広がるIoTの可能性
前のめりに取り組みたい「モノのインターネット(Internet of Things)」
航空機エンジンは1回のフライトで1Tバイトのデータを出力する――このような機械データのソースとインターネットとを接続する「モノのインターネット」。実現するには幾つかの課題がある。
ビッグデータが大きな話題になっているが、その陰に隠れて重要な事実が見過ごされている――「機械やセンサーから生成されたデータは何十年も前から存在する」という事実だ。電子商取引やERPといった比較的新しい世界の外側には、膨大な量の機械技術が存在する。製造現場で活躍するロボットやマシンビジョンシステムから、ガスタービン、風車、ジェットエンジンに至るまで、機械は基本的なビジネスプロセスの原動力として、複雑なリアルタイムデータを大量に生成しているのだ。
こうしたデータソースが突然、いわゆる「モノのインターネット」(Internet of Things、以下“IoT”)をスポットライトの中心に押しやろうとしている。IoTはあらゆるデバイスをインターネットに接続することを意味する。「Cレベル」のエグゼクティブたち(訳注:CEOやCTOなど肩書に「C」が付く企業幹部)は長い間、機械データの価値に目を向けることなく、機械データを生み出す工場や現場資産(パイプライン、大型車両など)でこれらのデータを利用するにとどまっていた。しかし企業幹部はここにきてようやく、機械データの奥深くに金鉱が存在し、それを掘り出すには従来の電子商取引とERPをベースとするビッグデータソースと組み合わせる必要があることに気付いた。
では、IoTを利用して種類の異なるデータソースを組み合わせ、将来のハイブリッド型アナリティクスを実現するにはどうすればいいのだろうか。
技術と文化の課題をどう克服するか
厄介なのは、IoTのビッグデータとエンタープライズソフトウェア側にあるビッグデータとの間には巨大な技術上の断絶が存在することだ。それぞれの標準、利用形態、ツールが異なるだけでなく、データの発生頻度と量も異なるのだ。
企業文化という障壁も存在する。特に製造業の多くの企業では、製造現場のデータやIoTデータを扱う組立作業員や機械技術者、電気技術者は、エンタープライズアプリケーションのユーザーと話したり、彼らとデータを共有したりはしないのが実情だ。両者が共同作業をすることもなければ、同じ書類を読んだり、同じ会議に出席したりすることもない。
このような状況では、全社的なビッグデータを有効に活用するのは難しい。断絶した2つの環境を融合することで実現される可能性を生かすには、大抵の企業では企業文化と技術の両面での変革が必要となる。ただ、どちらの改革が困難であるかを予想することはできない。
企業文化との融合
技術面だけでも途方もなく大きな困難が待ち構えている。製造データの先駆的企業といわれる米GE Softwareの言い方を借りれば“回るモノ”が生成するデータの海は巨大であり、1基の航空機エンジンだけでも1回のフライトで1Tバイトものデータを吐き出す可能性がある。このデータの利用方法、そしてそれに応じたサンプリング率、データ連携手法およびアナリティクスモデルも可変要素だ。
発生箇所においてリアルタイムで分析しなければならないデータもある。例えば、火災発生の危険があるエンジン異常は直ちに通知されなければならないが、一方では、1カ月にわたってエンジンのセンサー信号を分析する複雑な予測モデルを作成するために使用するデータもある。膨大な量の非構造型機械データの収集、統合、分析のためのプラットフォームを作成するのは、恐ろしく困難な作業である。
しかも今のところ、この分野で標準化団体が設立される見込みは皆無に近い状況だ。これについてはGE Software、米Cisco Systems、米Texas Instrumentsなどの企業が意欲的な姿勢を見せているが、実現は容易ではなさそうだ。
新しいプラットフォームは、製造現場のデータとバックオフィスのERPデータや電子商取引データを融合する利点を最大限に生かせるものでなくてはならない。例えば、ジェットエンジンのような高価な資産を修理する必要があることを示すデータが出てきたら、その情報に基づいてERPシステムで部品を発注し、さらに人材管理システムで保守作業のスケジュールを決めるという具合に連携させれば、全く新たなレベルの効率と費用有効性を実現することができる。
このような可能性を現実のものとするには、企業文化を融合する必要もある。先進的な企業は既に両面の融合を進め、次世代のアナリティクスモデルと予測モデルを作成する作業に取り組んでいる。こうした取り組みは、必要な技術的基盤を確立するというレベルだけにとどまらない。
IoTとエンタープライズビッグデータがシームレスに融合する段階に到達するのは並大抵の苦労ではないが、この取り組みは今から始めなくてはならない。幸いにも、既存のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを利用すれば、このハイブリッド型データ環境で必要とされる新しいリポートを作成することが可能だ。文化的インフラとデータインフラを結び付けるためには、人材と技術の両方に多くの時間と資金を投入する必要があるが、その成果は投資に十分見合うものとなるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
テレワークやBYODでリスクが拡大、デバイスの多様化を弱点としない管理方法とは
-
7
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
-
8
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
9
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
10
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー