「航空会社というより小売業者的になっている」British Airwaysのビッグデータ戦略:航空会社のビッグデータ活用法
英British AirwaysでITアーキテクチャの統括責任者を務めるマイク・クラウチャー氏に、他航空会社との合併やオンラインサイトによる小売業的なセールスアプローチについて話を聞いた。
英British Airways(BA)は2年前の大きなIT役員人事を経て、厳しい経済情勢を生き抜くべく、インフラの近代化と顧客データの活用による収益増を軸にIT戦略を展開している。
BAで10年以上にわたり最高情報責任者(CIO)を務めたポール・コビー氏は、BAとイベリア航空との経営統合後、2011年にBAを後にした。現在BAは、ITの統括責任者を2人置いている。ITアーキテクチャとデリバリーを指揮するマイク・クラウチャー氏と、IT運用とインフラを指揮するスティーブ・ハーディング氏だ。両氏とも、ビジネスサービス担当ディレクターのフィリップ・オズモンド氏の配下になる。
「コビーの代わりはいなかった。そこでIT組織を2領域に分けた」とクラウチャー氏は説明する。「ハーディングの役割はデータセンターを効率よく運営することで、私の役割は、変化を通じて部門を率いることだ」
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BAでは、この新しい組織構成でIT部門の能率が向上していることから、CIO職を復活させる計画はないという。
データという金塊
BAは、サービスの向上と売り上げの増加につなげるため、購買行動から収集した顧客データを最大限活用しようとしている。その鍵になるのが「Know Me」プログラムで、ターゲットマーケティングと、BAの旅客データおよび顧客のソーシャルメディア情報の最適化を図っている。
これはBAの副次的なセールスに生かされ、アドオン商品(ホテルやレンタカーなど)の販売またはアップグレードにより、1フライト当たりの利益を増やすための工夫につながっている。「顧客との関わり方に関して、より幅広い情報を基に意思決定ができるようになった」とクラウチャー氏は話す。
「BA自身とBA以外の情報源に対してビッグデータ(手法)を使っている。(BAのロイヤルティープログラムである)『アビオス』など、弊社のデータ以外も活用している。利用客がヒルトンHオナーズプログラムのメンバーで、そのポイントをためている場合は、マリオットではなくヒルトンホテルを提供できる」
「BA.comを始めBAのセールスの方法は変わった。現在は、航空会社というよりは小売業者的になっている。日を変えてさまざまなフライトオプションを提供するのではなく、旅行当日の宿泊施設を複数から選べるようにして、アップグレードした場合の価格を顧客が分かるようにしている」
BAの1000人強のIT部門はある程度の分析に対応しているが、詳細なビッグデータ処理は社内では行っておらず、米Opera Solutionsなどに外注している。外注先では、先進科学を使ってデータから予測パターンを抽出し、それを基に成果物を開発。BAに“〜aaS”(サービスとしての〜)の形で提供している。
「弊社はトランザクションデータの収集のみで、処理には関与しない。弊社で本当に求めているのはイベント駆動型の成果物で、これは外注している」とクラウチャー氏は言う。
今後数カ月をかけて、BAは社内で生成されたデータをより効率的に活用する方法について、重要な決定を下す予定だ。BAでは、メールとコラボレーションプラットフォームに「大規模な投資」を行う予定であり、現在、取引先候補と交渉をしている。
「BAは、ソーシャルメディア、コラボレーションツール、メールの社内利用に関しては遅れている。これについての戦略をまとめる予定だ」
今後の展開
BAの今後18カ月のITロードマップは確定している。それによると、ITチームが多忙を極めることは必至だ。「今後1年半以内に、SOA(サービス指向アーキテクチャ)フロントエンドが大きく変わる予定だ。これは、(受け身の)デリバリーではなく、(能動的に)“探索”するためのフロントエンドになるだろう。また、モバイルフロントエンドについてもさまざまなニュースを提供する見込みだ」
「テスト環境をクラウドに移行し、クラウドから社内にサービスを提供できるようにすることも予定している。妥当な分野については、積極的にデータセンターからクラウドに移行していく。多数のプロジェクトが進行しているが、われわれの仕事はそういうものだ」
続きはComputer Weekly日本語版 2013年8月7日号にて
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