業員はどのような考えを持てばよいのか。ITコンサルティング企業Valtechで、欧州北西部担当のマネージングディレクターを務めるクリス・ダプリン氏が強調するのは、“ポストアジャイル”である「プロダクト思考」だ。
プロダクト思考は、ユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザーの体験価値)、技術、ビジネスの目標といったさまざまな要素を管理しながら開発に取り組み、ユーザーに価値ある製品を提供する考え方だ。小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」な開発手法は、製品やサービスを開発するプロジェクト単位では成立する。しかし企業規模でアジャイルな開発を進めようとした場合、さまざまな部署や従業員が関わることになるため、マネジメントの視点を持つ必要が出てくる。「ポストアジャイル」とは、アジャイルな開発手法にマネジメントの視点を組み込む考え方だ。
ダプリン氏の説明はこうだ。あるシステムを構築するとき、さまざまなベンダーの製品から最も良いサービスや製品を選択し、その組み合わせでシステムを構築する「ベストオブブリード」という考え方がある。ベストオブブリードは、機能の追加や仕様変更が難しいモノリシック(1つのモジュールで構築されたシステム構成)型の従来型のシステム開発とは一線を画す考え方だ。開発後であっても、必要に応じてアプリケーションやシステムを入れ替えることが可能なベストオブブリードの考え方は、プロダクト思考と密接に関連している。
製品の開発や販売に関わる部門は、顧客のカスタマージャーニー(製品やサービスに対する認知から購入までの過程)の改善を通じた顧客への価値提供、ひいてはビジネスの持続的な発展を目指すことに関心がある。そのため目的意識が明確で、業務に無駄がない傾向にある。
ある製品が成立するためには、製品の開発から販売を裏で支える技術部門と、表で支える製品部門が積み上げてきた「さまざまな要素」が連なっている必要がある。例えばEコマース(EC)を使った製品販売をする場合、製品販売の部門からのリクエストに基づいて、バックエンドシステムやユーザーインタフェースのエンジニアが協力して製品ページの改善に取り組む。この取り組みにより、顧客エクスペリエンスを向上させることができる可能性がある。
ダプリン氏はプロダクト思考のメリットとして、一つの製品作りに取り組むに当たって事業部門と技術部門が「製品の開発サイクルの中で常に連携する」ことを挙げる。
第5回は、事業部門と技術部門が連携してDXに取り組む小売企業の事例を紹介する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
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