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有償/無償? 「身の丈に合った」データベース製品の選定方法とは無駄なコストや手間を掛けないために

2015年7月に@IT主催勉強会「『身の丈』『運用コスト』から考えるこれからのデータベース選定」が開催された。無駄なコストや手間が掛けず、かつ要件を満たすデータベースを選ぶコツについて紹介する。

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 2015年7月14日、@IT編集部主催の勉強会「『身の丈』『運用コスト』から考えるこれからのデータベース選定」が開催された。商用データベースは高機能化が進み、一方でOSSデータベースはエンタープライズ対応を強化している。そうした中、機能やコスト面などが自社の「身の丈に合った」データベース製品を選ぶのは、ますます困難になってきている。

 本勉強会では、こうした課題に対して、識者やベンダーによるセッション、さらにパネルディスカッションなどを通じて、無駄なコストや手間が掛からず、かつ要件をきちんと満たすデータベースを選ぶコツについて考察する。

身の丈に合ったデータベース製品を選ぶに当たり留意すべき点とは?


基調講演登壇者の初音 玲氏

 基調講演には、@ITの人気連載「VBでOracle Database開発入門」の筆者で、日本マイクロソフトの「Microsoft SQL Server」や日本オラクルの「Oracle Database」などのデータベース製品を使ったシステム開発に多数従事し、経験豊富な初音 玲氏が登壇。「“現場プロの視点”『要件』『予算』『運用』軸で考えるデータベース選定」と題したセッションで講演した。初音氏は、企業が自社システムに適したデータベースを選定する際には、まず「機能+性能」と「トータルコスト」の2つの軸で要件を整理し、それに合致したデータベース製品を選ぶべきだと説く。

 当然、適切な機能を持つ製品を、適切なコストで導入・運用できればベストだが、この両者のバランスを完全に取るのは極めて難しい。そこで同氏は、

  • データ容量の見積もり
  • 同時利用者の見積もり
  • 開発ツールとの親和性
  • 運用要員・スキルとの親和性

など、身の丈に合ったデータベース製品を選ぶ際のチェックポイント(図1)を幾つか示す。


図1:データベース製品を選ぶ際のチェックポイント《クリックで拡大》

 コスト削減のために選ばれることが多いOSS製品に関しては、不具合や脆弱性が発覚した場合のサポートや、データの互換性などの問題で当初は見えない「隠れコスト」が掛かるリスクをあらかじめ考慮しておく必要があると説く。

 一方、オラクルの「Oracle Database 12c」に代表される最新の商用データベース製品は、コストは掛かるものの、多くの製品が運用の省力化や、複数データベースを集約した際のセキュリティ機能などに力を入れる傾向にある。

 そのため、単純に商用製品よりOSSの方が安いとも言い切れない。こうした点も考慮して、OSS製品を選ぶのか、あるいは商用製品を選ぶべきなのか慎重に考えるべきだと同氏は述べる。

 「まずは自社の要件を、単純なマルバツ表だけでなく、自社の今後のビジネスプランや成長曲線を考慮して、将来のデータ容量や利用者数、ハードウェアリソースの増加率を時系列に沿って見積もる必要がある。その上で、OSS製品や商用製品が持つそれぞれの特質を掛け合わせることで、初めてきちんとした選定基準が見えてくるだろう」(初音氏)

多くの中堅・中小規模システム開発やパッケージ開発の身の丈に合うDB製品「PSQL」


エージーテックの林 誠之氏

 続いて、エージーテック 営業本部 営業部 セールスマネジャー 林 誠之氏が登壇し、「データベース選定の新しい選択肢:専任担当者不要、手間いらずのデータベースとは?」と題した講演で、同社のデータベース製品「PSQL」の紹介を行った。

 「PSQLは、あまり世間では広く知られていないデータベース製品だが、実は30年の歴史を持ち、国内でも多くの中堅・中小規模のソフトウェアパッケージ製品の中に組み込まれるデータベースエンジンとして広く採用されている」。林氏はこう述べ、PSQLの国内外における長い実績を強調する。

 同製品はもともと、1982年に誕生した米SoftCraftの「Btrieve」というデータベース製品が発祥。後に、1990年に当時市場を席巻した米NovellのネットワークOS製品「NetWare」のデータベースエンジンに採用され、世界中で使われた。主に中堅・中小規模向けの財務システム、小売りシステム、販売店管理システム、医療システムなどさまざまな業界向けのパッケージソフトウェアのデータベースエンジンに採用されている。

 これだけ長い間、多くのユーザーに使われ続けた理由の1つは、「その時代ごとのユーザーニーズに常に即応して進化を続けてきたことにある」と林氏は説明する。例えば、もともと備えていたネイティブAPIだけでなく、SQLのエンジンを備えたこと、またその時々の最新OSに常に対応してきたことなどが一例だ。

 またPSQLの最大の特長として、「下位互換性の高さ」が挙げられる。製品がバージョンアップしても、APIやインタフェースの仕様は一切変わっていないため、旧バージョンで使用していたアプリケーションやデータがそのまま使える(図2)。事実、1995年に構築したデータベースのファイルを今に至るまで使い続けているユーザーもいるという。


図2:PSQLの互換性について《クリックで拡大》

 自動チューニング機能をはじめとした、データベース運用を省力化できる仕組みも多数備える。データベースの運用を止めずにオンラインでデフラグ処理をできる他、データバックアップはデータベースファイルをそのままコピーするだけで済む。そのため、バックアップ運用も極めてシンプルかつ柔軟に行うことができる。

 このように極めてシンプルな運用性が特長のPSQLは「Zero-DBA」、つまりデータベース管理者要らずをコンセプトに掲げる。加えて、エージーテックの技術サポートサービスは全て無償で提供され、メンテナンス費も不要なため、「製品購入後にデータベースに掛かる費用はほぼ発生しない」(林氏)という。加えて、開発用ライセンスも無償で提供され、本番用ライセンスもシンプルなライセンス体系で、同時接続ユーザー数10人のものなら23万7000円(税別)からとかなり低価格で入手可能になっている。

 「PSQLは、中堅・中小規模のシステム開発やパッケージ開発に必要な機能を十分備えた上で、余計な機能にお金を払うことなく、まさに身の丈に合ったデータベース製品ということができると思う。PSQLのように、あまり一般には知られていない製品についても十分調べていただき、本当に自社のニーズにマッチした製品を選ぶことをお勧めしたい」(林氏)

参加者から寄せられたデータベース選定にまつわる課題の数々


パネルディスカッションで質問に答える初音氏と林氏

 最後に初音氏、林氏を交えたパネルディスカッション「『データベース選定・運用』にまつわる疑問全てを聞こう、答えよう」が行われ、参加者から寄せられた質問に対して両氏が忌憚(きたん)のない見解を述べた。以降で、その代表的なものを幾つか紹介しよう。

 「身の丈に合ったクラウド利用はアリ? ナシ?」という質問に対して初音氏は、「素早くシステムを立ち上げたり、将来的にキャパシティーが大きく増減したりすることが予想されるシステムの場合は、クラウドデータベースを使うのも有効。しかし5年、10年と使い続け、キャパシティーも計画的に管理するようなシステムの場合は、コスト的にクラウドの方が逆に高くついてしまう。そのため、こうしたシステムではオンプレミスの方が向いているといえる」と述べる。

 また林氏によれば、「PSQLは、オンプレミスはもちろん、クラウド環境上での利用もサポートされている。そのため、パッケージ製品をクラウド環境上に設置して、SaaSサービスとして展開するようなビジネスモデルも素早く展開できる」という。

 また「有償/無償? 信頼性とサポートの『手間』『コスト』はどう考える?」という質問に対し、初音氏は無償のOSS製品と有償の商用製品を対比させながら、「有償製品と無償製品の間に、もはや信頼性の差はほとんどない。最大の違いは、いざ問題が起こったときに開発元ベンダーが責任を持って対処してくれるかどうかという点で、ここをどう捉えるかによってOSS製品に対する考え方が変わってくる」とコメントした。

 「サポート切れにまつわる『身の丈』を越えた対処コストについて」という質問については、初音氏は「トータルでのバージョンアップコストを抑えるには、システムを長期間塩漬けにするのではなく、定期的に、少なくとも1年ごとにはデータベースソフトウェアを最新の状態にメンテナンスしておくべき」と説く。一方、林氏は「PSQLは、20年前に構築したデータベースのファイルがそのまま最新バージョンでも動くほど、下位互換性が極めて高い。そのため、サポート切れにまつわるコストは最小化できるはず」と、この点におけるPSQLの強みを強調した。


 煩雑するデータベース市場の中、データベース選定のこれからの勘所を本イベントで紹介した。今まではコストを優先してOSS製品、機能や運用の省力化を優先して商用データベース製品を選んでいたかもしれない。だが、これからの現場は「機能+性能」と「トータルコスト」の2要件を満たした身の丈にあったデータベースの選定が重要になるだろう。それに伴い、選定の基準が変わっていくかもしれない。

 百聞は一見にしかずではないが、PSQLは評価版の用意もあるようなので、試してみてはいかがだろうか。

中堅・中小企業のための賢いデータベース選定

データベース製品で「Oracle Database」や「Microsoft SQL Server」のどちらかを選択するケースは多いかもしれない。だが、中堅中小企業にとっては、こうしたメジャーで多機能な製品が必ずしも最適とは限らない。性能はもちろんのこと、コストメリットを意識した製品選定が欠かせない。


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