「クラウド間の容易なシステム移行」は幻想にすぎない:マルチクラウド神話を打ち砕く(前編)
クラウドプロバイダーは、クラウド間でシステム(ワークロード)を容易に移行できるという。だが、現実にはそう甘くない。
“マルチクラウド”という言葉には、企業がITをプロビジョニングする際に複数のクラウドプロバイダーを利用するだろうというIT業界の長年の見方が表れている。だが、オンプレミスのIT環境もすぐには消えそうもない。
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クラウド間でワークロードを移動させることがプロバイダーの触れ込みほど簡単ではないことに企業が気付いたときから、マルチクラウドモデルの問題が表面化し始める。
マルチクラウドの定義
マルチクラウドという言葉がIT用語として使われ始めたのはここ2〜3年のことだ。簡単に言ってしまえば、多くの企業が人事や電子メールなどの用途で既に1つ以上のSaaSアプリケーションを使用していることに加え、アプリケーション開発にPaaS、仮想マシンでのワークロード実行に恐らく1つ以上のIaaSを利用している現実を反映している。
多くの組織は、既存のワークロードをオンプレミスからクラウドに移行する「リフト&シフト」手法を採用し、初期段階からIaaSを使い始めることになる。このとき、クラウドでサーバを構成するのではなく、サーバを仮想マシンに変換することが多い。つまり、オンプレミス環境と同じアーキテクチャをクラウドに複製するのだ。
多くの組織は、偶然であれ意図的であれ、自社のワークロードを複数のIaaSに配置することになる。これには、データ主権の確保、ロックイン対策、冗長性の実現などさまざま理由がある。
ハイブリッドクラウド製品やサービスを売り込もうとするプロバイダーは、このように複数のクラウドプラットフォームを利用する状況に問題はないという。より魅力的なサービスを提供するプロバイダーや、組織に必要な新しい機能やサービスをリリースするプロバイダーがあれば、そちらを利用すればよい。ワークロードはクラウド間で簡単に移動できるというのがその根拠だ。
だが、ワークロードの移行はそれほど簡単だろうか。現在利用しているクラウドは自社にとって最適ではないと結論付けるべきだろうか。
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