AI関連の需要に伴い、NVIDIAのデータセンター事業が好調だ。しかしDeepSeekや大手クラウドベンダーの動向が今後のNVIDIAの業績を左右するとの見方もある。こうしたリスクを、同社のCEOフアン氏はどのように見ているのか。
GPU(グラフィックス処理装置)ベンダーNVIDIAがAI(人工知能)向けのデータセンター事業で好業績を維持している。同社データセンター事業の2025年度第4四半期(2024年11月~2025年1月期)売上高は前四半期比16%増、前年同期比93%増の356億ドルだった。同事業の2025年度通期売上高は、前年比142%増の1150億ドルを記録した。同社CEOのジェンスン・フアン氏は、データセンターGPUの最新アーキテクチャ「NVIDIA Blackwell」に対する需要が高まっていると強調する。
一方、中国のAIベンダーDeepSeekの動向がNVIDIAの業績に影響を及ぼすとの見方もある。DeepSeekの台頭に伴い、2025年1月にはNVIDIAの株価が急落した。しかしフアン氏は、こうした影響は一時的なものとみている。
金融情報メディア「Seeking Alpha」に掲載されたNVIDIAの決算説明会の記録によると、データセンター事業における売上高の約半分は、クラウドベンダーの需要が占めた。しかしユーザー企業からの需要も拡大している。フアン氏は「今後、ユーザー企業向けの事業の成長が見込まれる」と述べ、同社製品を拡販する機会と捉えている。
同社の決算説明会で金融アナリストたちは、DeepSeekの影響について、フアン氏に質問を投げかけた。DeepSeekが発表したAIモデルは、NVIDIAのGPUよりも低性能で安価なGPUでも動作可能とされている。
このようにAIモデルの計算効率が向上しても、推論に時間をかける「長時間思考」のAIモデルの登場によって、データセンターの需要は高まり続けると、フアンCEOは反論する。同氏は「AIモデルの推論時間が長くなるほど、回答の精度は高まる」と説明し、そうした長時間思考のAIモデルは「より膨大な計算資源を必要とする可能性がある」と指摘する。
一方、Microsoftをはじめとする大手クラウドベンダーは、AIワークロード(AI技術関連の処理やタスク)に適した独自のカスタムチップを開発している。こうしたカスタムチップは、NVIDIAのGPUと競合する可能性がある。
フアン氏によると、AI技術の進歩に伴い、NVIDIAのGPUで動作するAIソフトウェアは指数関数的に増加している。クラウドベンダーが個々に提供するカスタムチップに、こうした全てのソフトウェアが乗り換えることは困難だと、フアン氏は主張する。
調査会社Forrester Researchのシニアアナリスト、アルビン・グエン氏は「NVIDIAの記録的な業績は、同社のAI向け製品への継続的な需要を裏付けるものだ」と述べる。DeepSeekの台頭による業績への懸念に対し、NVIDIAが「長時間思考のAIモデルの登場によって、むしろ計算資源の需要が増す」と主張したことは「適切な反論」だという。
しかしグエン氏は、フアン氏はクラウドベンダーのカスタムチップを「軽視している」と指摘する。「Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、GoogleなどのクラウドベンダーがNVIDIA以外の選択肢を持ち、AIモデルの学習と推論のニーズに特化した半導体を必要としている事実を、フアン氏は無視している」(グエン氏)
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