IT部門を成長の原動力に進化させる「たった1つの工夫」:変化に強いシステム作りの“落とし穴”、その正体とは?(2/3 ページ)
IT部門は最新技術を活用し、業務環境の改善や顧客満足の創出などでビジネスへ貢献することが求められている。だが期待に応えようとするIT部門が見落としがちな“落とし穴”も存在する。その正体と対策を示す。
ITの役割の変化と「New IP」
IT部門の主要な役割が基幹系業務システムの運用だったころ、システムは数年に一度の更新の時点で“完成”しており、次の更新時期を迎えるまで安定的に稼働し続けることが最も重要だった。だが現在、こうした“長期安定型システム”の比重は相対的に減少しており、新たなシステムの開発に積極的に取り組むことが求められている。ビジネスの場がインターネットに拡大したことから、ITがビジネスの成否を直接左右する場面が増大したためだ。
例えば、ビッグデータを活用した潜在顧客の発見/掘り起こし、新たなコミュニケーションツールを活用したワンツーワンマーケティングの実施など、ITの活用によって急成長を遂げる企業の例も多数報告されている。さらには、アプリケーションやサービスに応じて最適なITインフラを選択すること、いわゆるハイブリッドクラウドが実現されれば、業務全体の効率向上を図り、スピード経営につなげることもできる。いわば、これまでは“後方支援部隊”だったIT部門が、突如成長の原動力としての役割を期待されるといった状況になってきているのである。
こうした経営部門からの新たな期待に応えるには、IT部門自身も変化する必要がある。何より、従来は安定運用を主眼に変わらないことを前提に構築されてきたITインフラを、新たな機能やアプリケーションを素早く投入し、市場の変化に対応して柔軟に変化できる新世代のインフラに変更する必要がある。
サーバやストレージは、仮想化技術の発展によって新世代の柔軟性をいち早く獲得してきた。それと同様に、ネットワークにも従来とはレベルの異なる柔軟性が求められる。現在のビジネス要求に対処できる、こうした新しい特長を備えたネットワークを、米国などでは端的に「New IP」と呼び始めている(図1)。
連続的な革新を可能にするNew IP
New IPは、従来のIPネットワークに変わる新時代のIPネットワークという意味を込めた名称だ。ただし、既存のネットワークと隔絶した存在ではなく、むしろ連続性を保ったまま、段階的に実現できるものである。
具体的には、New IPでは従来の固定的/静的で柔軟性に欠けた構成を、可変的/動的に追加、導入、変更が可能となるように、ネットワーク仮想化やSoftware-Defined Network(SDN)、ネットワーク機能仮想化(NFV)といった最新の技術を取り入れる。もちろん重要なのは、既存のネットワークを捨てて新しいものに全面的に更新、といったコストの掛かる切り替えアプローチではなく、必要に応じて段階的に導入していくことが可能であることだ。New IPを実現するこれらの技術は、基本的には従来の物理ネットワークと組み合わせても効果が得られるものでなければならない。
一方、New IPの土台となる新しい物理ネットワークには、高度な自律性や運用自動化をハードウェアレベルでサポートした「イーサネットファブリック」を導入するのが基本となる。さまざまな選択肢を組み合わせ、現状を踏まえて最適な形での導入プロセスを個々に工夫できる余地が大きいので、無理のない形での移行が可能になるはずだ。
New IPへの進化を実現するためには、3つのコンポーネントで考える必要がある(図2)
。まず重要となるのが、シンプルで柔軟な物理ネットワークを構築すること。New IPのメリットを最大限享受するためにも、まずは全ての土台となる物理基盤を「つなぐだけ」のシンプルさと信頼性に優れたイーサネットファブリックで構築することが基本となる。
そして、物理層の上に仮想化されたサービスレイヤーとしてネットワーク機能の仮想化(NFV)を実装することで、従来のハードウェアに依存したネットワークから脱却し、柔軟で自由自在なネットワークへと進化のステップを進めることが可能になる。
その上でネットワークを抽象化し、データセンター全体の統合管理を可能にするSDN/SDDC(Software-Defined Data Center)の世界を実現するためには、「OpenDaylight」などのSDNコントローラー、クラウド環境全体のオーケストレーションを制御する「OpenStack」「VMware」などと密に連携可能なソリューションを選択することも重要になる。これをデータセンター全体で実現することで、真の意味でNew IPのメリットを享受できるようになるといえるだろう。
もちろん、こうしたNew IPのメリットは特定の製品に依存するのではなく、エコシステムの観点を重要視したアプローチが重要である点も、従来型ネットワークとは異なるところだ。単一ベンダーで固められたソリューションによるベンダーロックインを回避する一方で、検証済みの連係ソリューションを自社の環境、要件に合わせて最適に組み合わせて選択できるようになる。例えば、ベンダーの都合によるアップグレードや機器の入替えに煩わされることなく、ユーザー企業が主導権を持って自社のITインフラを戦略的に進化させていくことが可能になる。もちろん、こうしたオープン性はコストを下げることにもつながり、「高機能な最新アーキテクチャを導入したことでIT部門の運用管理負担は軽減されたが、投資額がかさんだ結果、経営的な観点からの得失評価は微妙」といったありがちな落とし穴を回避できる。
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提供:ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部/掲載内容有効期限:2015年10月29日
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