Wi-Fi 6の拡張版であるWi-Fi 6Eが日本市場で解禁されてから約2年が経過した。クライアント端末がWi-Fi 6Eに準拠し始めており、ベンダーがさまざまな無線LANアクセスポイントを展開している。各社の機器や特徴的な技術を比較する。
無線LAN(Wi-Fi)技術は企業ネットワークにとって欠かせない存在だ。ノートPCやタブレット、スマートフォンなどさまざまなクライアントデバイスがWi-Fiを介してWebサービスやクラウドサービスを利用している。
2025年1現在、最新の無線LAN規格は「Wi-Fi 7」(IEEE 802.11be)だが、総務省がWi-Fi 7を認可してから約1年しか経っておらず、普及にはしばらくの時間を要すると考えられる。実際、まだWi-Fi 7に準拠している無線LANアクセスポイント(AP)を出荷していないネットワーク機器ベンダーも存在する。
こうした状況を踏まえると、ユーザー企業が現実的に選択肢として検討する無線LAN製品は、「IEEE 802.11ax」に基づく「Wi-Fi 6」およびその拡張版である「Wi-Fi 6E」に準拠した製品も入ってくる。
Wi-Fi 6Eは、国内では総務省が2022年9月2日に電波法施行規則の一部を改正したことにより利用が可能となった。スマートフォンの「iPhone 15 pro」や「Google Pixel 7」などがWi-Fi 6Eに準拠しており、利用できるクライアントデバイスが広がっている。
Wi-Fi 6Eは、無線LANの歴史の中でも画期的な変化が起きた規格だ。その進化のポイントと併せて、主要ベンダーのWi-Fi 6Eに準拠した無線LAN APの特徴を紹介する。
Wi-Fi 6までの無線LAN規格が採用していた周波数帯2.4GHzと5GHzに加えて、Wi-Fi 6Eでは6GHz帯が使えるようになった。2.4GHz帯と5GHz帯はWi-Fiの利用が広がっている他、近距離無線通信規格「Bluetooth」も利用しており混雑している。新たに6GHzを利用することで、速度や安定性を改善することが可能になった。
これらの通信規格による進化に加えて、各ネットワーク機器ベンダーは独自機能やクラウドサービスとの連携で差別化を図っている。
ネットワーク機器ベンダーのCisco SystemsはWi-Fi 6Eに準拠している無線LAN APを「Cisco Meraki」(以下、Meraki)と「Cisco Catalyst」(以下、Catalyst)の2つのラインアップで提供している。 Cisco Systemsによれば、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)などを利用して運用を簡素化したいユーザー向けには「Meraki」シリーズを、無線LANのチューニングを細かくしたいユーザーには「Catalyst」シリーズが適している。
Cisco SystemsのWi-Fi 6E準拠のラインアップは以下の通り。
製品名 | 最大通信速度 | 価格 |
---|---|---|
Cisco Meraki MR57 | 7.78Gbps | 代理店価格 |
Cisco Catalyst 9136I | 10.2 Gbps | 代理店価格 |
Cisco Wireless 9163E | 3.9 Gbps | 代理店価格 |
Cisco Catalyst 9162 | 3.9 Gbps | 代理店価格 |
Cisco Catalyst 9164 | 7.49 Gbps | 代理店価格 |
Cisco Catalyst IW9165 | - | 代理店価格 |
Cisco Catalyst 9166 | 7.78 Gbps | 代理店価格 |
Cisco Catalyst 9166D1 | 7.78 Gbps | 代理店価格 |
Cisco Catalyst IW9167シリーズ | 7.8 Gbps | 代理店価格 |
Hewlett Packard Enterprise(HPE)傘下のAruba NetworksのWi-Fi 6E準拠のAPは独自機能「ウルトラ・トライバンド・フィルタリング」を利用できる。同機能により、複数の周波数帯(2.4GHz、5GHz、6GHz)で利用可能なチャネル(データ送受信用の周波数帯)を動的に調整して信号の干渉やパフォーマンス低下を抑えることができる。
Aruba Networks製のAPは仮想コントローラー機能の「Aruba Instant AP」を搭載しているため、ネットワーク管理者はコントローラー用の機器を利用せずAP単体で無線LANを管理可能だ。Aruba Instant APはオンプレミスインフラとクラウドインフラのどちらにも展開できる。
Aruba Networks製のWi-Fi 6E準拠製品のラインアップは次の通り。
製品名 | 最大通信速度 | 価格 |
---|---|---|
HPE Aruba Networking AP-634 (外部アンテナ) | 3.9 Gbps | 代理店価格 |
HPE Aruba Networking AP-635 (内部アンテナ) | 3.9 Gbps | 代理店価格 |
HPE Aruba Networking AP-654 (外部アンテナ) | 7.8 Gbps | 代理店価格 |
HPE Aruba Networking AP-655 (内部アンテナ) | 7.8 Gbps | 代理店価格 |
メルコホールディングス傘下のバッファローの「WAPM-AXETR」「WAPM-AXETR/Z」は最大で768台の端末を収容可能で、バッファローによれば学校の教室やフリーアドレスのオフィスなどに適している。
ローミング規格の「IEEE 802.11k/v/r」に準拠している。さらに、Wi-Fi接続において、電波強度が低かった場合に自動的に接続を切断する「低RSSI切断機能」を搭載している。RSSI(受信信号強度)が一定の値を下回った場合、IEEE 802.11k/v/rによってローミングを試みた後、ローミングが失敗した場合は強制的に切断することで、信号が弱い状態で無理に接続を維持する状態を防ぐ。
WAPM-AXETRとWAPM-AXETR/Zは、ネットワーク管理者がバッファローが提供するリモート管理サービス「キキNavi」を利用して遠隔から管理可能だ。WAPM-AXETR/Zは、現地でセットアップ作業をしなくともネットワークと電源に機器をつなぐだけで設定が完了する「キキNaviクラウドゼロタッチ」機能を搭載している。
製品名 | 最大通信速度 | 価格 |
---|---|---|
WAPM-AXETR | 4.1Gbps(6GHz帯単体で2.401Gbps) | 13万900円 |
WAPM-AXETR/Z (キキNaviクラウドゼロタッチ専用モデル) |
4.1Gbps(6GHz帯は2.401Gbps) | 13万900円 |
Wi-Fi 6Eに準拠している「AT-TQ7403」は伝搬環境の簡易サイトサーベイと電波調整をAPが自律的に実行する「AWC」(Autonomous Wave Control)機能を搭載している。AWCを搭載したAPは無線LAN環境に応じて、使用するチャネルや出力などを自動で調整するため、無線LAN接続の安定性が向上する。
AT-TQ7403には、APごとに異なるチャネルを用いるセル方式と、全APで同一チャネルを用いるブランケット方式を併用する「AWC-CB(Channel Blanket)」機能がある。AWC-CBにより、単一のチャネルでAP間の移動時に通信が途切れることなくローミングが可能だ。
別売のパッチアンテナ(AT-TQ0301)やアンテナ延長ケーブル(AT-TQ0064)を接続することで、2.4GHz帯において、より指向性の強い電波を放射できるようになる。
製品名 | 最大通信速度 | 価格 |
---|---|---|
AT-TQ7403 | 5Gbps | 16万2800円 |
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