業務用ツールを与えてくれない会社にいら立つ従業員:Computer Weekly製品導入ガイド
組織の求める物が何であれ、それを実現するために必要な技術がなければ従業員のいら立ちは募る。
企業は依然として従業員にPCを支給している。サーバでホスティングされた仮想デスクトップに接続するシンクライアントを支給する企業もある。これは一般的に仮想デスクトップインフラ(VDI)と呼ばれ、全員に同じツールのセットが提供される。
PCやタブレットやスマートフォンは道具箱のようなもので、アプリケーションはそれぞれ特定の用途を持った道具のようなものといえる。
北米と欧州の情報ワーカーのうち、成功のために何が必要かをIT部門が完全に理解してくれていると答えた割合はわずか15%にすぎない。残る85%には溝がある。その溝が大きいほど、従業員がどうやって仕事をこなすか模索するのにかかる時間が長くなる可能性がある。
心理学でいう「自発的な努力」は、切り抜けるために最低限の努力しかしないことと、最大限の努力をすることとの違いを指す。必要な道具を提供しなかったり、利用しにくい状態にすれば、単調な仕事のために時間を浪費しなければならないことに対して従業員が怒りを感じ、そのプロジェクトはそれほど重要でないという考え方が生まれる。
結果として、もっと頑張ろうという従業員の意欲は薄れる。大手銀行で、大人数で構成されたソフトウェアエンジニアチームが、コードのメンテナンスのために閉ざされたVDI環境しか使えない状況を想定してほしい。使えるのは雇用主に与えられたツールのみ。だが、自分たちの生産性を向上させられる他のツールがあることを知っている。この環境の人工的な制約は、問題に対する革新的なソリューションの選択肢を狭める。
顧客に価値を届ける
顧客に価値を届ける上で最善の立場にいる従業員にとって、選択の余地はさらに少ない。HCL TechnologiesのCEOで『Employees first, customers second: turning conventional management upside down, observes』(従業員第1、顧客は第2:従来型の経営の逆転と観察)の著書があるビニート・ナヤル氏は言う。「真の価値は顧客と従業員の間のインタフェースの中に作り出される。やる気のある従業員と信頼できる管理職の組み合わせを通じてこそ、企業は自らのため、顧客のため、そして双方にかかわる個人のために素晴らしい価値を創出できる」
ITプロフェッショナルにとってこれは、技術に関する決定とポリシーが、従業員の価値を届ける能力において重要な役割を果たすことを意味する。例えば、もし選択肢を与えられれば、自動車整備士はインターネットフォーラムやソーシャルメディアを使って問題の診断にかかる時間を短縮し、顧客の時間と出費の節約を支援できる。
だが従業員が障害を回避する手段を自分たちで探す羽目になった場合、またはIT管理職に与えられた範囲外の選択肢の方がニーズにかなっている場合、従業員には適切なリスク判定ができないことから、情報をないがしろにしてしまう。
あるソフトウェア企業は、従業員が見込み客に対して自社のソフトウェアのデモを行う目的でライセンスのない商用データベースソフトウェア製品を使っていたことから、損害賠償訴訟を起こされた。第一線のチームが会社にライセンスを支給してほしいと求めたにもかかわらず、その申請は却下された。それでも自分たちの製品の効果的なデモのためにはそのソフトウェアが必要だった。
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