徹底分析:次期OS「Android 5.0 Lollipop」、Samsung協力の意味は?:セキュリティ、デバイス管理が高度化
米Googleが10月15日に発表した次期Android OS「Android 5.0 Lollipop」。韓国Samsungは、新OSのセキュリティ・統合管理機能を開発している。スマホ分野での苦戦が伝えられるSamsungの起死回生策となるか?
統合モバイルコンテナ「Samsung Knox」に向けた米Googleと韓国Samsung Electronicsの提携によって、近い将来、あらゆるタイプのAndroidデバイスを容易に管理できるようになる。
2014年夏の初め、両社はGoogleの次期OS「Android L」(※)を搭載するエンタープライズモビリティコンテナの開発で協力することを明らかにした。その時点で技術的詳細は明らかにされなかったため、この提携が「Samsung Knox」の未来にどのような意味を持つのか、さまざまな臆測が飛び交った。
Samsungは、果たして「Samsung Knox」はどのようにEMM(エンタープライズモビリティ管理)市場を攻略しようとしているのか。そしてGoogleは、この新しいテクノロジーで何を狙うのか。
※:編注 Googleは2014年10月15日、Android Lの正式名称を「Android 5.0 Lollipop」と発表した。
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Samsungは今回、Android Lに提供する技術に、「Security Enhancements for Android」(SE for Android)、Knoxフレームワーク、「Knox Workspace」のデータ分離技術など、ハイレベルコンポーネント群が含まれることを明らかにした。
同社は、カーネル保護機能を持つ「TrustZone-based Integrity Measurement Architecture」(TIMA)、クライアント認証管理機能、カーネル保護拡張機能の「Trusted Boot」、生体認証やFIPS(米国連邦情報処理標準)認証暗号ライブラリといった政府認証など、自社製ハードウェア固有のKnox機能は保持する考えだ。
Samsungの貢献により、企業は2014年秋にもリリースされるAndroid Lの新しいAPI群で、サードパティーのEMM製品を利用できるようになる。Googleが投稿したブログ記事によると、SamsungとGoogleの共同開発による新しいAPI群は、データとデバイスのセキュリティ、ITポリシー、制限サポート、モバイルアプリケーション管理を強化するものになるという。
モバイルコンテナはAndroidのエンタープライズ攻略のカギとなるか?
Googleは今、エンタープライズ市場における米Appleの「iOS」の優位性に挑もうとしている。米アラスカ州の電力会社でITディレクターを務めるマット・コシュト氏のような管理者にとって、コンテナアプローチは魅力的に見えるようだ。
「私はコンテナ技術の大ファンだ。なぜなら、コンテナはユーザーにとって、基本的にトランスペアレントなものだからだ」とコシュト氏は言う。「ユーザーは会社からのメールが安全なアプリに入れられているかどうかは気に掛けない。ユーザーが気にするのは、メールが届いたという事実だけだ」
一方、Samsungは毎月20万人の新しいKnoxユーザーが増え、この技術の完全な制御を維持していると、同社ブログに投稿している。現在の1ユーザー当たり月額3.60米ドルの価格体系を変更する予定はないとしているが、Knox技術を取り込んだAndroid Lコンテナはデバイスにあらかじめ組み込まれて出荷される。
「Samsungは自社ハードウェア固有の技術資産は手元に残すとしているが、GoogleにとってSE for Androidを手に入れたことは大きな勝利だ」と語るのは、米調査会社VDC Research Groupモバイルアナリスト、エリック・クライン氏である。
「今後全てのAndroidデバイスにその技術を取り込めるようになったことは、Googleにとってかなり大きな利益になる」と同氏。
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また今回の提携は、エンタープライズ市場への参入を目指す非Samsung系OEMにもメリットがある。新しいAndroidエンタープライズインフラストラクチャから利益を得るOEMの1つとして、クライン氏は台湾HTCの名前を挙げた。
いずれにせよ、新しいAndroidエンタープライズ技術とユーザーエクスペリエンスの深い統合化がカギとなる。「もし職場とパーソナルスペースの間に大きな不調和が生まれたら、Googleはユーザーを失うリスクがある」とコシュト氏。
「2つの世界で異なることを強いられたら、ユーザーは混乱するだけだ。人々はそうした状況を好まない」と同氏。「私はこの技術に期待しているが、もしユーザーに対してトランスペアレントでなければ、大きな失敗に終わる」
Knox EMMの一部がAndroidデバイスに組み込まれることで、Samsungが今後も同技術のユーザーベースを拡大し続けることができるかどうかは不透明だ。「たとえSamsungがどこへ向かうつもりでも、ユーザーをつなぎとめておくためには、現行の製品にもっと多くのイノベーションと議論が必要だろう」と、クライン氏は指摘する。
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