激化するクラウド市場の価格競争だが……実は安くなっていない!?:誰のための低価格化なのか
AWS、Microsoft、Googleの価格競争が白熱している。この競争によって、ユーザーはどのような影響を受けるだろうか? 451 Researchによる意外な事実とは?
2014年は、IaaSを擁するパブリッククラウドプロバイダー同士で価格引下げの応酬が続いた。米Amazon Web Services(AWS)、米Microsoft、米Googleのビッグスリーは、インフラ、各種サービス、価格特典を用意して、スケーラビリティの高いグローバルパブリッククラウドサービスをサポートしている。この3社は徹底した価格競争を繰り広げており、2015年も収まりそうにない。
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「この価格競争には終わりが見えない。ディスク、メモリ、プロセッサのコストが極限まで下がり、ムーアの法則が通用しなくなるまで続くだろう」と米IDCで欧州ソフトウェアおよびサービスの調査部長を務めるアナリスト、デビッド・ブラッドショー氏は語る。
2014年3月のGoogleの発表から本格的な競争が始まった。同社のIaaSプラットフォーム「Google Compute Engine」の価格を一律32%引き下げるとともに、ストレージの価格を平均68%値下げし、長期間仮想マシンを使用すると自動的に最大53%まで割引を提供するというものだ。その翌日、AWSが対抗するように7〜40%の値下げを発表し、3月末にはMicrosoftが追随して、コンピューティングサービスを35%、ストレージを65%値下げすると発表した。
最近、ビッグスリーはさらなる値下げを断行した。Googleは2014年10月にGoogle Compute Engineを一律10%再値下げ。続く2014年11月には永続ディスクなどの特定サービスをさらに最大79%値下げした。
Microsoftも2014年10月に「Microsoft Azure」の各種サービスの価格を下げている。AWSは2014年12月初頭にリザーブドインスタンスの価格体系を「全前払い」「一部前払い」「前払いなし」の3種類に簡素化し、1〜3年分の使用料金を前払いする顧客に対して30〜75%の割引を提供することにした。
CFOにとって魅力的なAWSの価格体系
AWSのリザーブドインスタンスの価格体系は、Googleの長期利用者に対する割引の自動適用ポリシーほど分かりやすくはない。だが、米451 Researchのデジタル経済学上級アナリスト、オーウェン・ロジャース氏によると、AWSの価格体系はかなりシンプルになっており、CFOには旧体系よりも魅力的に感じられるという。
「リザーブドインスタンスを一定期間使用することが確実なら、かなりコストを節約できる上、可用性が保証される。これは有意義な投資になるだろう」と同氏は話す。
米Synergy Research Groupによる最新の統計では、AWSのシェアがMicrosoftとGoogleを合わせたシェアのほぼ2倍になることが明らかにされた。このようにIaaS市場で抜きん出たシェアを獲得しているAWSは、少なくとも今のところ、挑んでくる企業と同じようなコスト引き下げを行ってライバル企業を追い詰める必要はない。
AWSはクラウドサービスの草分けとしての大きな優位性を持っており、魅力的な機能とサービスの開発と強化を続けている。
一方、市場2位のMicrosoftは、CEOサトヤ・ナデラ氏のクラウド重視戦略によって2014年第2四半期のIaaSビジネスは164%の成長率を達成した。これに対してAWSの成長率は49%、Googleは47%だった。
Googleは2社に後れを取っていたが、2014年の価格イノベーションで市場を揺るがしたのは間違いない。IT業界最強プロバイダーのGoogleがクラウドの提供においてさらに有力な地位へと駆け上るこの出来事を意識しない者はほとんどいなかっただろう。この市場がかつてない速さで巨大化しているのだからなおさらだ。
クラウドのコスト削減効果はアプリケーションが左右
IDCのブラッドショー氏は次のように話す。「これらのプロバイダーのいずれかが勝つと考えたことはない。3社ともサービスを提供できるだけの十分なリソースを用意できるからだ。忘れてはならないのは、データ量が増加し続けていることだ。IoTなどのテクノロジーの進化により、収集されるデータ量はさらに増える。そして、そのデータはどこかに保存して処理しなければならない」
だが、451 Researchの調査から予想外の結果が出た。
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