DXを通じて顧客の満足度を高めるとともに、企業として成長を続けるためには、どのような取り組みから始めればよいのか。英国の小売業者の取り組みを紹介する。
1892年に英国で創業したHalfords Group(以下、Halfords)は、自動車用品や自転車部品の小売業者だ。同社は2018年にデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを開始した。同社がDXにおいて最初に刷新したのは、Eコマース(EC)サイトのフロントエンド(顧客との接点になるシステムの構成要素)だった。
HalfordsがECサイトのフロントエンド刷新に使用したのは、Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」に連携させた、SalesforceのECサイト構築ツール「Commerce Cloud」だ。従来個々の製品やサービスごとに設置していたWebサイトを、Commerce Cloudを使って作成したWebサイトに統合したのだ。
その結果生まれた顧客向け施策の一つが、顧客向けの会員サービス「Motoring Club」の立ち上げだ。同サービスに入会した顧客は、商品の購入や車検の実施といった場面で特典や割引を受けることができ、これがHalfordsの顧客の定着を促す。
この取り組みを通じてHalfordsは、顧客に関する膨大なデータを得ることができるようになると見込む。Halfordsの最高情報責任者(CIO)であるニール・ホールデン氏は、データを使って顧客のニーズを予測できるようにすることが目標だと説明する。例えば、顧客が短距離通勤をしているか、長距離移動をしているかによって、車の整備が必要な時期やタイヤの交換が必要な時期を特定できるようになる。
ホールデン氏は、顧客が「今必要としているもの」だけでなく、「将来必要になる可能性のあるもの」についても顧客と話ができるようになることに期待しているという。顧客とのコミュニケーションを通じて、自動車を所有していることで感じるストレスを取り除けるような商品やサービスを提供できるようになると同氏は説明する。「財務的な観点から見ても、より適切な計画を立てられるようになるはずだ」とも同氏は言う。
Halfordsが創出したもう一つの成果が、新規システムの開発だ。同社はガレージを650棟、小売店を394店舗、移動販売車を730台所有しており、それらを管理するシステムを開発した。欧州、米国、オーストラリアの顧客向けに「Avayler」のブランドで販売されている同システムは、Halfordsにとっての新たな収益源になっているという。「小売業者で構成される市場でHalfordsが影響力を持つようになった」とホールデン氏は語る。
第7回は、HalfordsがDXにおいて直面した課題を深掘りする。
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