被害を未然に防ぐデータサイエンティストの資質
膨大な詐欺行為と戦うPayPal、決め手はオープンソースと“好奇心”
PayPalは、高度な予測データ分析を使用してユーザーを不正行為から保護し、PayPalのブランドを維持している。常に進化することがPayPal成功の鍵を握っている。
不正ユーザーは、善良なユーザーをだますための新しい方法を絶えず見つけ出している。米PayPalは予測データ分析を使用して、これに対抗している。
ほとんどのユーザーが一般的な不正行為に慣れている。例えば、知らない人物から大量の資金の分配を約束する電子メールが届く。多くの場合に使われるのは、PayPalのような支払い処理サービスだ。
PayPalのグローバルリスクサイエンス部門のシニアディレクターであるフイ・ワン氏は、不正ユーザーから定期的に攻撃を受けると業務が困難になると語る。同氏の任務は、不正な取引が実行される前に停止させることだ。PayPalは多くの利害関係を抱えている。サービスが不正に使用されれば、ユーザーからの信頼が損なわれ、PayPalのブランドに傷が付く。最終的には、ユーザーの減少につながることにもなりかねない。
データ分析を利用した不正行為の予測
不正行為を防ぐため、ワン氏と彼女のチームは予測データ分析を使用して潜在的な不正取引を特定する作業に乗り出した。進化するという脅威の性質を考えれば、同氏の業務が落ち着くことはない。「私たちの抱える問題が非常に動的であるという意味では、PayPalにとって私たちはユニークな存在だ」と同氏は言う。
潜在的な不正行為を特定するため、ワン氏のチームは過去の支払いデータを分析し、不正行為の未遂を示唆する特徴を割り出している。リクエストするユーザーが使用しているのはどのようなデバイスか、リクエストの発信元の国はどこか、ユーザーのPayPalのプロファイルの詳細は何かなど、あらゆることを不正行為と関連付けることが可能だ。チームはこのデータを使用して、各取引に付随する潜在的な不正行為の兆候を評価する機械学習アルゴリズムを構築している。やがて、機械学習アルゴリズムは学習を積み重ね、予測の精度を増していく。
PayPalユーザーに対する脅威は日々進化することから、予測データ分析に対する学習アプローチはワン氏のリスクモデリングチームの課題となっていた。だが、同氏によると、このアプローチが実装可能になったのは2011年ごろからだという。それ以前の計算能力では、このような大容量の過去データに対して複雑なアルゴリズムを実行できなかったのだ。
しかし2011年以降、特にオープンソースコミュニティーから多くの新しいテクノロジーが登場し、ワン氏のチームは従来のリスクモデリングの壁を越えることができた。データ管理にTeradataとOracleの製品を使用し、分析にはSAS Instituteの製品を使用している。だが、「Apache Hadoop」や「Apache Spark」などのオープンソースツールへの依存度は高まっている。オープンソースのリソースは、サポート対象のツールの数を柔軟に増やし、データサイエンティストは最も快適なツールで作業する状況を可能にしたと同氏は指摘する。
「市販のソフトウェアが私たちのニーズを完全に満たさないことは何度もあったが、そういった場合にオープンソースが非常に重宝した。私たちはオープンソースを使用して、あらゆる調整を自分たちで行うことができる。その結果、データサイエンティストの力を解き放てるようになった」(ワン氏)
データサイエンティストを見極めるポイントを把握する
ワン氏のもう1つの功績は、適切なデータサイエンティストとエンジニアを探し出したことだ。新しいチームメンバーを雇用するとき、同氏は特定の技術スキルよりも、専門知識や好奇心など重視した。テクノロジーは変化するが、優秀なエンジニアであれば新しいプログラミング言語を習得できるはずだと同氏は述べる。
このアプローチはスキルの詳細一覧を集めるよりも難しい。履歴書に好奇心を記載する欄はない。だが、確認するポイントを知ることで雇用戦略はうまくいくようになると同氏は語る。
「私たちは、多くの新卒採用で成功を収めてきた。彼らは技術面では最新かつ優れたものを持っており、よりオープンマインドであることが分かっている」(ワン氏)
PayPalが不正ユーザーに対抗するために役立つものとして同氏が期待するのが、このオープンマインドである。PayPalのテクノロジースタックが成熟し、より高度な予測分析と機械学習をサポートするようになっても、不正ユーザーも同じ技術ツールを利用できるようになる。それが同氏にとって、継続的な改善が必須となる理由だ。
「私たちは常に一歩先を行くために、絶えず進化していかなければならない」とワン氏は語る。
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