バックアップの落とし穴「復旧できなければ意味がない」を回避する方法は?バックアップとデータ復旧の手引き【後編】

バックアップを取得することはデータが失われる可能性のある非常事態に備えた基本的な対策だが、いざというときに正しく復旧できなければバックアップの意味はない。正しい復旧のための準備とは。

2024年11月07日 05時00分 公開
[Stephen PritchardTechTarget]

 「正しく復旧できなければバックアップは役に立たない」というのは当たり前のことのようにも感じるだろう。だが正しく復旧できることは、実は当然と言えるほどに簡単なことではない。バックアップから適切に復旧できるようにするには、どのような準備が必要なのか。

正しく復旧しなければバックアップは意味がない

会員登録(無料)が必要です

 バックアップの整合性をテストすることは、事業継続計画(BCP)を計画通りに遂行する上で不可欠だ。データを正常に保管できていることを確認する作業は欠かせない。以下のような事象が発生し得るからだ。

  • ファイルは破損したりマルウェア感染したりすることがある
  • 拠点で運用するテープなどのストレージは、時間の経過とともに物が劣化し、それによってデータにアクセス不能になることがある

 バックアップの整合性をテストする確実な方法は、そのデータを使ってリカバリーを試みることだ。ただしリカバリーの対象がミッションクリティカルな本番システムである場合、現実的にはリカバリーのテストは実施しにくい。そのため代替案を用意しているベンダーもある。例えば仮想的なシステム環境を用意し、その環境をテスト用に使用するといった方法がある。とはいえ、仮想的には複製できないハードウェアへのリカバリーをテストすることも重要だ。

バックアップと復旧の手順をテストすることの重要性

 テストにおいて見落とされがちなのが、手順だ。バックアップテストはたいていの場合、

  • バックアップソフトウェアが意図した通りに動作するかどうか
  • バックアップデータから復旧できるかどうか

など、技術的な側面に重点を置いている。だがDRが失敗する原因は、技術的なことだとは限らない。特にランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃を受けているような状況では、スタッフは重圧を受けていることに加えて、コミュニケーションを取るための正常なネットワークが遮断され、指揮統制を維持することが困難になる。

 そのためバックアップとリカバリーの手順では、いつ何を実施するのか、誰が責任を負うのかなどを定め、その通りに動けるようにすることが重要だ。明確な計画と手順は、最悪の事態が発生したときに非常に役立つ。それを用意しておくためには、手順をできるだけ現実的な状況の下でテストする必要がある。そうすれば、手順を実際に実行する際の弱点を特定し、前もって対処できるようになる。テストでは以下の点を確認しよう。

  • バックアップデータを適切に見つけられること
  • リカバリー用のシステムをアクティブにできること
  • 正しい順序でシステムのリカバリーができること
  • リカバリー用のシステムが意図した通りに動作すること
  • スタッフの誰もが自分の役割を的確に認識していること

 これらの点を確認するための包括的なテストを実施することで、自組織の準備状況と、レジリエンス(障害発生時の回復力)についてさまざまなことが明らかになるはずだ。

 テストの目的は、いざというときに本番システムが意図した通りに機能できるようにすることだ。フェールオーバー(予備システムへの切り替え)を計画している場合は、正しく切り替えができるかどうかを確認する必要がある。

 RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)が適切に設定されているかどうかも忘れてはいけないポイントだ。事業は変化するものなので、5年前に設定したRPOとRTOが、現時点では許容できないものに代わってしまっている可能性がある。

バックアップからの復旧をテストする頻度

 理想的なテスト頻度についての簡単な答えは、「できるだけ頻繁に」だ。バックアップとリカバリーの大規模なテストは混乱を招き、コストがかかる可能性があるので、年に1回程度が適切だと言える。より頻繁に実施できるテストもある。例えば重要なアプリケーションのみを対象にした部分的なテストや、アプリケーションの更新の一環として実施できる程度がテストなどがある。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 TIS株式会社

APIはじめてガイド:開発から管理までを効率化するためのポイントとは?

次なるビジネスの中核を担う可能性を秘めているAPI。APIを本格利用する組織にとっては、効率的な開発・公開・運用・管理方法を確立することが重要課題となっている。本資料では、効率化に向けて知っておくべきポイントを解説する。

製品資料 Okta Japan株式会社

SaaSの非アクティブユーザーを特定し、アクセス権を適切に管理する方法とは?

組織が導入するSaaSの数は増加する一方だが、全てが有効に使われているとは限らない。IT部門には、各SaaSへの不要なアクセス権を取り消すことが求められているが、個別のSaaSシステムをまたいで非アクティブユーザーを特定するのは難しい。

市場調査・トレンド 横河レンタ・リース株式会社

PC運用管理者1030人に聞いた「PC運用の実態調査」、担当者を悩ます課題と解決策

近年の情報システム部門は多数の業務を抱えており、中でもPCの運用・管理担当者の業務負荷をいかに軽減するかが大きな課題となっている。1030人を対象に行った調査をもとに、PC運用・管理業務のあるべき姿を探った。

事例 Asana Japan株式会社

“208カ国の壁”を突破しスズキが残業35%減を実現、その全貌とは

“100年企業”スズキでは、DX推進のアクションプランに、「仕事のシンプル化」「ムダの削減」「全社的な可視化」を挙げている。同社はあるツールを導入したことで、業務の見える化や標準化、残業時間の35%削減を実現したという。

製品資料 SUSE ソフトウエア ソリューションズ ジャパン株式会社

システム乱立やコスト増の課題も、マルチLinux環境の運用をどう効率化する?

企業では「マルチLinux」環境が有効な取り組みとして浸透しているが、一方で管理の複雑化という課題も浮上している。本資料ではマルチLinux環境が浸透してきた背景やその利点を整理し、新たな課題の解決策について解説する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...