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業績を上げるための経費管理Computer Weekly製品ガイド

経費管理はITを活用して2桁台の経費を削減できる分野の1つだ。

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 英国企業は年間約100億ポンドの経費申請を処理しているが、ITを使ってその出費を管理している企業は驚くほど少ない。ほとんどの経費管理サプライヤーによると、大企業および中堅企業の40〜70%はいまだにExcelや手書きの書類を前提としたシステムを使って経費を計算している。この割合は2014年の80%に比べれば減少したものの、それでもまだ異常に高い。

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 セキュリティ企業Oktaの最新調査によれば、経費管理(EM)アプリケーションの採用に関して英国は米国に大きく後れを取っており、米国の43%に対して英国は16%にすぎない。EMシステムを導入し、特に従来型のExcelや紙ベースのシステムと入れ替えれば25%前後の利益が見込めることを考えると、衝撃はさらに大きい。

クラウドが取り去る参入障壁

 ではなぜ企業は経費管理ツールを導入しないのか。その質問に対する答えとして、かつては

  • 多様なバックエンドシステムとの統合
  • オンプレミスシステムの導入、構築、運用に掛かるコストと時間
  • 利用できる製品の柔軟性の欠如や使いにくさ
  • 人事や経理部門を中心とする社内の惰性

などが挙がっていた。

 だがクラウドベースEMの登場で、主な技術的、コスト的な参入障壁の全てとは言わないまでも、多くが今や過去のものとなった。KDS、Software Europe、Concur Technologies、Coupa Softwareなどのクラウドネイティブソリューションは、かつてのERPや会計モジュールと違って、直ちに投資回収(ROI)が実現し、新機能が加わることで継続的な投資回収が見込める。

 業界は最初の大きな課題の1つとしてEMとバックエンドシステムの統合に取り組み、この分野に重点を置くサプライヤーの大半は、主要ERPおよび会計アプリケーションと自社のシステムとの連携に力を入れている。

 多くのEMビジネスはさらにその先を行き、今やクレジットカードや法人カードの発行業者、Uberなどのオンライン旅行サービス、従来のホテルチェーンや航空会社といった多様な交通および決済関連のエコシステムとの統合を進めている。

既製製品との統合

 確立された大手の製品を選ぶメリットの1つは、既製製品と連携させて幅広いサードパーティーソースのデータを利用できる点にある。SAP傘下のConcurが運営するサードパーティープロバイダーのアプリストアでは、経費管理システムとのコネクターを何百種類も提供している。

 小規模サプライヤーは、動きは速いかもしれないが統合の選択肢が少ないために初期の開発プロセスに時間がかかったり問題が生じたりすることもある。KDSは一般的なEMプロジェクトを開発して始動させるまでに約2カ月を要するとしているが、従業員にモバイルアプリの利用を奨励してデータ取得を始めてもらえば、バックエンドシステムを会社のERPや会計システムと連携させる作業が完了しないうちから、直ちにコスト削減や効率性の向上が実現する。

 クレジットカードや法人カード発行会社との連携は、EMシステムを導入しようとする企業にとって必須要件の筆頭に置く必要がある。カードシステムと連動させれば、会社は不正支出に対する第2の防衛線を張ることができる。領収書は購入した品目と正確に照らし合わせて故意による二重支出を防止できる。会社が自社の経済状態を正確に把握することも可能になる。カード決済の記録は、領収書が届く何日も何週間も何カ月も前にシステムに表示される。

企業にコンシューマー型エクスペリエンスを

 使いやすさはEM市場における重点開発分野の1つであり、多くのサプライヤーはできるだけ少ないクリック数でユーザーが経費申請を提出し、管理者が報告を見て申請を許可できることを目指している。

 この「ゼロへの競争」の一環として、EM市場の主要プラットフォームはデスクトップからモバイル端末への移行が進む。Software Europeのモバイルアプリケーションは100万人以上のユーザーに利用され、そうしたアプリを積極活用してもらうために相当量の調査研究をユーザーインタフェースに注ぐ。ほとんどのユーザーインタフェースは、従来の法人向けアプリのように大量のクリックを要する設計ではなく、コンシューマー向けアプリのような直感的に使える設計を採用し、端末に内蔵された多くの機能を使って出費データを取得できるようにしている。

 KDSのダイアリーシステムは、従業員のOutlookカレンダーを読み込んで会議の情報をシステムに自動入力する。例えばStarbucksで午後4時に頼んだ2杯のコーヒーは、4〜5時の特定顧客とのミーティングに一致するため、代金はその顧客やプロジェクトに割り振られる。

スマート化するモバイル端末の経費キャプチャー

 バックエンドクラウドシステムと補完・連動するモバイルアプリへの移行は、EMを検討する際に目を向けるべき新たな基準を作り出した。

 非常にベーシックなレベルで企業が期待すべき機能には、モバイル端末のカメラを使ってレシートを撮影できる機能や、モバイルアプリを使って経費申請の細目を入力できる機能がある。さらに高度なインタフェースでは、OCRやバーコードリーダを使ってレシートから直接アプリケーションに細目を入力できる。

 最も高度なものでは、音声認識、カレンダーの入力内容、GPSといった端末のセンサーや機能の全てを経費データの入力に利用する。例えばユーザーがスイスに行ったとすると、レシートは英ポンドではなくスイスフランになる。会社のクレジットカードで最近同じ額の購入があったことを検出し、ユーザーに同じ出費かどうかを確認して、この2つの項目を統合する。アプリはこれを事前に手配していた出張経費に計上し、そのレシートをプロジェクトや顧客に割り当てる。

 データのキャプチャーと同時に、モバイル端末は今や管理職が移動中に経費を参照して承認する現実的な手段になっている。モバイルアプリはインターネットに接続されているときにデータにアクセスできるだけでなく、データをローカルにキャッシュして高度3万フィートの上空にいても経費を承認できる。

隠れたコスト削減

 EMには多くの目に見えるコスト削減や時間短縮のメリットがある一方で、目に見えない節減もある。Software Europeのある顧客は、経費が数週間や数カ月ではなく数日で戻ってくるという事実にスポットを当ててEMを人材募集に活用している。レシートをExcelのスプレッドシートに入力する作業に要する何時間もの記録されない勤務時間を減らせれば、生産性や従業員の会社への愛着という点で付加的なメリットもある。

 クレジットカードの経費処理プロセスの改善という点でもメリットがある。Software Europeのある顧客は、EMシステムを導入する前は従業員が使う会社のカードで割り当てのない経費支出が100万ポンドを超えていた。会社のカードに内在する危険の1つは、従業員には節約しようと思う動機がほとんどないことにある。なぜなら従業員は自分の財布から現金を払う必要がないためだ。会社のカードの経費が解決するまで個人の経費を払い戻さないポリシーを徹底させることによって、その顧客はカードの負債残高を大幅に減らすことができた。

 管理職が申請を却下するのではなく、出費に関する会社のポリシーをシステムが自動的に管理するEMシステムを利用すれば、さらなるコスト削減を実現できる。

 コンプライアンスという単語は通常、追加的コストや割り増し労働に関連して使われる。だがEMシステムでは、特に付加価値税(VAT)の払い戻しに関して、企業のコンプライアンスを支援できる。経費に掛かるVATの約60%は申請されない。レシートの入力を自動化することで企業はVATの回収を増やすことができ、年末のP11Dで提出した経費や手当ての申告内容との相違を理由に英歳入関税庁(HMRC)から罰金を命じられるリスクを低減できる。

サードパーティーシステム

 さらに先進的なEMシステムは社内経費ポリシーの徹底を支援するだけでなく、サードパーティーシステムとも連携して従業員のコンプライアンスを徹底できる。例えばSoftware Europeのインタフェースは英運転免許庁(DVLA)と連携して、ユーザーが運転、申請している車両の正しい免許を持っていることを証明できる。

 リアルタイムのレポートも、EMシステムで目を向けるべき重要な機能だ。会社のカードの正確な支払残高、出費の多い上位10人、未払いの付加価値税、予想外のコストあるいは不正取引について会計管理者が把握できる速報レポートは、今や全て標準装備となっている。また、顧客やプロジェクト、従業員、経費の種類といった項目ごとに経費を掘り下げてコストを発生させている要因を調べる機能も標準となりつつある。そうしたレポートは全てモバイル端末(少なくともタブレット)での参照やアクセスができる。

注目すべきトレンド

 バイヤーが注目すべき昨今のトレンドとして、スマートウォッチのようなウェアラブル端末との連携や、そうした端末を使ってデータの入力や行動追跡ができる機能、音声入力、請求書と経費を組み合わせた真のコスト算定などが挙げられる。例えば展示会ではシステムを通じ、スタンドのレンタル・設営・宣伝費をスタンド設営に当たる人員の交通費、食費、宿泊費と照合する。

 冒頭に述べた通り、EMは企業がITシステム、特にクラウドベース製品やデータ取得用の使いやすいモバイルアプリケーションの導入を通じて直ちに真のメリットを実現できる数少ない分野の1つといえる。

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