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プロセスマイニングからRPAへ、Siemensの成功事例Computer Weekly製品ガイド

Siemensは、プロセスマイニングを採用したことでサプライヤーへの支払いや物流の管理、注文から現金化までのプロセス運営における非効率性を洗い出すことができた。

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 製造業大手のSiemensは、一元化したデータレイクを創設した当初は会社がこれほどの恩恵を受けるとは想像していなかった。分散していたERPや会計システムのデータを1カ所に集めることにしたのは、コンプライアンスが主な理由だった。そのために2008年から「Oracle Database」、2012年からは「SAP HANA」を使っていた。

 しかし2014年には、リスク回避や会計報告を支援する以上に、より多くのことがデータでできると認識し始める。同社は「プロセスマイニング」と呼ばれる技術を使って、サプライヤーへの支払いや物流の管理、注文から現金化までのプロセス運営における非効率性を洗い出し、数千万ユーロのコスト削減を実現した。

RPAの基盤

 アナリストによると、Siemensの成功は主に、ソフトウェアプロバイダーCelonisのツールを使ったことによるものだという。これによってロボットプロセス自動化(RPA)の基盤が確立され、同技術の応用を拡大する道が開けた。

 Siemens ITのプロセスマイニング責任者、ラーズ・ラインケマイアー氏は言う。「データレイクのためのグローバルインフラ構築は大掛かりな投資だった。同時に、主にコンプライアンスにとって良い投資でもあった。今ではさらに多くのことにこれを活用しており、大きな見返りを得ている」

 「プロセスマイニング用Celonisの追加コストもうまく使われており、われわれが複雑性に関する理解を深めて、ビジネスプロセスを設計・管理する一助となっている。だがそれは全て、このインフラを構築して活用していることに尽きる」

 SiemensがCelonisの分析・可視化ツールを使い始めたのは、サプライヤーへの支払いがどれだけ早くできているかを把握するためだった。一部のサプライヤーは早期の支払いに対する割引制度を設けているが、Siemensは支払いが遅れてそうした制度を活用できていないことがあった。

 その理由を調べるためには会計やERP、決済承認システムからデータを集める必要があった。Siemensは顧客の注文を受け付けてから代金が支払われるまでのプロセスにおける非効率性に対応するために、このプログラムを拡大した。

 SAP HANAのデータレイクは30TB以上に拡大し、60を超すERPと複数のエンタープライズアプリケーションからデータを引き出している。「これはユーザーから見るとシームレスに見える」とラインケマイアー氏は言う。「しかし情報は事業部を横断するさまざまなソースから来ている。われわれは全プロセスを通じたエンドツーエンドの可視化ができ、ユーザーはどこにボトルネックがあるかを見極める」

 課題は顧客から受け付けた注文を追跡し、支払いを受けるまでの全段階を網羅することにある。Siemensの受注数は年間数百万件に上る。注文を受けてから代金が支払われるまでには約70のプロセスが発生する。

 同社はCelonisのツールを使ってそうしたプロセスを組織全体で可視化してマッピングし、管理職レベルで非効率的なプロセスや過度の時間や労力がかかっている手作業のプロセスを洗い出す。

 「これは個々の注文全てについての詳しい情報に支えられている。このシステムは、何が起きているのか、どこが間違っているのかを掘り下げて理解するツールを提供してくれる。KPI向上の助けとなる指標を作成する一助にもなる。かつては経営者がもっとうまくやれると考えても、どこから手を付ければいいのか誰も分からないことがあった。だがこうしたツールで問題箇所を発見し、すぐに改善に着手することができる」(ラインケマイアー氏)

 プロセスマイニングの明らかな成功により、製造工場プロセスなど他のプロセスを分析したいという要望がラインケマイアー氏のチームに寄せられた。だが、2011年創業の比較的小さなソフトウェア会社であるCelonisの技術をそのプロジェクトの基盤とすることにはリスクがあった。

 「SAPのような企業であれば、有能なパートナーだと言うのはたやすい。しかしわれわれがCelonisと契約したとき、同社はまだ小さく、そのことがリスクだった。だがわれわれは、同社の経営陣や創業者は非常に力があると判断した。彼らはニーズへの対応に多大な労力を費やし、このプロジェクトとともに成長した」とラインケマイアー氏は話す。

 Siemensはビジネスプロセスの分析・マッピングから、Celonisツールの「Pi Conformance」および「Machine Learning」を使ったそのモデリングへと移行しつつある。その目的は、Siemensの実績から継続的に学習するスマートアルゴリズムに基づき、どの顧客の注文の到着が遅れそうかどうかを予測することにある。

 ラインケマイアー氏によると、事業部門は当初のプロセスマイニングの能力を目にして大きな感銘を受けている。だがプロジェクトの勢いを確実に持続させるためには、ITチームが「プロセスヒーロー」を特定する必要がある。

 「行動したいという欲求はあっても、事業部門で実行に移すのが難しいこともある。プロセスヒーローは、新技術を採用して、自分たちの責任分野でその普及を促進させる意欲がある。中には変化にあまり興味がない人や、片隅のほこりにスポットが当てられることを望まない人もいる。組織を揺さぶり、変化を起こし、ツールでプロセスを促進させる適切な人材を見つける必要がある」(ラインケマイアー氏)

 Celonisは、プロセスマイニングという新興分野のリーダーを自称する。同社は2011年、ミュンヘン工科大学の研究プロジェクトから誕生した。

 Celonisの事業開発担当シニアバイスプレジデント、レミー・ラザロビッチ氏によると、地元放送局のプロセスをシミュレーションしていたCelonisの創業者は、従業員がそれをどう形容するかではなく、プロセスがリアルタイムでどう動いているかに関する情報がもっと必要だと気付いた。そこでアプリケーションのデジタル軌跡を追跡し、プロセスがどう実行されているかを把握する作業に着手した。

大ブレーク

 次にCelonisは、データ専門家ではなくユーザーにビジネスプロセスを理解してもらう一助とするため、同社の分析ツールに可視化技術を構築した。大ブレークは2015年、SAPとのリセラー契約を獲得したことによって訪れた。CelonisはSAP、Oracle、Microsoft、Salesforce.comのビジネスアプリケーション用に、オンライントレーニングとソフトウェア、独創的なデータコネクターを提供している。

 ラザロビッチ氏は言う。「業務運営に関するインサイトは非常に短時間で引き出すことができる。それまでこうした情報を引き出すためには多大な時間を要していたか、達成は不可能だった。ユーザーは直感を確かめて、改善できる部分を見つけることができる。顧客はこのインサイトが全て、自分たちが保存していながらそれまで価値を引き出すことができていなかったデータに由来すると知って驚くこともある」

 「ユーザーは初めて可視化されたプロセスを見ると目を見張る。予想していなかったことばかりを目にして、『そんなはずはない。データに間違いがあるに違いない』と言う。だが現実には、データは決してうそをつかない。いったんデータを信用するようになり、業務の改善が期待できると判断するようになれば、それがさらに幅広いビジネスユーザーを説得する助けになる。問題があることを一部のユーザーが認識していても、誰にも信じてもらえず、プロセスを変更するよう説得するのが難しいこともある」

 事業部門は常に、自分たちのプロセスを理解しようと努めてきた。これは経営陣の承認を経なくても変更できるとGartnerの調査ディレクター、マーク・ケレマンズ氏は話す。「問題として、自分たちがやっている作業について3人に面接すると、3つの違った答えが出てくることがある。これは先入観や解釈と関係がある」。プロセスがどう実行されているかに関する会社の認識と、実際にそれがどう行われているかの間には、46%のギャップがあるという。

 プロセスマイニング技術市場で約70%を確保するCelonisは主導的存在に見えるが、ケレマンズ氏によれば、フィンランドのQPR、イタリアのCognitive Technology、オランダのFluxiconといった競合企業の参入も相次いでいる。Deloitte Touche Tohmatsuにはプロセスマイニングを担当する事業部門があり、PhillipsやSamsungもこうした技術を手掛けているという。

 プロセスマイニングプロジェクトでは、データの取得とクレンジングが課題になることもあるとケレマンズ氏は指摘する。技術チームがアプリケーションログファイルを使うことも可能だが、Siemensの場合、情報の80%はSAPのシステムから来ていて、Celonisはこのシステムへの直接接続を提供した。もし、例えばレガシーバンキングアプリケーションのように、もっと多様なアプリケーションのデータを必要とするプロジェクトであれば、データの取得や利用はさらに難しくなる可能性もある。

 データマイニングを行った後は、プロジェクトがさらに広範な事業部と関わることができるよう、プロセスマイニングを中心とするユーザーコミュニティーを形成することが大切だとケレマンズ氏は説き、「Siemensがあれほどの成功を収めた理由は、そうしたコラボレーション感覚の構築にあった」と指摘した。

 プロセスマイニングはプロセスにおける非効率性を洗い出し、ビジネスプロセス再構築の基本となるデータと指標を提供する。だが、急展開するRPAの分野を下支えする上でも、業務を自動化する前にその業務に関する理解を深めることができるため、プロセスマイニングは不可欠となる。

 「プロセスマイニングが真価を発揮するのはこの分野だ。これはRPAの兄弟になる。もしこの2つの技術を組み合わせることができれば、成功の確率を高めることができる」とケレマンズ氏は話している。

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