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死蔵しているデータを活用する方法Computer Weekly製品ガイド

複数のデータベースに異なる形で保存され、同じ人あるいは物を指しているのかどうかも分からない。このような状態から脱し、データをビジネスに活用するにはどうすればいいのか。

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 McKinsey & Companyが企業の経営幹部500人余りを対象に実施した調査(2017年3月)によると、成長を促進させるためにデータと分析を使う企業が増えているという。だが、そうした成長の手段としてのデータ収益化は、まだ初期の段階にある。

 McKinseyが世界で実施したこの調査で、データと分析が販売やマーケティング部門の事業慣行を大幅または根本的に変化させたという回答が半数近くに上った。回答者の3分の1以上は、研究開発(R&D)についても同じことがいえると答えた。

 McKinseyによると、業績が好調な企業は、そうでない企業よりもデータを収益につなげている割合が大きく、既存サービスへの新サービス追加、全く新しいビジネスモデルの開発、収集したデータの共有を目的とした関連業界の他社との提携を含め、収益化の手段を増やしているという回答も多かった。

 「業績が好調な企業がデータの収益化に力を入れているのは、変化に対応する能力の高さやニーズの大きさに起因するのかもしれない。同業他社に比べると、好業績企業の回答者はデータとデータ分析活動が中核的な事業部門でさらに重大な変化を促進させていると回答した」。McKinseyアトランタオフィスのスペシャリスト、ジョシュ・ゴットリーブ氏と、McKinseyパートナーのカレド・リファイ氏は、この調査に基づく報告書「Fueling growth through data monetization(データ収益化を通じた成長の促進)」の中でそう記している。

 「データは組織にとっての新しい通貨だ」と語るのは、Adobe SystemsでITとクラウド運用を担当するCIO(最高情報責任者)、シンシア・スタッダード氏。同社はデータ管理に関して、“素早い意思決定ができない”“データへのアクセスが難しい”といった複数の課題に直面してきた。「われわれは、受動的な組織から能動的な企業へと移行するために、データ駆動型モデルを必要としていた」と同氏は振り返る。

 スタッダード氏によると、同社が直面した大きな障壁は、データの共通性を徹底させることだった。「組織内の各部署で、それぞれのデータ定義が違っていた」(同氏)。その不一致が原因で、Adobeはデータを使って行動可能なインサイトに到達することができなかった。

 データガバナンス問題に対応するため、Adobeはペルソナの理解に力を入れ、カスタマージャーニー全般について、Adobe社内の各担当者が顧客とどう交流しているかに目を向けた。「顧客は静止していない。そこでわれわれはカスタマージャーニーに目を向けた。組織内の接点は変わっていく。それは、顧客の見方が時間の経過につれて変化することを意味する」とスタッダード氏は言う。

 同社は顧客の進展に合わせて柔軟に対応するために、「Hadoop」クラスタと分析を開発した。「われわれのユーザーに関連した測定基準を参照できる」とスタッダード氏は言う。

 同社は2017年からデータ分析に乗り出し、Hadoopをベースとした顧客フレームワークを開発して、複数のデータベースを1つの技術スタックに集約した。最初の開発には6カ月を要した。「われわれはこの上に、さまざまな測定基準を構築し続けている」(同氏)

 同社はアジャイルアプローチを採用し、毎月新機能を提供している。プロジェクト開発のかじ取りを担うデータガバナンス部門を設立して、それがビジネスニーズに沿っていることを確認し、影響評価を通じたフィードバックループを提供して分析がビジネスの役に立ち続けていることを確認する。「さまざまな事業領域を横断して影響を調べ、十分な影響が出ていなければ自分たちがやっていることを調整する」(同氏)。Adobeはこれまでのところ、新しい評価基準の作成にかかる時間を数週間から数秒に短縮できたという。

データの活用

 公益企業のCentricaは住宅や法人顧客向けにテクノロジーベースの製品を開発して提供することを目指していた。同社は複数の多様なレガシーシステムを接続して1400万の顧客のアカウントを分析するというデータ管理上の課題を解決するため、子会社のIo-Tahoeを設立した。2017年は1億ポンド(約149億円)のイノベーションファンドを立ち上げ、データ発見企業のRokitt Astraという形で初の投資を行った。Io-Tahoeのツールは商用化を実現している。

 Io-Tahoeのオクサナ・ソコロフスキCEOは、同社の課題について次のように説明する。「ほとんどの企業はデータ駆動型だ。データは収益をもたらす助けになる。これは資産であり、企業はその収益化を模索している」

 金融サービス、銀行、通信などは、大量のデータを必要とする。ソコロフスキ氏はDeutsche Bankのグローバルテクノロジー・業務部門でサービスの転換を主導した経歴があり、企業は自社のデータをコントロールして、実際に何が起きているかを把握することに課題を抱えていると考える。有機的・非有機的成長は、さらに多くのデータを発生させると同氏は言い、「大企業はさまざまなデータベースを大量に取得し、今やデータレイクを構築している。そこにはデータのコピーのコピーが存在する」と指摘する。

 これは根本的な技術上の課題だと同氏は言う。「例えば同じ顧客の違うバージョンが存在する。たとえ同じ銀行内であっても、異なる部門がそれぞれ別のデータベースに顧客情報を保存している」

 データが不完全だったり間違っていたりすることもある。1つの組織で余分なデータが大量にあることも、データベースの3つの列が1つに連結されていることも、その領域が完全に空白になっていることもある。

 そうしたデータベースは分類法が異なっているかもしれず、ある部門では顧客IDで顧客を識別しているのに対し、別の部門ではアカウント番号を使っているかもしれない。「両方が同じ顧客を指しているのかどうか判断するのが難しい。データそのものの解釈が異なることもある。ワシントンは通りの名かもしれないし、市、州、あるいは人名かもしれない。企業が根本的な取引関係を理解するためには、データをどこに保存するかを決める必要がある」(ソコロフスキ氏)

 Io-Tahoeのツールの狙いはまさにそこにあった。同ツールは、データが社内でどう動くかを把握できる手段を提供する。Io-Tahoeは機械学習アルゴリズムを使ってデータベース内の各データ要素を調べ、特定の関係を判断する。

 多くの組織にとっての目標は、社内の全ての接点を通じて一貫性が保たれる単一の顧客記録のように、信頼できる1つのバージョンのデータを持つことにある。

 データのメンテナンスに苦慮している企業も多い。Io-Tahoeのソコロフスキ氏が指摘するように、社内の別々の部署が、同じ顧客の記録について違う用語を使っていることも多く、データが不完全になったり間違いを発生させたりする。

 この問題に対応するため、Adobeはデータガバナンス部門を新設し、アプリケーションが同社のデータ基準に準拠していて、正確な情報が記録され、一貫性を持ってメンテナンスされるよう徹底を図っている。ユーザーがフォームに入力する際もデータ基準に従う必要がある。だが、ユーザーは情報を正しく入力するために時間を取られることに価値を見いださないかもしれない。データ管理の課題は、社内の全員が一貫性のあるクリーンなデータの恩恵を受けられると組織を納得させることにある。

事例:AdmiralがTeradataのアジャイル化を促進した手段

 Admiral Groupが数年前に「Teradata」を使い始めたのは、旧式のメインフレームシステムに新しいインフラ製品を追加するのが難しいと分かってきたためだった。同社のデータウェアハウス技術責任者ジェームズ・ガーディナー氏は、同社のデータウェアハウス計画について次のように説明する。「われわれはGuidewire Softwareを使って新製品の回転を速めたいと思っていた。だが、データは全てSAS Institute製品または『Excel』経由でアクセスされるメインフレームから来ていた」

 ただし、Teradataプロジェクトは時間と労力がかかったとガーディナー氏は振り返る。「新システムを確実に期日までに稼働させるため、プロジェクトは戦術的に運用された。われわれはウオーターフォール方式を採用し、Teradataアプリケーションを手作業でコーディングした。われわれのソースシステムからTeradataへのデータ移行には複雑なETL(抽出・変換・書き出し)プロセスを使っていて、説明書は時代遅れだった」

 この導入に続いて、同社はデータウェアハウスプロジェクトの再導入を試みたい意向だった。「従来の導入方法はビジネスに沿っていないことが分かった」とガーディナー氏は話す。

 AdmiralのデータベースチームはTeradataの専門家ではなかったことから、Admiralは各ビジネスリクエストのために、Teradataコンサルタントに手作業でカスタム版のコードを書いてもらう必要があった。ガーディナー氏によると、同社はビジネスニーズへの対応を加速するため、もっとアジャイルなアプローチでTeradataデータウェアハウスをアップデートすることを望んでいた。

 Admiralは、Teradataデータウェアハウスのためのコード生成を自動化できる方法を探し始めた。「われわれは『WhereScape』製品で概念実証を行った。そのおかげでアジャイル化を実現して、自分たちの手法を変えることができた」(ガーディナー氏)

 同氏によると、WhereScape製品を使うことで、データウェアハウスチームはビジネスと連携して新しいアイデアのプロトタイプ作成が迅速にできるようになり、さらに新製品へと開発を進めることが可能になった。「開発のペースを6〜8倍に高めることができ、ビジネスに対しても柔軟になれる」と同氏は言う。

 「基本的に、データの書き出しが大幅に高速化された。Admiralは今後、数多くの違う製品を試して、トライアルのペースを速め、新しい客を呼び込めるかどうか見極める」

 それを支えるため、WhereScapeはAdmiralがデータウェアハウスコンポーネントを極めて迅速に構築することを可能にしている。以前はそのために何カ月もかかっていた。Teradataをサポートするチームもずっと小さくなった。「新しいWhereScapeプロジェクトチームは20人で構成されている。かつての戦術的プロジェクトチームは60〜80人の陣容だった」

 Admiralのデータチームは主に「Microsoft SQL Server」の経験を積んでいることから、「SQL Serverの誰かを選んで、それほど難なくTeradataの構築に当たらせることができる」とガーディナー氏は話している。

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